第41話 困惑の創造神と生きる気力を無くしたアルテナ(改稿第1版)
「一体どういうことじゃ!?ウリエルだけでなくルーナまで存在が消えるとは……」
今まで生きてきて、このような事態が起きたことはなかった。
ルーナに対してもウリエルと同様にしっかりと洗脳を施し、魂の情報も神力も儂に流れ込むようにしてあった。
だから、アルテナが何を企もうとウリエルとルーナに話した時点で儂には筒抜けになる。
しかも、アルテナには分からぬように度々二人を呼び出しては、たっぷりと可愛がってやったりもした。
その二人が、立て続けに消えた。
一体何が起こっておるんじゃ?
二人の魂に繋いでいたラインも途切れてしまっている。
二人共従属神とはいえ、神であることに変わりはない。
戦えば神力が溢れ出すし、その痕跡も残る。
だが、二人は痕跡も残さず消えた……。
これでは再びあのアルテナを、ルーナを、ウリエルを儂のものにして、たっぷりと身体も心も弄んでやろうと思っていたことのすべて泡と消えたわ。
儂としては、この世界に閉じこめられたとしても、ある程度神の力を封じられようと、児戯に等しい。
儂に反抗したアルテナに力の違いを見せつけ、絶望させ、儂に許しを乞わせるために付き合っているに等しかったが、ルーナとウリエルを失ったことで事態は深刻だ。
何者かは知らぬが、第三者の介入が儂の楽しみを奪ったのだからそれ相応の罰を受けてもらわなければならん。
確か、ウリエルは死んだあのクズ勇者の後釜に会いに行ったはず。
アルテナ教会総本山がある場所からは反対の方向になるが、彼奴ならば大した距離ではない。
一瞬で目的地に到着するはずだ。
さて、次の勇者にするものは誰であったか……。
アルテナとウリエルが話していた内容をゆっくりと思い出す。
「名前は何と言っていたか……、クリフォードだったか?クリード?クロフォードじゃったか?う~ん」
ウリエルに新たな洗脳を施そうとしたためか、ノイズが多くて情報が伝わりにくくなっていていた。
その再調整をしようとしていた矢先に消えたものだから、直前の話の内容などノイズが多くて聞き取れなかった部分が多かった。
取り敢えず、時間は掛かるがウリエルが向かったと思われる地点は把握できておる。
儂の聖女達が生んだ可愛い子供たちである教会聖騎士達を派遣して探らせるか……
「誰ぞ、聖騎士団長を呼べ!」
何もない空間で、体を横たえていたアルテナは、ルーナの気配が消えたことに驚き声を上げた。
「え!?嘘だよね?ルーナ?お願い返事をして、ルーナ!」
アルテナがいる空間に声だけが響き渡る。
必死に呼びかけるが、ルーナから返事が返ってくることはなかった。
ルーナにウリエルの痕跡を追ってもらったのに、そのルーナまでもが消えた。
その事実に私は足から力が抜け、座り込んでしまった。
目からはとめどなく涙が溢れてくる。
子供の頃からいつも一緒だった妹達。
人見知りで恥ずかしがり屋だったルーナ、無邪気で天真爛漫だったウリエル。
おじい様に心を壊され、洗脳されているのも知っていたし、おじい様の慰み者になっているのも道具にされているのもしっていた。
それでも私に残された最後の家族だったから……。
でも、消えた……、消えてしまった。
創造神であるおじい様と魂が繋がってしまっているルーナとウリエルを生かすために、おじい様を閉じ込めるために作った『世界』が、『神殺し』が無意味になってしまった。
『神殺し』を誕生させる以上、自分達も傷つけられ、最悪の場合殺されることも考えていた。
でも、『神殺し』の候補者はいても、本当の意味での『神殺し』は存在しない。
それなのにも拘らず、こんな一瞬で消滅させられる存在がいるなんて思ってもみなかった。
私の心にはもう絶望しかなかった。
再びおじい様のモノなるなんて、絶対にイヤだった。
心のよりどころだった妹達は既に無く、私一人でおじい様に対抗することも、生きていくことにももう疲れてしまった。
ならば、もういいではないか。
一瞬で神さえも消滅させることが出来る何者かがいるなら、それに身を任せてしまってもいいんじゃないかな……。
でも、おじい様みたいな悍ましいモノだったら嫌だな……。
出来れば、私もルーナやウリエルみたいに一瞬で消滅させて欲しいなぁ。
それで、ルーナやウリエルのところに行くの。
三人でお父様やお母様のところに行くの。
そして、皆で今度こそ幸せに暮らしたいなぁ。
アルテナはゆっくりと立ち上がると、そのままフラフラと歩き出す。
その瞳に虚無をやどし、ゆっくりとゆっくりと進む。
目的地はすでに決まっている。
ウリエルとルーナが消えた地へ。
そして、アルテナが去っていった空間が、『世界』が作られてから三女神が過ごしてきた空間が消滅していく。
もう二度とここに戻ることはないのだと言わんばかりに……。
改稿第1版 誤字修正
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