16/日常が崩れる時

 手を繋いだまま、教会へと続く坂道を歩く。

 結局何を買うこともなく、何を見ることもなく、真っ直ぐに帰路へと着いていた。

 ふと、南の空を振り返る。夕焼けの赤い空は、昨日の惨劇を思い出させる。血に濡れた礼拝堂。真っ赤な瞳。赤色は、落ち着かない。

 ——異変に気がついたのは、もうあと少しで教会に着くという時になってからだった。

 ざわざわとした、大人数の声がする。教会の入り口には、複数のヒト影が見えた。

 見覚えのある銀色の鎧に、手には武器のようなもの。どこからどう見ても、教会にお祈り来たニンゲンには見えない。

 カレらはこちらに気がつくこともなく、教会に向けて手にした武器や石を投げつけていた。


「なに、を」


 扉は開け放たれている。いや、あれは壊されているのだ。側面に見えていたステンドグラスにも石を投げている。ガチャン、ガチャン、と無慈悲にも割られていく。おそらく壊されているのは教会だけではないだろう。教会の裏手からは、もくもくと黒い煙が昇っていた。


「っ、止めないと!」

「——待って」


 駆け出しそうになったわたしの腕を引いて、メルリヌスさんは民家と民家の間に隠れる。


「今あそこに行くのはマズイ。あの格好に見覚えがあるだろう?」


 言われなくとも分かっている。あれは昼間見た警備隊のヒトと同じ格好だ。


「警備隊が教会にやって来た、ってことは……」


 その先の言葉を言わず、テイルは重たいため息を吐いた。


「うん。間違いなく、モルガーナの存在が警備隊にバレたんだろう。もしくは、この街の星教派の教会に。いや、両方という可能性もあるね。警備隊だけにしては、数が多いように見える。武装していないニンゲンもいるしね」

「じゃあ、教会は」


 みんなは。


「破壊されるだろうね。それだけじゃない。教会にいたニンゲンたちは皆殺しにされるだろう。滅びの魔女を匿ったニンゲンたちとして、ね。いや、もしかしたら拷問を受けるかもしれない。どちらにしても、ボクたちはここから出られない。モルガーナ、ボクから離れないで。あんまり離れると、外見を誤魔化す魔法の範囲外になってしまうからね」

「っ、黙って見てろって言うんですか⁈」


 メルリヌスさんは少しだけわたしを見て、すぐにまた視線を教会へと戻した。


「うん。そうするしかない。ボクが優先すべきはキミの安全だ。カノジョたちが死ぬことは残念だけど、わざわざ救う必要はないからね。無駄な戦闘は避けるべきだろう」


 みんなを助けることが、無駄な戦い——?


「モルガーナ。メルリヌスの言う通りだ。戦闘経験のないお前に、あいつらを助けることができるとは思えん。それに今更行っても手遅れだ。生活棟は燃やされている。教会だってボロボロ。あの状態では、もう」

「————」


 それは、事実なのだろう。

 教会はすでに破壊されている。形は残っているけど、扉やステンドグラスは壊されてしまった。おそらく中だって無事ではない。

 生活棟は燃やされた。空に昇る黒い煙が見えるのがその証拠だろう。

 破壊は止まらない。教会にはまだ攻撃を続けるヒトビトの姿がある。見えないけれど、生活棟に対してもまだそうしているのだろう。

 怒号が聞こえる。叫び声が聞こえる。

 その中で、助けを求める声が、聞こえたような気がした。


「っ!」

「ちょ、モルガーナ!」


 繋いでいた手を振り解いて、何も考えずに駆け出した。

 わざわざ救う必要はない? 黙って見ていろ?

 そんなの、事実だとしても納得できない。

 納得できないし、納得していいはずがない——!


「! お前」


 入り口付近にいたニンゲンが振り返る。そうしてわたしを見つけて、声を上げようとした。

 上げようとして。


「魔力固定、確定セット射出ゴー!」


 それよりも先に、氷刃が銀色の鎧ごとカレの胸部を貫いた。

 突然のことに、ヒトビトの動きが止まる。そうして呆然とわたしを眺めるカレらの中のダレかが、


「——魔女だ」


 ぽつりと、呟いた。


「魔女だ。魔女が現れたぞ! あの女の話は本当だったんだ!」


 呟きはざわめきに変わり、ニンゲンたちはすぐに攻撃の対象を教会からわたしへと切り替えた。

 槍を手に、剣を手に、ニンゲンたちは次から次へと襲いかかってくる。

 ただ淡々と、詠唱を繰り返す。カレらがこちらに攻撃を仕掛けるよりも先に、片っ端から氷刃を撃ち込み続ける。


「——! ————!」


 何かを叫んでいる。何かを喚いている。

 関係ない。

 お前たちの考えなんて、主張なんて知らない。そんなの聞く必要なんてない。だってお前たちは、わたしの大事な家を壊した。大事なヒトたちに危害を加えたのだから——!

 撃っても撃ってもニンゲンたちは湧き上がってくる。教会の中にいたニンゲンたちも、生活棟を襲っていたのであろうニンゲンたちも、異変に気がついたのかこちらに向かって駆けて来る。

 カレらの武器は、紅く染まっていた。


「——っ、絶対に、許さない!」


 限界まで魔力を生成する。


「魔力展開、固定」


 空いっぱいに氷刃を展開する。これでもかと、空を埋め尽くす程の量を創造する。

 逃げ場なんて与えない。

 上空の異変に気がついた数人のニンゲンたちは、顔を青くしてその場に立ち尽くした。


「ヒトリも生きて帰さない! 確定セット——射出ゴー!」


 鋭い刃の雨が降り注ぐ。

 走りかけたニンゲンの足が切断される。わたしを殺そうと振り上げていた腕が切り落とされて飛んでいく。立ち止まって空を見上げていたニンゲンの顔に複数の氷刃が突き刺さる。

 呻き声が聞こえた。痛みを訴える声が聞こえた。化け物だと恐れる声が聞こえた。仲間が隣で死んだと悲しむ声が聞こえた。許してくれと懇願する声が聞こえた。

 ニンゲンたちの多くは死んだ。残っている生き残りにも、もう立ち上がる気力は残っていないようだった。

 倒れ伏したニンゲンたちを無視して、教会の中へと急ぐ。

 礼拝堂には、死体の山ができていた。


「————そんな」


 みんな、見覚えのある顔だった。

 腹部から出血している。首を切られている。手足を切り落とされている。頭を殴られている。

 とっくに、事切れている。

 身体から力が抜けそうになるのを堪えて、頬を思いっきり叩く。まだ諦めてはいけない。生きているヒトがいるかもしれない。

 床に転がされた死体。長椅子に投げ捨てられた死体。死体。死体。死体。

 その中で、ぴくりと、床に投げ出された手が動いたのが見えた。


「っ! 生きてますか!」


 駆け寄って、そばにしゃがみ込んで顔を確かめる。


「シスターサマエル! よかった、まだ息がある。待ってください。すぐになんとかして——」

「あ……あん、た」


 わたしに気がついたシスターサマエルの目に、みるみる生気が戻る。いや、生気が戻ったのではない。

 その目には、怒りが滲んでいた。


「あん、たが。あんたの、せいで。あんたさえ、いなければ——あたしたちは、殺されずに、すんだのに」

「————」


 シスターサマエルが手を伸ばす。

 血塗れの手が、わたしの首に巻きついた。


「なんで、あんたが、生きてるの。なん、で、あたしたちが、死ななきゃ、いけ、ないの。あたしたち、悪いことなんて、してないのに——」


 じわじわとシスターサマエルの瞳に涙が滲む。首に巻きついた手には、ほとんど力が入れられていない。


「あんたが、死ねばよかったのに」


 けほ、と咳き込む。口の端から、紅い液体が溢れた。


「あんたなんて、死んじゃえば、よかったのに。とっとと、追い出せば、よかった。偽物。あんたの、せいで。あんたが、あんたの、みんな、みんなみんなみんなみんな、みんな、あんたが、殺したのよ」


 苦しいはずなのに、もう言葉を口にするのも辛いだろうに、それでもシスターサマエルの言葉は止まらなかった。


「ああ、馬鹿ね、あたしたち。あんたなんか、助けるんじゃ、なかった」


 その言葉を最後に、ぼとりと、首に触れていた手が床に落ちた。


「しす、たー」


 反応はない。

 先ほどまで憎しみが、怒りがこもっていた瞳には、もう何の色もない。


「しすたー、シスター。……だめ、息がない」


 分かってる。

 そもそも助ける方法なんてなかった。

 わたしには高度な治癒魔法は使えない。魔力が足りないのだ。せいぜい疲れを取ったり、ちょっとしたかすり傷や切り傷を治す程度。致命傷を負って、大量に出血して。そういうニンゲンを生き返らせる程の魔力は、持ち合わせていない。

 開いたままの、シスターサマエルの瞼を閉じる。

 まだ生活棟も見に行かなければならないのに、わたしの身体は床に座り込んだまま。


「……ん、なさい」


 そんなこと、言わせたくなかった。

 こんな最期を、迎えさせたくなかった。


「ごめん、なさい。ごめんなさい——!」


 みんなをこんな目に遭わせるために生きてきたわけじゃない。

 みんなを助けたくて、みんなの力になりたかったのに。


「う、ああ——ごめ、ごめんなさい。わたし、役立たずで。何も、何もできなかった——!」


 力任せに礼拝堂の床を殴る。

 何度も。何度も何度も。


「おい、そこまでにしておけ」


 テイルが肩から降りて、尻尾のようなものでわたしの腕を掴む。


「……いつかはこうなっていた。お前を、魔法使いを匿った時点で、この教会の最期は決まっていたんだ」


 優しく、慰めるようにテイルは言う。


「誰が星教派の奴らに密告したのかは分からない。調べても仕方ないことだしな。……責めるべき相手は、どこにもいない。星教派のしたことは正しいことじゃないが、それでもカレらにはカレらの正義があった」

「っ、だからって、ヒトを殺していいわけがない——」


 ……けどそれは、わたしも同じこと。

 怒りに任せて星教派のニンゲンを殺した。たくさん殺した。それは、許されることではない。ヒトを殺していい権利なんて、ダレにもないのに。


「ああ、どうしよう。わたし、たくさん殺してしまった。ダレも救えなかったくせに、それなのに、許せないからって、みんな殺してしまった——!」


 重すぎる。その罪は、重すぎる。

 どうやって償えばいいのか。どんな罰を受ければいいのだろうか。


「モルガーナ」

「ふむ。なるほど」


 何かを言いかけたテイルを遮って、悠長な声が礼拝堂に響いた。


「魔力量は並。魔力器官の質も並。いや、本来想定されるよりも下、か。それでも魔法使いとしては、平々凡々だけどね」


 コツコツと足音を鳴らしながら、メルリヌスさんがわたしのそばへとやって来る。


「さて、大丈夫かい?」


 メルリヌスさんは座り込んだわたしのとなりに腰を下ろして、心配そうな素振りで顔を覗き込んだ。


「まったく。敵の中に何も考えずに突っ込んではいけないよ。どうしていきなり飛び出したりしたんだい」

「どうして、って。そんなの、許せなかったから、放っておけなかったからに決まってるじゃないですか。ここはみんなにとって大事な場所で、わたしにとっては帰るべき家で。みんなは、大事な存在で。それを、よく分からない理由で壊されて、殺されるなんて許せなかった。黙って見ているなんて、できるわけなかった」


 だからといって、わたしのしたことは許されることではない。分かっている。


「……罪の意識を感じてる?」


 俯くわたしに、メルリヌスさんが問いかける。その問いに、静かに頷いた。


「わたし、これからどうすれば。あんなにたくさん殺しておいて、のうのうと生きているなんて、きっと許されない。死んで、償わないと」

「それは違うだろう」


 わたしの言葉を、メルリヌスさんは厳しい声色で否定した。


「いいかい。罪というのはね、生きて償うものだ。死んでは償えない。特に、自分以外の存在を殺した罪は死ぬ程度で許されるものではないだろう。死ぬということはね、存在の消去、永遠の安らぎを得るということなんだ。さっきキミは、のうのうと生きて、と言ったね。けどそれは、キミには難しいことだろう。だってキミには罪を背負うだけの良識が存在する。健全な判断力がキミにはある。だからこそ、キミは生きて罪を背負うべきだ」


 生きて、どうやって償うというのか。


「そもそもね、罪をなかったことにはできない。それが完全に許される時というのは来ないんだ。償いを完了することなんて、誰にもできない。一生背負って、一生自分を責め続けて、一生自分のしたことに向き合い続ける。それが、罪を犯したものの責任なんだとボクは思っている。もちろん、例外は存在するよ。罪を犯しても何の罪悪感も抱かない存在。それどころかさらに罪を重ねようとする存在。そういう存在は社会的な罰を受けたり、最悪死刑にするべきなんだろうさ。けど、それはあくまで良識がない存在の場合だ。さっきも言ったけど、キミは違うだろう」


 翡翠の瞳が、じっとわたしを見つめる。


「これから先も、キミはヒトを殺すことがあるかもしれない。他の存在を害することがあるかもしれない。その時キミがするべきことは、死ぬことじゃない。罪を認め、奪ったものの重さを知り、それらを全て抱えて生きることだ」

「罪人が、生きていていいんですか」

「罪人だからこそ、生き続けるべきなんだよ。生きることは、最も重い罰でもあるのだから」


 けど、とメルリヌスさんは声色を柔らかくして言葉を続ける。


「キミのしたことは別に罪でもなんでもないというのがボクの正直な感想だ。殺される前に殺した。それは自然なことだ。動物なら当然の行動だろう」

「そりゃ、動物ならそうかもしれませんけど。でも、わたしはニンゲンです。ニンゲンなら、衝動ではなく理性で行動するべきでした。……メルリヌスさんの言葉を聞いて、生きて償い続けるつもりではいます。けど、けど」


 ふむ、とメルリヌスさんは口元に手を当てた。


「けど、救世主失格だ?」


 わたしの考えたことに気がついたらしいメルリヌスさんが口に出す。

 そりゃそうだろう。ヒトを救わず、それどころか殺すなんて。

 頷くと、メルリヌスさんはいやいや、とわたしの考えを否定するように首を振った。


「むしろ、それは救世主さまに必要な要素の一つなんじゃないかな」

「それは、どういう」

「優しいだけ、慈悲深いだけじゃあ何かを救うことはできないよ。何かを救う時、別の何かを切り捨てることもある。切り捨てるだけならともかく、踏み躙ることもね。躊躇なくヒトを殺したことを悔やんでいるみたいだけどね、これから先救世主として在りたいのなら、そうする覚悟も必要になってくると思うよ。みんなを生かしてみんなを救う、なんてことは無理なんだから」


 ダレかを救うためにダレかを切り捨てる。ダレかを生かすためにダレかを殺す。救世主さまとして生きるのならば、いずれそうする必要が出てくるかもしれない。

 それは、本当にそうだろうか。


「わたし、は」


 それは、嫌だ。


「わたしは、たとえ無理だとしてもみんなを救いたいです。ダレかを救うためにダレかを切り捨てるなんて、したくない」

「でもきっと、キミはそれができるよ」


 翡翠の瞳は冷たく、静かにわたしを見つめている。


「昨日魔人を倒せなかったのは、それが見知ったニンゲンだったから。もしあれが全く知らないニンゲンだったのなら、キミはあの魔人だって倒せた。いや、そもそもあの場にみんなが残り続けていたら、キミはあの魔人を確実に殺しただろう。情を切り捨てることは苦手みたいだけど、それさえできればキミは容赦なく相手を切り捨てられる。キミは、そういう存在だよ」

「そんな、こと」


 勘違いしないで、とメルリヌスさんはわたしの言葉を制止するように手を突き出した。


「貶しているわけでも責めているわけでもない。褒めてるんだよ。キミには救世主さまとしての資格がある、ってね」


 そんなこと言われたって、そんな資格なんて。


「おい、そこまでにしておけ」


 パシリ、とテイルが尻尾のようなものでメルリヌスさんの手を弾いた。


「お前の言葉は、コイツには良くない。いや、誰にとっても良くないだろう。慰めているつもりなんだろうが、実際には傷をつけることしかしていない。自覚がないのか。ないんだろうな。なら黙っておけ」


 テイルはピリピリとした空気を纏い、メルリヌスさんとわたしの間に割って入った。その表情は見えないけれど、メルリヌスさんを睨みつけているのだろうということは分かる。


「おっと、そうかい。それはごめんよ。ボクには気がつかなかった」


 申し訳ない、という表情を浮かべながら、メルリヌスさんはわたしに頭を下げる。それを見ながら、テイルはふん、と不機嫌そうに鼻を鳴らした。


「許す必要はない、モルガーナ。こんなやつの言葉なんて聞くな」

「……ありがとう、テイル。わたしのこと、心配してくれたんだね」


 テイルを抱き寄せて、膝の上に乗せる。いつだってわたしを気にかけてくれるカノジョの存在は、本当にありがたい。


「メルリヌスさん、顔を上げてください。わたしは、大丈夫ですから」


 笑みを浮かべて口にすると、メルリヌスさんは大人しく頭を上げた。


「けど、これからどうしたらいいんだろう」


 教会は壊された。生活棟も燃やされた。みんなも、死んでしまった。

 そんな中で、これからどうしたらいいかなんて分からない。


「キミがカレらを許せないと言うのなら、アステールを倒すべきだろう」

「お前、まだそんなことを」


 メルリヌスさんの言葉に反対しようとしたテイルを、まあまあ、と宥める。


「どうして、そこでアステールが出てくるんですか?」

「どうしてってそりゃあ、みんなが死ぬことになったのはおそらくは彼女のせいだからさ」

「…………」


 責めるべき相手はいないと、テイルは言っていた。自分の正義を貫いた結果だから、と。

 それはそうなのだろう。

 それでもわたしはカレらを許すことはできない。そして、その原因がアステールにあるというのなら、それは。


「星教派が来たのは、おそらくアステールがキミの存在に気がついたからだろう。だから、カレらに指示を出してこの教会を襲わせたのさ。ステラ全体を監視しているアステールにとっては、キミを見つけるのは難しいことじゃない。今までこうならなかったのは、奇跡としか言いようがないんだよ」

「…………」


 もしそうなら、それは、そんなことをしたアステールのことは、とてもじゃないけれど許すことはできない。

 仕返しをしたいわけじゃない。それでも、どうしたってこの気持ちは落ち着かない。


「魔法使いが生まれるたび、似たようなことをしてきたんじゃないかな? 記録に残らないのをいいことに、ね」

「…………」


 冷静に、淡々とメルリヌスさんは口にする。

 これまでも、こんなことをしてきたかもしれない。確証はない。それでも、こうして実際に起きてしまったことだけは事実だ。


「キミはどうするんだい、モルガーナ」


 どうするべきか。どうしたいのか。

 そんなの、決まっている。


「アステールを、倒します。こんなこと、許されることじゃない。ステラのみんなのためとか、魔人がどうとか、そういうのだって考えるべきかもしれない。でも、まずは、わたしの大事なヒトたちを殺したことは、許せない」

「…………」


 アステールに事情があったのだとしても、それでも許すことはできない。償わせたいとか、同じ目に遭わせたいとか。そういう気持ちがないわけじゃない。きっと、そういう気持ちが強いんだろう。

 良くないことだって分かってる。

 それでも、倒すと口にするしかなかった。

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