和音の鬱憤妄想日記⑫
今朝急いで私が兄さんのバイト先に向かったのは、昨夜の七緒との電話がきっかけだった――
「和音~~~」
スマホを耳に当てるなり、大声が聞こえて目を白黒させてしまう。
「どうしたんですか? まさか! 兄さんが何やら不埒な事でもしたんですか?」
「逆ですよ~。昨日は一緒に寝たのに何もしてこないですし」
その言葉に落ち着こうと飲みだしたココアを吹き出しそうになってしまう。
「え? そんな、うらやま、じゃなくてはしたないですよ」
「もう、バレバレなんだから、隠さないでいいですよ。それよりも、どう思います?
私は単に大人な女性が好きなのかとおとなしい口調を試したのですが、効果なしで終わってしまいました。何か、先輩の性癖を知りませんか?」
何がばれているのかは分かりませんが、色々聞きたいことができてしまいました。
「その、そういうのは分かりませんが、どうして大人の女性を好きだと思ったのですか?」
「え? ああ、今日ですね。うちの女性社員と楽しそうにお話をされていて、もしかしてああいう大人な女性が好きなのかなと」
そうですか、そうですか、これはお仕置きをしないと駄目そうですね。
「そうなのですね。それと、七緒。今日ももしかして、一緒に寝るのですか?」
これが一番気がかりなことなので、勇気を振り絞って聞いてみます。
「ないです、ないです。頭を撫でても、おっぱいを揉んでこないんですよ? あれがついてるのか心配になってしまいますよ~」
ケラケラと笑いながら、少し怒ったような声で答えてくれました。
「え? 頭を撫でたんですか?」
「ええ、それはもう、ぐりぐりと」
どこか嬉しそうな声で教えてくれます。羨ましい。
「はぁ、楽しそうですね」
「です。楽しいですけど、本当は……」
そこで声が聞き取れなくなってしまいました。
「七緒?」
電波が悪いのかと名前を呼んでみます。
「先輩って鈍感ですよね?」
「ですね、鈍感すぎです」
そこから兄さんのお話をしてたら二時間も過ぎてしまって、そろそろお開きにしましょうかと電話を切りました。
「早く帰ってこないかな?」
そう口に出して、少し寂しくなってしまいます。
そのまま私は布団を頭からかぶって、眠ってしまう事にしました。
・・・・・・・・・・
あの電話がきっかけで乗り込みましたが、どうにも兄さんはその気はなさそうなので安心します。
今日の夜には帰ってくるので、久しぶりに兄のご飯が食べれるんだなと幸せな気分で帰宅しました。
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