第013話 そして、レアモンスターしかいなくなった

「そろそろ、次のエリアに入るよ」

「了解」


 数カ月間の間に覚醒者たちが人里以外の場所を探索することによって、ある程度はモンスターの分布が分かっているようだ。


 亜理紗によると、次のエリアはグミーが出現する場所とのこと。グミーとは、ケムーシーの次に強い雑魚モンスターで、その名前の通り、半透明で楕円形のグミみたいな生物なんだとか。


「あっ。見つけた」


 亜理紗は早々にモンスターを見つけたらしい。


 彼女の視線を追ってみると、なんだか鈍色の楕円形の存在がぽよんぽよんと弾んで移動しているのが見える。


「あ、あれってメタルグミー!?」


 彼女はその存在を捉えた瞬間、ひどく驚いた声を上げる。


「どうかしたのか?」

「あの鉛みたいなグミーは、メタルグミーと言って、グミーが出現するエリアで極稀に見つけるレアモンスターなの。出会える確率は大体一万匹に一匹と言われているんだよね」


 どうやら凄くレアなモンスターを見つけたらしい。でも、ここにいるモンスターは全て同じように見える。


「周りにいるの、全部メタルグミーじゃないのか?」

「え?」


 俺に言われて周りを見回す亜理紗。


「こ、こんなことって……はぁ……なるほどね。これも全部おじさんのせいなんだ」

「何か言ったか?」


 ハッとした後、ガックリと肩を落としてブツブツ呟く亜理紗に問いかける。


「んーん、なんでもないよ。それよりも、このモンスターたちを全部倒すよ。このモンスターは経験値が物凄く多いことで有名なの。それに極まれに身代わり人形を落とすって言われてるんだよね」

「身代わり人形?」


 聞いたことのないアイテムに俺は首を傾げた。


「うん、身代わり人形は持っていると、致命的な攻撃を受けた時に代わりに受けてくれる使い捨てアイテムだね。ゲーム内では死んでも実際に死ぬわけじゃなかったからそれほど価値はなかった。でも、現実世界での死は全ての終わり。それにこのアイテムって覚醒者じゃなくても使えるんだよね。だから物凄く価値が上がってるの。売れば物凄い高値が付くんだよ!!」


 亜理紗は目をキラキラさせて身代わり人形の説明をしてくれる。


 やはりゲームをやっているだけあって本当に詳しいな。


 でも、その身代わり人形があれば、突発的な事故やモンスターの襲撃に遭遇して助かることができる。身近な人たちに持っていてもらうためにも手に入れたいところだ。


 ここにいるメタルグミーは全て倒すことに決定だな。


「へぇ~、それはかなり欲しいな。それはさておき、マヒルとヨルの実力を測るために、先に闘ってもらおう」


 俺は両肩に乗っている子狐の頭を撫でる。


「「キュンッ」」


 マヒルとヨルはすぐに飛び降りてメタルグミーへと駆け出していった。


「あっ。待って!! メタルグミーは凄くすばしっこくてすぐ逃げ出そうとするし、物凄く防御力が高くて物理も魔法もほとんど効かないの。地道に物理ダメージを与えるか、クリティカルヒットで一撃……って何か言う必要もなかったみたいね」

「そうみたいだな」


 飛び出したマヒルとヨルを引き留めるように叫んだ亜理紗だったが、メタルグミーはその時すでに、二人の攻撃がクリティカルヒットしてあっけなく死んでしまった。


 そして、その二匹はぽとりとドロップアイテムを落とす。


 それはまるで丑の刻参りにでも使用する藁人形のような見た目をしている。あれが身代わり人形というアイテムだろう。


 他にも金属のインゴットのようなアイテムと魔石も落としてくれた。


「運が良いな」

「それで済むようなことじゃないんだけど……」


 俺の言葉に納得がいかなそうに呟く亜理紗。


「これで死なない確率が上がるんだからなんでもいいんじゃないか」

「そうだね。もうこれから深く考えるのは止める。こうなったら倒して倒して倒しまくって稼いでやるんだから!!」


 よく分からないけど、彼女は開き直ってメタルグミー目指して駆けだした。


「亜理紗はそうでなくっちゃな」


 俺もメタルグミーに戦いを挑む。


「ピギッ」

「おっとっ」


 亜理紗は逃げ出すと言っていたけど、メタルグミーは俺に積極的に攻撃を仕掛けてきた。聞いていたよりも動きが速くなくて、俺の目でも捉えることができる。


「はっ!!」


 俺はメタルグミーの攻撃の躱しざまに殴った。


 ――Critical Hit!!


「ピギィイイイイッ」


 クリティカルヒットが出てメタルグミーは地面に叩き落されて消える。


「よしっ!!」


 俺でも問題なく倒せた。


 それから俺は皆に負けないようにメタルグミーを討伐し続けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る