第56話 女性が四人も集まれば姦しい?(改稿第1版)

 「え? お姉ちゃん、今なんて言ったの? この人、本当にクロードさんなの?」

 「し、信じられない……」

 「う、嘘だよね?」

 ウリエル、ルーナさん、シルフィーの驚きの声が上がる。

 「本当だよ」

 アルテナさんが、クスクスと笑いながら自信満々に三人に告げる。

 「クロード君、ステイタス表示してみて。じゃないと信じてもらえないみたいよ」

 アルテナさんは、なかなか本人だと信じてもらえないクロードを横目で盗み見て、笑っている。

 「分かりました。『ステイタス表示』、これでいいですか?」

 「「「えっと、どれどれ?」」」

 シルフィー、ウリエル、ルーナさんとクロードのステイタス表示を覗き込む。

 「「「……!?」」」

 「本当にクロードさんだ。で、でもなんであんなに雰囲気が変わってるの?」

 「し、信じられない」

 「シルフィーさん、ウリエル、ステイタスをよく見て」

 ルーナさんが二人に僕のステイタス表示の二か所を指さす。

 「「はぁ!?」」

 「なにこれ、基礎レベルが79000越えって……」

 「ねえねえ、ダンジョンコアを8つも壊してるって……。ここを離れるときは2つじゃなかった?」

 「これでハッキリした」

 ルーナさんが頷きながら言う。

 「「何が?」」

 「クロード君が魅力的に映るのは、『雄として圧倒的に強い』から。雌として強い子孫を残そうとするのは種としては本能の至上命題。圧倒的に強いから同種や他の種からすれば恐ろしい存在かもしれないけど、少しでもクロード君の為人ひととなりを知っていれば、魅かれずにはいられない。私も含めてシルフィーさんやウリエルも今まで以上にクロード君に魅かれてる。これはすぐにどうにかしないとまずい」

 「ま、まずいって……?」

 ウリエルが戸惑うようにルーナに質問する。

 「……」

 シルフィーは顔を真っ赤にしてもじもじし始じめている。

 「シルフィーさんはクロード君と肉体関係があった。だから、邪竜の呪いとは別にクロード君に発情してる。それにシルフィーさんほどでないにしてもウリエルも私も、それに何故かアルテナ姉さままで発情し始めてる」

 そうしてルーナさんとウリエルがアルテナさんに顔を向ける。

 「ふ、ふえ?そ、そんなことないよ?」

 「顔を真っ赤にして、モジモジして何を言ってるんです?アルテナ姉さま」

 「はっ、まさかアルテナ姉さま、クロードと寝たの!?」

 「ね、寝てないよ。ウリエル何てこと言うのよ」

 「じゃあ、なんで発情してるの?」

 「え?いや、これはその何て言うか……」

 「ところで、アルテナ姉さま、服はどうされたんですか?」

 「え?」

 「いつもなら、ゆったりとした体のラインが透けて見えるような薄手のドレスを着ているはず、でも今は違いますよね?その服、どうされたんですか?」

 「えっ、えっと、その……」

 「まさか、クロードに襲われたとか?」

 「ち、ちがうの!貴方達の存在が感じ取れなくなって、それで心配で……」

 何だろう?

 四人でワイワイと楽しそうに話している。

 シルフィーやアルテナさんは顔を真っ赤にして、ウリエルやルーナさんの意地悪な質問に言い返している。

 僕、放置ですか?

 しかも冤罪が積み上がっていってるんですが……。

 アルテナさんに襲い掛かってませんよ、僕。

 唇を奪われた側です。

 被害者です。

 何だろう、疎外感というか、仲間外れ感が半端ないんですけど……。

 でも、ここで話の輪に入ろうものなら「女性の話に入ってこないで」とか「あっち行ってて」とか言われるんだよなぁ。

 昔、リリアと彼女の女友達たちが話しているところに近づくだけでも、冷たい目で見られたものだ。

 その後、リリアからは「もう、ちょっとは考えなさいよね。デリカシーのない男の子は嫌われるわよ」とかさんざん言われたっけ……。

 うん、結界の端の方でおとなしく座って居よう。

 結界の端の方にいって、アイテムボックスから薬缶やカップを取り出し、黒茶の用意をする。

 黒茶は少し苦いが後に甘味を舌に感じるお茶で、口の中がさっぱりする。

 はぁ、天気が良くって黒茶がおいしくって幸せだなぁと現実逃避をしていると、ルーナさんが後ろから僕の耳元に口を近づけて話しかけてくる。

 「アルテナ姉さまと濃厚な口付けをしたそうですね?クロード君」

 「うわっ、びっくりした」

 「しかも、アルテナ姉さまからプロポーズまでされたとか」

 「ええ!?」

 吃驚した僕は、慌ててアルテナさんの方に向けば、ウリエルにガッチリと背後から抑え込まれ、しかも掌で口を塞がれうーうーと何かを訴えている姿が見えた。

 顔を真っ赤にして、泣いてるけど大丈夫なんだろうか……。

 「プ、プロポーズって一体?」

 「アルテナ姉さまから、神族に種族進化しないかと言われたはずですが?」

 「うん、言われたけど……、ええ!?あれってそういう意味だったの?」

 「ええ、やっとのことで白状させました」

 ルーナさん、何キリッとやり遂げましたという顔をして宣ったいるんだか……。

 あ~あ、アルテナさん、がっくりと項垂れてメソメソ泣き始めちゃったじゃないか。

 どうするんだよ、これから。

 「ああ、それからもっと強くなりたいとか、不肖この私ルーナとウリエル、アルテナ姉さま、シルフィーさんが一流の冒険者に育て上げて進ぜましょう。うふふふふ……」

 「ルーナさん、なんか怖いですよ」

 「だって、訓練中はクロード君に触り放題じゃないですか」

 駄目だ、ルーナさんに変なスイッチが入っちゃってるよ。


改稿第1版 誤字修正

 

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