ハッピーおじさん~不幸のどん底に落ちた男、幸運値が限界突破し、姪っ子の配信でバズるも、気づかないまま規格外ダンジョンを食糧庫代わりにして最強を超える召喚獣や従魔達とスローライフ~
第012話 「た、助けて……」失敗率さんは逃げ出した
第012話 「た、助けて……」失敗率さんは逃げ出した
少し休憩した後、亜理紗によるチュートリアルが再開された。
「次は装備の強化について説明するね」
「おう。頼んだ」
亜理紗が俺の前で先生ぶって説明を始める。
「まずはメニューウィンドウを表示して装備強化の項目を選んでみて」
「了解」
メニューウィンドウは念じるだけで浮かび上がる。俺はその中から装備強化の項目をタッチした。
メニューが消え、左側にアイテムボックスのウィンドウ、右側に装備強化のウィンドウが表示された。
「可視化」
亜理紗が呟くと、彼女のウィンドウが俺に見えるようになる。
「それじゃあ、私と同じようにアイテムボックスの中から強化したい装備を、強化のウィンドウにある、強化したい装備の枠に持ってきて」
「分かった」
俺は彼女の言われた通りに、初期装備の木の棒をアイテムボックスからドラック&ドロップした。
「次に、この装備強化石ってやつを強化ウィンドウの右側の強化石の欄に置く」
「ふむふむ」
次も彼女の指示に従い、強化石を移動させる。
「そしたら、最後に強化ウィンドウの強化ボタンを押す」
「強化ボタンを押す」
俺は亜理紗の言葉をオウム返しに唱えてボタンをクリックした。
「そしたら、強化ウィンドウの下にあるステータスバーが右端まで行くのを待つ」
――ポンッ
――ポンッ
亜理紗の言う通り、バーが満タンになるまで待つと俺と亜理紗の武器が画面から飛び出してくる。
"木の棒+1"
装備は若干名前が変わっていた。
「はい、これで完成。強化に成功すると、こうして小さな破裂音を出して装備が飛び出してくるから。そして、武器の名前にプラス表記が付くの。成功一回目だと+1、二回連続だと+2って具合にね。それから、失敗すると装備は跡形もなく消えるから気を付けてね」
「シビアだな」
失敗したら装備がなくなるとかひどいもんだ。完全に博打じゃないか。
「まぁね。でも+が付くと性能が段違いに変わるから、皆少しでも+を増やそうとやっきになっているの」
「なるほどな」
武器の性能が上がれば生き残れる確率も上がる。躍起になるのも当然か。
「強化石には、最下級強化石、下級強化石、中級強化石、上級強化石、最上級強化石と5つの種類があって、最下級が強化成功率二十%、それ以降は二十%ずつ成功率が上がるの。でも上級強化石や最上級強化石なんてめったに手に入らないから、基本的に最下級から中級で強化を行うのが普通かな」
「武器が消滅することを考えると、できるだけ高いランクの強化石を使った方がいいわけか」
レアな武器なんかを強化する場合は、絶対上級、できれば最上級強化石を使いたいよな。
「あ、ただし、初期装備だけはなくならないで、プラスが消えるだけで済むよ」
「そうなのか。それじゃあ、少し練習してみるか」
俺は練習がてらいくつか強化してみることにする。適当な場所に腰を掛けて強化を始めた。
――ポンッ
「おお、成功だ」
二回目も問題なく成功。
――ポンッ
――ポンッ
――ポンッ
――ポンッ
その後も成功が続いた。
「なんだ、結構簡単に成功するんだな。これならどこまでいけるか試してみるか」
ここまで成功が続くとやっぱり気になる。
――ポンポンポンポンポンッ
俺はそれから何度も武器を強化し続けた。
――ブブーッ
「ふむ。99が限界なのか」
プラス表記が99に到達したところでそれ以上強化できなくなった。無くならないなら誰でもこのくらいはやってみてるだろう。
俺は木の棒を仕舞って立ち上がる。
「……」
すると、亜理紗がこちら見て唖然としていた。
なんだかデジャブ感があるな。
「どうかしたか?」
「なんで+99まで強化できてるの!!」
やっぱりこの前みたいに詰め寄られることになったか。
「いや、何でって言われてもやってみたかったからとしか……」
俺としては気になっただけなのでそう言うしかない。
「使った強化石は最下級。つまり成功率二十%、それが九十九回連続で成功するか確率は?」
「んー、ざっくり〇%?」
ビシリと俺を指さす亜理紗に気おされながら、計算すると途中から限りなくゼロに近い数字になっていく。
「そう。そうなの。ゼロだよ、ゼロ。成功しないの。するわけないんだよ!!」
「でもほら、実際できてるし、難しくないんだよ、きっと」
さらに詰め寄ってくる彼女にタジタジになりながら返事をする。
亜理紗はそう言うけど、俺ができることなんだから他の人でもできるだろうに。
「簡単なわけがないでしょ!!」
それでも引き下がらない亜理紗。
でも、仮にできなかったとしても初期装備が+99になったくらいでそんなに騒がなくてもいいと思う。
「別にいいじゃないか。たかが初期装備の木の棒だろ?」
「はぁ……もういいよ。ツッコんだら負けだって分かったから」
俺の返事に諦めた様に大きくため息を吐く亜理紗。
「そんなこと言われてもなぁ……」
「もうおじさんは勝手にしたらいいと思う」
困惑する俺の前で、亜理紗がツーンと俺から顔を逸らした。
拗ねてしまったらしい。
「そ、そうだ。もう少し奥に行ってみないか? マヒルとヨルにはこの辺りの敵じゃ弱すぎるだろ?」
「……それもそうだね。この少し奥に行けば、ケムーシーしか出ない初心者エリアを抜けて別のモンスターが出るようになる。そこで、マヒルちゃんとヨルちゃんの実力を見せてもらいましょ」
なんとか亜理紗を宥めるため、俺は近くで戯れているマヒルとヨルに視線を向けながら話す。
亜理紗も釣られるように二人を見る。しばらくすると、二人の様子を見て少し気分が落ち着いたのか、俺の言葉に頷いてくれた。
助かった……。
俺は内心ホッとしながら、亜理紗の先導の元、奥地へを目指した。
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