人魚の始まり

遠い昔のある所に、仲睦まじい夫婦がいました。


二人とも海が好きで、毎年の結婚記念日には海水浴や船旅を楽しんでいました。


しかしある年の船旅の最中…不幸にも嵐に見舞われてしまいます。


嵐はなかなか治まらず、船は激しく揺れ…沈むのは時間の問題です。


死を覚悟した夫婦は最期にお互いへ愛の言葉をかけ合い、直後に船は転覆。


二人は船と共に海へ沈み、そのまま死んでしまいました。




…その時。不思議な光が沈んでいく二人の亡骸を包み込みました。


光が消えると死んだはずの二人はゆっくり目を覚まし、体の下半分は魚になっていました。


つまりなんと、二人は人魚になっていたのです。


夫婦の「心から海が好きな気持ち」と「お互いへの深い愛」を感じ取り、亡くなった事を哀れに思った海の女神が、二人を人魚に生まれ変わらせたのです。


人魚となった夫婦は、いつまでも海で幸せに暮らしました。






…時は現代。人魚の兄妹アイトラーとアジュールは、自分達の種族の誕生について語っていた。


アイトラー「そして、その夫婦が人魚の始まりとなって種族が繁栄し、今の俺達がいるってわけだな」

アジュール「素敵なお話ね!私も、その夫婦みたいに死ぬ間際まで愛し合えるような人と結婚できるといいなぁ…」

アイトラー「おっ…おい!お前がそれを考えるのはまだ早いぞっ!!」


そんな彼女が結婚し、相思相愛の夫と可愛い子供達に恵まれるのは、また別のお話。

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