第三十五話
「和樹、今日も忙しいのか?」
放課後、席に座ったまま今日の予定を考えていた俺にクラスメートの風間俊介が声をかけてきた。
「いや、特に予定もないから……。そうだな、普段以上に風呂掃除にでも力を入れようかな?」
少し考えた後、バイトないなと思ってそう返す。
原稿は夜にゆっくりと見てもらえばいいしな。
「ハハハハハ、主婦みたいだね! 今日くらいは一緒に――」
風間が何かを言いかけたところで勢いよく教室のドアが開き、教室に残っていた俺を含めた数人の生徒が視線を向ける。
怒髪天といった様子の和音が俺を目でとらえて、ズンズンと向かってきた。
「おや、どうやら俺はお邪魔なようだ。じゃあね、和樹」
和音が俺の机の前に来るタイミングで風間はそう言い残して、帰って行ってしまう。
「よ、よう。どうしたんだ? わざわざこんなところまで」
教室に和音が来たことは一度もないので、そう聞きながら怒りの原因を探ろうと試みる。
「どういう事ですか!?」
「えっと、何が}
教室内の視線が俺達に集まっているので、どうにか少し声を押さえてもらいたい。
「昨日、私をほったらかしにして、会長とデートしてたらしいじゃないですか!!」
ダンっと机に手をついて、睨みを強くする。
その言葉にどこからか「え? 修羅場?」「俺達と同じモテない人種だと思ってたのに……」「会長に手を出すなんて、親衛隊として許せないわ」
といった声が耳に入ってくる。
親衛隊って本当にいるんだな。
「えっと、ちょい待って、落ち着け……」
「やいやい、言い逃れする気ですか? 先輩さんよ~」
少し遅れて教室に七緒もやって来た。
七緒が話したのか……。
「え? 三股? やるときはやるじゃん」
「会長のためにも切り落とさないと……」
「死ね! 死ね! 裏切者」
流石にこのままだと俺が学校に行けなくなってしまう。
「ちょっと、来い」
俺は和音と七緒の手を掴んで、教室から逃げ出す。
「きゃぁ、兄さん」
「先輩、強引です~」
驚く和音とどこか楽しそうな七緒を引っ張って、野次馬のいないところを目指すのだった。
・・・・・・・・・・
屋上に出るドアの前に来た俺は二人の手を離した。
屋上に出ることはできないので、この場所に来る生徒はほとんどいない。
「もう、何なんですかいきなり?」
「先輩は、強引ですね」
「いいか、お前ら? 教室で騒がないでくれ」
「それは兄さんが悪いんでしょ?」
「俺の何が悪いんだよ」
「む、兄さんはそんなに会長が好きなんですか?」
「好きとかそういうんじゃなくて、ただ遊びに行ってただけだけど何か駄目なのか?」
「これは、先輩。ナイスカウンターですな~、さぁ和音はどう返す~」
七緒は何故か解説のように俺達の間に立つ。
「むぅ~。ダメじゃないですけど……」
どうしてそんなに言いずらそう何だ?
もしかして、和音は……。
「仲間外れにされて、寂しかったのか。ごめんな、次は誘うから」
俺がそう言うと七緒はずっこけるように前に倒れそうになって、和音はため息を漏らした。
「もう、いいです。まぁ、なんかもういいです」
落胆したように和音はそう言って、七緒の肩を叩いて階段を下りていく。
「あ、待ってくれよ。一緒に帰ろうぜ」
「べーだ。先輩は一人で帰ってください」
「兄さん、今日は七緒と帰りますから」
何だよ、俺だけ仲間外れかよ……。
『あ、あ~。二年一組の葉山和樹君、至急生徒会室まで来なさい』
落胆しながら階段を下りてると校内放送で呼び出された。
今度は何なんだと、俺は重い足取りで生徒会室を目指す。
向かう道中何故か主に女子生徒が俺を見るなりひそひそ話を始めて、死にたくなるのだった。
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