ハッピーおじさん~不幸のどん底に落ちた男、幸運値が限界突破し、姪っ子の配信でバズるも、気づかないまま規格外ダンジョンを食糧庫代わりにして最強を超える召喚獣や従魔達とスローライフ~
第015話 聖杖ミストルティン? いえ、ただの木の棒です
第015話 聖杖ミストルティン? いえ、ただの木の棒です
「はぁっ!!」
亜理紗がシャイニングミーを蹴りあげる。
――Critical Hit!!
――ゴッ
「いったぁ!?」
しかし、クリティカル表示が出ているのにグミーはビクともしなかった。亜理紗は足を押さえて片足でピョンピョンと跳ねながら痛みを堪える。
うわぁ、あれは相当痛そうだ。
「キュンッ!!」
「キュウッ!!」
その後でマヒルとヨルがシャイニングミーに襲い掛かる。
――Critical Hit!!
――ガキンッ
――Critical Hit!!
――ガキンッ
しかし、二人の引っ掻き攻撃も全く通らなかった。
「ふっ!!」
――Critical Hit!!
――ゴッ
「ぐっ。これは確かに痛いなっ」
当然俺の蹴りも全く意味をなさない。まるで岩壁でも蹴っているかのように、その反動が全て自分の足に返ってくる。
シャイニングミーは余裕の態度でふよふよとその場で蠢いている。
「むっきー!! 悔しい!! 次はスキルでいくんだから!! 裂空雷神脚!!」
痛みが治まった亜理紗は飛び上がったと思うと、くるりと回転しながらかかと落としを放った。足の周りにはバチバチと稲光のようなエネルギーが集まっている。
――Critical Hit!!
――ガキンッ
しかし、再び弾かれてしまった。
「えー!! これも効かないの!?」
相当自信があったのか、亜理紗は信じられないという表情をしている。
「クォオオオオオオンッ!!」
「クォオオオオオオンッ!!」
続くようにマヒルとヨルが遠吠えをすると、マヒルからは真っ白な稲光が、ヨルからは真っ黒な稲光がそれぞれシャイニングミーを目指して飛翔し、途中で混ざり合いながら突き進む。
――ドゴォオオオオオオオンッ
その威力はすさまじく、シャイニングミーに当たった瞬間、雷が落ちた時のような轟音が辺りに響き渡り、土煙を建てた。
「やったかな?」
「おいおい、それは言っちゃダメな奴じゃないか?」
口走る亜理紗に俺は思わずツッコミを入れる。
「やっぱり、そう上手くはいかないかぁ……」
「だろうな」
土煙が晴れると、体から煙を上げ、バチチチと稲光を放つ無傷のシャイニングミーが姿を現わした。
全く動じていないその姿は、まるでこっちを挑発しているみたいだ。
「でも、さっきの攻撃よりも威力が高い攻撃ってないんだよねぇ」
「俺もない……」
俺よりも攻撃力が高いであろう亜理紗や、マヒルとヨルがダメージを負わせられないのなら八方塞がりだ。
「あっ!!」
「何かいい方法でも思いついたのか?」
シャイニングミーを警戒しながら、俺は何か閃いたらしい亜理紗に視線を向ける。
「プラス表記をマックスまで上げた木の棒が持ってたよね?」
「いやでもあれ、初期装備だぞ?」
「大丈夫。使ってみたら分かるよ」
「はぁ……分かったよ」
俺は半信半疑ながら、亜理紗の指示に従い、アイテムボックスから木の棒を取り出してシャイニングミーに向かって走り出した。
「……」
何かを感じ取ったのか、シャイニングミーが体をふるふると動かす。
すると、俺の下に魔法陣が浮かび上がった。
「ちっ。魔法か!!」
直径数メートルはありそうな光の柱が天から降り注ぐという極悪な魔法だった。速度が速くて躱せそうにない。
俺はその魔法を防ぐために、一か八か木の棒を掲げた。
――シュウウウウウウウッ
すると、魔法が木の棒にぶつかった直後、吸い込まれるように消えてしまった。
「ただの木の棒だけど、強化してれば魔法も防げるもんだな」
まさか防御できるとは思わなかった。木の棒がなければ俺はさっき死んでいたかもしれない。
俺は安堵しつつ、その隙を突いてシャイニングミーに急接近する。
「はぁぁあああああああっ!!」
気合を入れて、俺は木の棒を大きくて振り下ろした。
――ズバァアアアアンッ
――Critical Hit!!
今までにないしっかりとした手応え。木の棒がシャイニングミーを引き裂いていく。核も真っ二つになったシャイニングミーは絶命して姿を消した。
予想外だったのは、衝撃波が発生して、シャイニングミーの背後の森が切り開かれて一本の道が出来上がったことだ。
ただの木の棒でこの威力とは恐れ入るな。
「すっごぉおおおおおおおいっ!!」
「キュウウウンッ!!」
「キュイイインッ!!」
亜理紗とマヒルとヨルがその光景を見て嬉しそうにはしゃぐ。
「やっぱり、物凄く強くなってたね、木の棒」
「そうだな。まさか初期装備がここまで強くなるとは思わなかったぞ」
木の棒より強い武器を強化したら、一体どんな攻撃力になるんだ?
想像するだけで恐ろしい。
でも、この辺りには人が少ないみたいで助かった。人の多い場所だったら、絶対に誰かを巻き込んでいた。今後は使う場所を考えないといけないな。
「こ、これってまさかスキルオーブ!?」
俺が考え事をしていると、亜理紗が近くに落ちていたドロップアイテムを見ながら愕然とした表情を浮かべている。
「スキルオーブ?」
「うん、スキルオーブは使用すると、そのオーブに込められているスキルを獲得できるの。今のところスキルを覚える方法はレベルアップ時に職業に応じたスキルを手に入れるのと、特殊な称号を手に入れた時、そして、このスキルオーブを使用すること以外にないの。スキルオーブも身代わり人形同様に、高値で取引されているんだよ。人気スキルなら一個売るだけで大金持ちになれるよ!!」
首を傾げる俺に亜理紗がしたり顔で説明してくれる。
アイテムに対する知識は本当に頼りになるな。それにそんな亜理紗が微笑ましくて可愛い。
俺はほっこりとした気分になる。
「まさかスキルオーブを落とすなんて……んー、でも今回は生産系の"建築"スキルのオーブみたいだね」
亜理紗がスキルオーブを確認して残念そうに呟いた。
欲しいスキルじゃなかったみたいだ。
「どうする? いるか?」
「んーん。魔法だったらほしいと思ったけど、"建築"はいらないかな」
「じゃあ、俺が貰ってもいいか?」
こんな世界になったせいで都市部以外の土地の価格が下がっている。
幸い俺は覚醒者だからモンスターが襲ってきても戦えるし、召喚獣と交代すれば見張りも出来る。それに、建築スキルがあれば家も建てられる。
今の俺には人里離れた場所での生活も悪くない気がする。
「勿論」
「ありがとな。亜理紗が必要なオーブが出たらやるからな」
「分かった」
交換条件を提示して俺は建築のスキルオーブを受け取った。
「あれ? あそこにいるのもシャイニングミーじゃない?」
「なんだと!?」
しかし、シャイニングミーは一匹では終わらなかった。
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