第三十六話

「失礼します」


 ノックをしてから声をかけて、生徒会室に入室する。


 考えてもみれば前に和音の様子を見に来た以来この場所には来てないな。


「あら、早かったわね和樹君。紅茶を入れるわね」


「ありがとうございます」


 お礼を言って、勧められた席に座る。


 長机を二つ合わせて、それを囲うように椅子が四つ。


 贅沢な使い方だな。


 入口側に座れせてくれたけど、どういう要件なんだろう。


「どうぞ……。さて、どう話そうかしら」


 紅茶を俺の前に置いた天使先輩は顎に指を当てながら、椅子を俺の隣に持ってくる。


 因みに俺はパイプ椅子に座っているのだが、天使先輩はゲーミングチェアーなのが面白い。


「何だか緊張しますね」


「呼んだ理由は話さないとね。和樹君って、恋をしたことはあるかしら? それを聞きたかったのよ」


「え? いや、まだないですけど。てか、校内放送を使ってまで呼び出したのにそれだけですか?」


 何時もののごとく、唐突な聞き方だなと思いながら笑って返す。


「とても大切な事よ。私は恋について知らない。でも、恋愛漫画を描くように言われたの……。それで昨日のデートを思い出しながら書いたらすごく進んで、そういう話を聞けばもっとかけるかと思ったのよ」


 なるほど、それは凄い人選ミスだな。自分で思って悲しくなるけど。


「それなら、クラスの女子友達とかにくべきかと思います。すみません、ちからになれなくて」


「謝る必要はないわよ。ならまた出かけないかしら? そうすればいい話が書けるような気がするわ」


「それは俺も頼みたいと思っていたんでs、丁度良かったです」


「え? そうなの? そんなに私と遊ぶのは楽しかったのかしら?」


「はい、それはもう。次は和音も誘って三人でぜひ」


 少し頬を染めて目を泳がせながら天使先輩が言ってくれたので、さっき寂しがっていた和音のためにこの場で約束を取り付けよう。


「ふふ、まぁ、そうよね。時間が取れそうな時にぜひ行きましょうね」


 どこか元気のない回答をしてもらった。


 三人だとなかな都合がつかないかな?


 チャンスがあるときに誘ってみよう。


「天使先輩、この後時間があったらでいいんですが、漫画とかの話の組み立ての技法を教えてもらえませんか? 和音の絵に見合う話が書きたいんです」


 せっかくまた二人で話せるなら、そういう話が聞きたくてお願いする。


「ええ、いいわよ」


 この後下校時間になるまで会長と白熱した会話を楽しむのだった。


 ・・・・・・・・・・


「ただいま~」


 玄関のドアを開けて、声を出す」


 家は静まり返っていて、電気が完全に消えていた。


 俺は急いで自室に行き、着替えてから和音の部屋をノックする。


「うぅん、はぁ……」


 部屋の中から少し息苦しそうな声が聞こえてきた。


 和音? どうしたんだ?


 怒られるかもしれないけどゆっくりとドアを開ける。


「和音? 大丈夫か」


 パソコンの前でぐったりとしている和音を見つけて声をかけた。


「……」


 様子が変だと側に行き、顔をのぞき込む。


 寝ているのか。


 病気じゃなくて良かった。


 お、これは……。


 昨日の配信で書いていた猫耳少女がパソコンの画面に表示されていた。


 でも昨日よりも服がはだけていて、いやらしさが増している。


 加筆していたのか、凄いな和音は。


 それなのに俺はどれほどレベルが低いんだ?


 確認にしてみるか。


 足音を立てないようにゆっくりと自室に戻った。


 スマホを手に取って、文月さんに電話をかける。


『オムライス先生、どうかされましたか?』


「突然すみません。今四話まで連載して、五話の原稿を渡したじゃないですか? 少しは成長してるって信じたいんですけど、聞きたいんです。俺のレベルと和音のレベルって、プロから見てどのくらい釣り合ってないですか」


『え? レベル? 釣り合うも何も、二人で一つの作品じゃないですか?』


 確かにそうなのかもしれないけど……。


「このままだと俺、和音のイラストをいかせる話が書けないんじゃないかって思ってしまって……」


 どうしても意見が欲しかったのだ。


『なるほど……。それは全く心配ありませんけど。気にするのであれば、一つこちらから頼もうとしてた話があるんです。次の休みにでもワンストップに来てもらえませんか? あ、葉山ソラ先生も一緒に』


「了解しました。お時間いただきありがとうございます」


 どうも濁されてる気がするが、仕方がない。


 俺は電話を切って、原稿を見直すのだった。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る