和音の鬱憤妄想日記⑮

 兄さんのバカ、バカ。


 会長がそんなに気になりますか!


 美人で頭もよくて、スタイルもいいのに変態の……。


 そりゃ、好きになりますよね。オタク趣味を完全に理解してくれるんですからでも、でも、私は負けませんから!


 昨日描いた猫耳少女に、メイド服を着させて鎖で縛ります。


 さて、ここはこうして、こうだ!


 涙目を浮かべさせてと……。


「はぁ、はぁ、これはいい出来ですね」


 私はそう声を漏らして、先ほどから震えるスマホを耳に当てます。


『突然のお電話すみません。葉山先生、少し聞きたいことがるのですが、今よろしいでしょうか?」


 電話の相手は文月さんからでした。


「はい、今ひと段落したところなので大丈夫ですよ」


『お忙しいところありがとうございます。唐突で申し訳ないですが、契約の見直しの提案です』


「見直しですか?」


『以前契約する際に一作品しかイラストは描かないと言われましたが、今の葉山先生ですともう少しかけると思うんですよ。といいますか、デビューしてすぐにたくさんのオファーがありまして、もう一度考えてみませんかという提案です』


「無理です。私はオムライス先生としか漫画を描く気はありません」


 これは初めから決めていたことだ。


 私がワンストップと契約をする際に兄さん以外とはコンビは組まないと言ってある。


 それが体力の限界と言ったのだ。


『そうですか……。でも、次の休みには一度ワンストップに来てください。もちろんオムライス先生も一緒でかまいません』


 そこは譲らないといった感じです。


「私からも一つ確認です。兄さんの書くお話を本当に面白いって思ってますか?」


『愚問ですね。私は自称、ナンバーワンのファンですよ?』


「そうですか、でも……。私がナンバーワンです」


 私がそう言うと少し笑って、『それでは失礼します」と電話が切れた。


 本当に、兄さんにはライバルが多いな~。


 けど、私が一番だって思ってもらうんですから。


 私は小さく握りこぶしを作って、加筆を試みていきます。


 そういえば兄さんの初恋って、誰なんだろう?


 ふとそんな疑問がわきました。


 もちろん、いないに越したことはありませんがもし、いるのであれば私がその方の様になれば……。


 妄想が進んでいきます。


 画面の中では、会長にそっくりの美少女が辱められていきます。


 兄さんのためにももっと、イラストの練習をしないと。






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