第59話 もう、もう、もう(恥)(改稿第一版)
シルフィーさんから久々の手紙と、クロードからは手紙と大きな荷物が届いた。
何かのプレゼントらしいんだけど、いったい何なのだろう?
シルフィーさんの手紙にもクロードの手紙にも具体的なことは何も書かれていない。
ただ早めに着てほしいとのことだ。
着てほしいということは、服か何かだろう。
教会にいる以上着る機会はほとんどないと思うのだけど、あのクロードが選んだものとなるとちょっと気になる。
シルフィーさんの赤ちゃんは駄目だったらしい。
何となくホッとしたような、もやもやした気持ちになる。
気分を切り替えて、クロードが送ってきた荷物を開けてみると其処には……、沢山の女性の下着!?
え?え?え?どういうこと?
しかも何だか透けてるんですけど!?
こ、こんなお尻がほとんど隠れてないとか!?
これじゃあ、み、見えちゃうよ!?
胸当てなんかもハーフカップで、大切なところが見えちゃいそうだし!?
いったい私に何を着せようとしてるの?
大体この下着の切れ込みは何なの!?
顔が赤くなる。
胸がどきどきしてきた。
こんなの付けたらただの痴女じゃない。
だんだん羞恥心に耐え切れなくなってきた私は、自分が思っていた以上の大きな声で叫んでいた。
「もう、なんてもの送ってくるのよ、クロードのバカァァァ!!」
はあ、はあ、はあ……。
荒げた声に暫くすると、教会中からドタドタと私の部屋の前に人が集まってくる気配が。
しまった、ただでさえ皆に心配をかけているのに、あんな大声を出したら皆が集まってきちゃう。
ドンドンドンと扉をたたく音に室内にいる私に掛けられる声。
「リリアさん、どうしたの?ここを開けて」
「リリア、大丈夫?」
扉の外の様子から、教会中のシスターたちが集まってきちゃったみたい……。
ギィィ……。
私はそっと扉を開けた。
部屋のベットの上に広げてある下着類が、皆に見えないように……。
「あ、あの、ご心配をおかけしました。大きな声を出してしまって申し訳ありません。少し驚いてしまって……」
無駄な努力でした。
バンと扉を大きく開けられ、私を心配してくれるシスターたちが部屋に押し入ってくる。
入ってくるではなく、まさに文字通り押し入ってきたのだ。
「大丈夫?リリアちゃん」
「一体何があったの?」
文字通り私を心配してくれるのはとても嬉しい。
でも、今はまずい。
あんなのが皆に見つかったら、なんて言われるか。
早く出て行ってもらわないと。
そして、そんな努力も空しく、ついに見つかってしまう。
「ああ!みんな見て見て、リリアちゃんのベットの上!凄い下着が一杯あるよ~」
「ええ~!?」
「す、凄いスケスケ、こっちはエッチすぎる……」
「これ皆シルクじゃない?」
「本当だ!」
「クロードさんからの贈り物なの?」
「きゃぁああああ、えっちだぁ」
「みてみて、この宝飾品の数~」
「すご~い」
シスターたちがクロードからリリアに送られてきた下着を手に取って一つ一つ見分していく。
「あらあらまあまあ、凄いことになってるわね」
最後にシスター長のネムリナ様がリリアの部屋に入ってくる。
「ネムリナシスター長様!あ、あ、あのこれはですね」
リリアが慌てて言い訳をしようとするが、ネムリナはシスターたちが手に取って見比べている下着類にスキル『鑑定』を掛ける。
万が一のことを考えてのことであったが、これが結果的にいい結果を齎した。
「あら!?リリアさん、クロード君からの手紙、見せてもらえるかしら?」
「は、はい、これになります」
「ふむふむ、なるほどね」
ここにあるリリアさんに届けられた下着の数々。
それらに宝飾品のようにつけられている高位魔石に施されている数々の魔法や、転写型魔紋術式。
ただ事じゃないわ。
鑑定のできるシスターに手伝ってもらわないと、私一人だとちょっと大変だわ。
「うん?荷物の奥の方にも何かあるわね?」
「そ、それは!」
リリアは慌てて隠そうとするが、ネムリナシスター長に取り上げられてしまう。
シスター長がスキル『鑑定』で見てもとんでもない代物だ。
何せ、教会のシスター全員が七日間毎日違うものを付けても十分すぎるほどの数の下着上下セットと宝飾品が沢山あるのだから。
普通であればリリアのような行動が当たり前なのだろうが、その下着上下セットに施された付与魔法等を考えると笑えない。
クロード君が送ってくれたシルクの下着上下セットには、教会のシスターたちの身を守るための避妊魔法に始まり、貞操防御魔法、魔紋、魔法攻撃防御、物理攻撃防御、自動回復魔法、魔力自動回復魔法、魔法効果増強魔法などが多数施されているのだから。
これはクロード君が今後リリアさんや私たち教会のシスターたちが巻き込まれるであろう事柄の情報をつかんでいる可能性があるわね。
早いうちに彼女たちに身につけさせて、クロード君の優しさの恩恵にあやかるべきね。
ネムリナは鑑定のできるシスターに声を掛ける。
「シスターミリア、シスターフェン、ちょっと手伝ってくれるかしら?」
「はい?なんでしょうか?」
「一体何を?」
ネムリナは他のシスターたちに聞こえないように、ミリアとフェンに耳打ちする。
耳打ちされた二人は、慌ててスキル『鑑定』を発動させると、驚愕に言葉を失う。
「シスター長……」
「こ、これって……」
「そうなのよ。これは私達や他のシスターたちを守るためのものなのよ。というわけで二人とも手伝ってくれないかしら」
「「はい」」
ネムリナはリリアのベットの周りで騒いでいるシスターたちに手を叩いて意識を自身に向けさせる。
「はいはい、みなさん、リリアさんの想い人であるクロードさんからリリアさんだけでなく、皆さんにもプレゼントがあるそうですよ」
「「「「「「きゃぁああああ」」」」」」
シスターたちが黄色い悲鳴が上がる。
「皆さんも、どんな下着なのか興味があるでしょう? 今晩はリリアさんに試着してもらいましょう」
「えええええええええええええええ!?」
リリアが悲鳴を上げる。
「まあ、諦めなさいな、リリアさん」
ネムリナシスター長がリリアにニヤニヤしながら告げる。
もう、もう、もう、クロードのバカァ!
何で下着なんか送ってくるのよぉ。
その晩、リリアの部屋ではリリアをモデルにした下着のファッションショーが行われた。
「うわぁ、リリアさん素敵~」
「いいなぁ~、あんな下着、送られたいなぁ」
「全身に傷があってもここまで素敵だったら、傷が無かったら凄いことにならない?」
「それは言えてる」
シスターたちは、きゃあきゃあと悲鳴を上げ、リリアは全身を真っ赤に染めながら恥ずかし気に下着のモデルをしつづけた。
まさか自分が身に着けた下着にリリア用に転写型魔紋などが施された特別製の下着だとは気づきもしなかった。
そして、身に着けた下着の効果か、リリアの全身に刻まれた傷跡が本当に微々たるものだが小さくなり始めていることにも……。
羞恥まみれのリリアの下着ファッションショーが行われた次の日の朝。
教会中のシスターたちが顔を真っ赤に染めて、起床してくる。
当然リリアも顔を真っ赤に染めて起床してくる。
その理由が、ウリエルが言っていたクロードが作ったシルクの下着の付け心地に由来していることを……。
『クロードさんは分かってませんねぇ。大好きな、愛している人に作ってもらった高級シルクの下着に包まれる幸福感!
身に着けていないのではないかと錯覚するほどのフィット感に時として下着を着けずに全裸で歩いているのかもしれないと錯覚して羞恥に包まれてしまうほどの背徳感!
そして、時折感じる締め付けるような感触は、自分があの人のものだという安心感に繋がるのです!』
それを実地で体験中のリリアと教会のシスターたち。
全員が視線を交わしあい、心に思っうことは同じだった。
「「「「「もう、もう、もう、クロードさん(君)、なんて危険な下着を送ってくるんですか!付け心地が良くってもう前の下着はつけられませんし、ちゃんと服着てるのになんだが凄く恥ずかしいし、時折感じる締め付けが、クロードさん、責任取ってくださいよぉ~(恥)」」」」」
因みにクロードがウリエルに言われシルクの下着を作成していた時、主に試着を担当していたのはウリエルだったのだが……。
「なぁ、ウリエル、こんな感じで良いのかな?」
「ク、クロードさん、そんな感じで大丈夫ですから、こ、これ以上の試着は勘弁してください……」
な、何なのよ、この下着は!想像のはるか斜め上をいく付け心地にフィット感、そして締め付け。き、気を付けないとあの糞爺以上にヤバい人を誕生させてしまうかもしれない。それに、これは私達だけじゃ身体が持たないかも。は、はやく、や、やめさせて、宝飾品で『状態異常耐性』が付いたもの作ってもらわないと。
クロードが作ったシルクの下着の効果によって気を失いつつあるウリエルが恐怖とともに憂慮したことが現実になったとか、なかったとかはまた別のお話。
後日、修道服には派手だからと躊躇っていた宝飾品に状態異常耐性があることに気が付いた教会のシスターたちが、宝飾品を身に着けたことでクロードのシルク下着騒動は一段落することになる。
だが、教会のシスター全員に送られた宝飾品(下着が送られていることは外部には秘密)のデザインの素晴らしさや付与されている魔法の数々が明らかになると、一体誰が寄贈したのか、どこで売っているのかなど、問い合わせが教会に数多く寄せられるようになるが、クロードの名前が表に出ることはなく、謎の宝飾師と呼ばれるようになる。
改稿第一版 荷物→大きな荷物へと修正
ロードさん→クロードさんへと修正
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