和音の鬱憤妄想日記⑩

 少しの雑談と宣伝の配信を終えて、ベットに倒れるように寝転びました。


 兄さんのバカ、バカバカ。


 私が他の人に取られても兄さんはいいっていうんですか?


 私はこんなに兄さんを……。


「ひゃ、にゃ!?」


 突然、ブー、ブーと音が鳴って、驚いてしまいました。


 机の上に置いたままのスマホが震えているようです。


 立ち上がって、机の上のスマホを確認しに行くと、七緒からの着信でした。


 普段はメールなので珍しく思いながら、通話ボタンをタップして耳に当てます。


「あ、和音。その急にごめんなさい」


「いえ、どうしたんですか?」


「その少しお願いがありまして」


 何時もの元気な声ではなく、まじめな声だ。


「何でしょうか?」


「週末、三連休じゃないですか――」


 その言葉に記憶を整理すると、創立記念日が金曜日にあるので確かに三連休だ。


「その三日間、先輩を借りたいんです」


「え? 何で私に聞くんですか?」


 言ってることもよく分からないが、そもそも私に断りをいれることが分からない。


「だって、泊まり込みで借りたいし。和音がやきもちやくかなって」


「ば、バカ。そんな子供じゃありません。え? 泊まり込み?」


 少し怒ってしまいましたが、泊まり込みは聞き捨てなりません。


「この前先輩にもらった温泉旅行券を使って、両親が旅行に行くんですよ。その間、店を任せてもらえることになったので人手が欲しくって」


「泊まり込みの必要はあるんですか? その、女の子の家に兄さんが泊まるのは不健全な気が……」


 七緒が本気で料理に打ち込んでいるのは知っていますが、なんだか不健全な気がするので落ち着いて質問します。


「やだな~、和音のえっち。そういうんじゃなくて、仕込みとか覚えてほしいからですよ」


 何時ものふざけている時の口調で、そう言われました。


「えっちって、違います。それに七緒の両親は許さないんじゃないですか?」


 兄が泊まらなくていい口実を模索して、そう言ってみます。


 七緒にもしもがあってはいけないからで、寂しいわけではありません。


「あ、それは大丈夫です。もう許可は取っていますので」


 そこまで言われては、もう言う事はなさそうです。


「それなら、私に聞く必要はないですよ。兄さんに聞いてください」


「? そうですか、分かりました」


 そこで通話を終えて、ベットに戻りました。


 もしも兄さんが七緒を……。


 私は頭をぶんぶんと振って、考えるのをやめます。


 だけど、その時私はどうなるんでしょうか?


「悔しいけど、祝福しないとだよね」


 何だか泣きたくなってしまったので、目をつぶって眠ってしまう事にしました。



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