ハッピーおじさん~不幸のどん底に落ちた男、幸運値が限界突破し、姪っ子の配信でバズるも、気づかないまま規格外ダンジョンを食糧庫代わりにして最強を超える召喚獣や従魔達とスローライフ~
第008話 俺のハッピーが召喚法則を打ち砕く!!
第008話 俺のハッピーが召喚法則を打ち砕く!!
「召喚石を準備して。初期のアイテムにあるはずだから」
「了解」
俺は亜理紗の指示に従い、アイテムボックスの中から必要な道具を取り出して召喚の準備を進めた。
「最後にスキルを使用すれば召喚できるの」
「そういえば、召喚獣って何が出てくるんだ?」
「数百種類の中からランダム。やり直しのきかないガチャみたいな感じ」
「ガチャ?」
ガチャという名称は聞いたことがあるが、良く分かっていない。
「なんて言ったらいいのかな……あー、お菓子のおまけにカードが入っていたりするよね?」
亜理紗が腕を組んで考え込んだ後、話し始める。
「ああ」
「カードの中には特別な種類があるでしょ?」
「そうだな」
「召喚も似たようなものだよ」
「なるほどな」
亜理紗が俺にでも分かるように説明してくれたおかげである程度理解できた。
小さい頃に、沢山の種類のモンスターが登場するアニメのカードを集めていたことを思い出す。あのカードにも希少さの違いがあった。
それと似たようなものだとすれば、完全に運次第ってことか。この前の俺の不幸を考えると、どんなモンスターが出てくるのか不安だな……。
「ここから生配信するからよろしくね」
「昨日あんなことがあったのに大丈夫か?」
亜理紗が突然そんなことを言うので、俺は心配になって聞き返す。
いつも元気な亜理紗が珍しく沈んでいたのを思い出す。
「もう大丈夫!! 開き直って利用することにしたから!!」
「亜理紗がそういうなら別に構わないが……」
「いいからいいから。ほら準備して」
「分かった」
眩しいくらいの笑顔で俺を押す亜理紗。これまでの経験上、本当に大丈夫そうなので彼女の言う通りにする。
「はーい、皆さん、こんにちは!!」
亜理紗が配信を始めた。
「おじさん、お願い」
「えっと、異なる世界に生きる者よ。我を主と認めるのならば、呼びかけに応じよ、サモンッ!!」
出番を待ち、亜理紗の指示に従って、俺は思い浮かんでくる呪文を唱えてスキルを使用した。その直後、魔法陣が虹色に輝き始める。
「これってまさか、
亜理紗がその光を見て目を大きく開いて叫んだ。
「それって凄いのか?」
「勿論!! 最高ランクだからね」
「おお、それなら良かった……」
よく分からないので聞いてみると、亜理紗は興奮しながら返事をした。
最高ランクと言えば、弱くはないのは間違いない。それなら出てくる召喚獣もヤバくはなさそうだ。
「え……これって?」
ドキドキしながら待っていると、亜理紗が何かに気付いた様子。
「どうした?」
「なんだか最高ランクの演出ともまた違うみたい。あんな風に魔法陣が浮かんで絡みあったりしないし、こんな風に空中にオーロラみたいな現象も起こらないよ」
「ほう」
気になって尋ねたら、さらに凝った演出になっているようだ。現実世界だからゲームの時よりも派手になっているのかもしれないな。
「もしかしたら、もっと上のレアリティだったりして……そんなまさかね、伝説級の上なんてないし……はははっ」
亜理紗が何かを呟きながら、頬を引く付かせて乾いた笑みを浮かべている。
「可愛いモンスターだといいな」
俺はまだ見ぬ召喚獣に思いを馳せながら呟いた。
宙に浮いた光が収束し、白と黒の光に分かれる。そして、地上に落ちてパァっと弾けるように光が晴れると、中から二体のモンスターが姿を現わした。
それは、白と黒の対照的な色合いをしていて、モフモフな尻尾を沢山生やしている可愛らしい子狐だった。
「えぇええええっ!? 一度の二体召喚されるとか聞いたことないよぉおおおお!?」
亜理紗がまるでムンクの叫びのような仕草で叫んでいる。
毎度毎度忙しないな。
「お前たちが俺の声に応えてくれたのか?」
「「キュンッ」」
俺が亜理紗を尻目に近づいて尋ねると、彼らは頷いて小さく鳴いた。
「おお。これからよろしくな」
「「キューン」」
二匹の前に跪いて頭を撫でると、目を細めて気持ちよさそうな声を上げた。複数ある尻尾がわさわさと揺れている。
モフりたい。
『九尾狐(幼体)(黒)と九尾狐(幼体)(白)があなたの眷属になりました。名前を付けてください』
改めて俺の仲間になったことがウィンドウで表示される。
「そうか、名前か」
この子たちはあの有名な九尾の狐の子供なんだな。とっても可愛い。尻尾はまだ幼体だからか、九本はないみたいだ。
うーん、どうしたものか。シロとクロというのは流石に安直すぎるよな。
二匹を見ていると、なんとなく風水でよく見る白と黒で描かれる円形の図を思い出す。確か、太陰太極図とか言ったっけ。
あれによれば、白い方が陽を、黒い方が陰を表していたはず。昼と夜なんかが代表的だよな。
「よし、お前はマヒル、お前はヨルだ」
「「キュンッ」」
名前を付けると二匹は嬉しそうに鳴いた。
「って、おじさん、もう名前つけてるし。ていうか二匹とも眷属にできたの!?」
「ん、ああ。できたぞ?」
できたらなんかマズいんだろうか……。
「召喚枠はどうしたの!?」
亜理紗に言われてステータスを開く。
「んーと、一分の二になってるな」
「なんで上限超えてるの~? 上限さんは一体何をしてるのかな?」
亜理紗の顔が百面相をしている。
「大丈夫か?」
「もうっ!! おじさんのせいなんだからね!!」
「お、おう……それはすまなかった」
心配になって声を掛けたら、なぜか怒られてしまった。よく分からないが、ここは謝っておいた方がよさそうだ。
「はぁっ……もういいよ。それで、その子の種族は? 予想はできるけど……」
諦めた様に大きく息を吐き、話題を変える亜理紗。
「九尾狐の幼体の白と黒だな」
「やっぱり、ずっと存在が示唆されてたのに、結局誰も召喚できなくて実装されてないとまで言われてた幻の召喚獣じゃん!! それが二体も!! ありえなぁああああいっ!!」
俺の答えを聞いた亜理紗は、再び天に向かって絶叫した。
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