第十八話
夕食前に部屋着に着替えてリビングに戻ると既にカレーを皿に盛りつけて会長は待ってくれていた。
「すみません、全部やってもらって」
「いいのよ。好きでやっただけだから」
和音はまだ起きてこないので二人での夕食だ。
まさか会長とこんなことになる日が来るなんて、思いもしなかった。
普段の和音の様子を聞きたいが、どう切り出そうか……。
「うぉ、このカレー凄い美味しいです」
七緒が作るカレーと違って、家庭的な美味しさを感じてつい声を出してしまった。
「そう、口にあってよかったわ。それで、話しって何かしら? スリーサイズ? 彼氏の有無についてとかかしら?」
楽しそうにニコニコとそう聞いてくる。
どれも見当違いなんだよな。
「和音は生徒会でうまくやってますか?」
話が脱線しないように、ストレートに聞くことにした。
「愚問ね。私が選んだのよ、当然よくやってくれているわ」
「そうですか、それは良かった」
確か、今の生徒会は三人態勢だったはずだ。
それも会長が選んだ人しかいないとか。
「その、失礼を承知で聞くのですが、会長ってイメージとだいぶ違いますね」
「イメージ?」
「はい。学校の集会だとまじめでクールな印象だったので、そういう冗談とか言うんだって思いまして」
「そうなのね。で、フランクな私はダメなのかしら?」
「いや、その……。話しやすいので嬉しいですけど」
「そう、なら良かったわ」
カレーを食べながらも会話が弾んでいく。
和音ともうまくやってくれているみたいで少し安心だ。
「ところで今日は何をしに来たんですか?」
「それは乙女の秘密よ」
そこは内緒なのか。
「気になる言い方ですね」
「ふふ、そのうち分かると思うわよ」
「そうなんですね。でも、本当に和音のために家にまで来てもらってありがとうございます」
「いや、彼氏として当然よ――」
その言葉に、スプーンを皿の上に落としてしまう。
「冗談よ。顔が怖いわ、葉山君」
「え? そんなに怖い顔になってましたか?」
深呼吸をして、落ち着こうと試みる。
「心臓が止まるかと思ったわ。シスコンなのね」
会長は最後の一口を食べ終えて、笑いながらそう言ってきた。
「シスコンじゃないですよ、普通に驚いただけです」
俺も最後の一口を食べて、そう言い返す。
「そうは思えないけど、まぁいいわ。さて、食べ終えたことだしそろそろお暇しましょうかしら」
「あ、良ければ送っていきますよ」
もう遅い時間なので、申し出る。
「ありがとう。でも、大丈夫よ。迎えを呼ぶから」
そう言ってスマホを取り出して、耳に当てる。
そのまま玄関の方に歩いて行く。
「迎えが来るまでここにいないんですか?」
スマホを直したタイミングでそう声をかける。
「そうすると、葉山君が殺されかねないわね。駅に来てもらうことにしたの」
「そうですか……。今日はありがとうございました。ごちそうさまです」
その言葉に嫌な予感がしたので、送ることをあきらめた。
「いいわよ。楽しかったわ。それじゃぁ、明日も遅刻しないように」
そう言って、会長は家を出ていく。
その背中を見送って、俺は早めに寝るために準備をするのだった。
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