第39話 もう一人の従属神も捕獲される
「ルーナ姉様!?」
食料を買いに行くと言って私ことウリエルとシルフィーさんがいる多重断層結界を出て行ったクロードさんが、数刻もせずに女性をお姫様抱っこしながら戻ってきた。
私とシルフィーさんが、クロードさんが抱き抱えている女性が誰なのか、確認するために女性の顔を覗き込むと、ルーナ姉様だったのだから驚きも大きい。
「ああ、やっぱりか……。結界から出たら目の前に現れてね。襲い掛かってきたから、思わずやっちゃったよ。僕には女性を殴ったり、蹴ったりして喜ぶ性癖はないんだけど、もし目覚めちゃったら、それはウリエルとルーナさん?のせいだからね。責任とってね」
そう言って、私に笑い掛けるクロードさんだが、冗談に聞こえないんですけど……。
冷や汗が私の頬を伝う。
ルーナ姉様もあれを経験するのかな?
何故冗談に聞こえないかって?
それは洗脳を解いてもらうときにクロードさんがスキルを色々試してみたんだけど、その中にはこれって回復系の魔法じゃないの?と思われるような魔法もあって、私が洗脳状態にもどっちゃう時が結構あったの。
全HPで言うと大体一割以上にHPが回復すると洗脳状態になる私を死なない程度に的確に痛めつけて(?)、正気に戻すというのを繰り返すのだからあの糞爺並みだと思う。
一応心配はしてくれるし、優しい言葉もかけてくれる。
これも洗脳の一種なのでは?と疑問に思ったりもしたけど。
でも、洗脳状態になると笑顔で折檻するのは止めて欲しかった。
目が笑ってない笑顔があんなに怖いものだとは思わなった。
ある意味、糞爺より怖かった……。
だって後半になるとこれは幻覚だったのかもしれないけど、洗脳状態の時の私がガタガタと震えて正気の私に助けてって泣きながら縋りついてきたのには驚いたわよ。
ま、まあ、最後にはクロードさんにお仕置きされるのを喜んでた節があったんだけど……。
私のステイタスにあった『創造神の奴隷』とか『創造神の性奴隷』とかの称号が消えてくれて助かったけど、新たな称号が『クロード様の奴隷♡』ってなに!?
もう一人の私ってば、クロードさんの虜になっちゃったわけ!?
洗脳というより、別人格を植えつけられてたっていう方が説明ができそう。
ま、まあ、新しい称号に関しては、クロードさんには内緒にしてる。
だって知られたら恥ずかしいじゃない。
初恋もまだだったのに、糞爺に手籠めにされて調教まで……。
それでこんな称号までついて、これじゃあただの変態だよ、私……。
最近では、寝てるともう一人の『私』が、私にクロードさんのモノになれば気持ち良くしてくれて、温かくって幸せな気持ちになれるわよって囁きかけてくる。
そ、そりゃあ、少しは気になるわよ。
怒るととてつもなく怖いけど、それ以外だったら頼りないけど優しいし、気遣いも出来るし、恋人にするんだったらクロードさんみたいな……。
い、今の無しよ、無し。
もう一人の『私』に引きずられてるだけなんだから。
シルフィーさんとは、まだギクシャクしてるけど一応は許してもらった。
許してもらったというより、許さざるを得なかったんじゃないかなと思う。
だって、最初シルフィーさんと顔を合わせた時なんかは、剣を抜いて斬りかかってきたんだよ。
まあ、洗脳されているとはいえ、彼女の大切な赤ちゃんをお腹から引きずり出して握り殺したのは間違いのない事実なんだし、『神殺し』に至ってなければ、神である私を殺せないと心の底では高をくくっていたのかもしれない。
けど、シルフィーさんの剣は、私に傷をつけた。
「きゃあああああ、嘘、嘘、うそぉ、何でこんな簡単に『神殺し』が候補でもなく誕生しちゃうの!?」
「母は強し!だね。あっ、ウリエルが死にそうだね。少し多く回復しておかなきゃ」
クロードさんが軽い言葉で回復魔法を掛けてくるけど、ちょっと回復量が多い奴なんじゃないかな?その回復魔法は。
そ、それって洗脳状態に戻っちゃうんじゃ……。
「ふざけんなよ、糞ビッチエルフが!あんな状態で出産なんかできるかよ!殺してやった方がお前にとっても、子供にとっても良かったんだよ!」
「うるさい!死ねぇ」
「はいはい、そこまでだよ。フィー。ウリエルも洗脳状態から戻ろうか」
「え?」
「あっ、や、やめて、お願い、痛い」
そっりゃあね。
目の前で、洗脳状態から正気に戻すためとは言え、殴る蹴るを笑顔で始めるクロードさんを見たら、怒りに我を忘れてるシルフィーさんでもドン引きするわよ。
まあ、その後シルフィーさんも笑顔のクロードさんにめっちゃ怒られてたけど……。
ただ、まあ、夜の営みは勘弁してほしい。
毎晩毎晩、隣のテントから聞こえてくるシルフィーさんの嬌声。
絶対ワザとやってるよね、シルフィーさん。
私だって子供じゃない。
糞爺が相手だったとはいえ、経験だってそれなりにあるんだからさ。
あ、あんなに愛されて、何度も天国に行っちゃってるシルフィーさんが、う、羨ましいとか思っちゃうのは致し方ないと思うのよ。うん。
わ、私だってあんなふうの愛されたいと思う訳でして、うう、段々気になっちゃうわけで……。
畜生、あの糞爺め、私をこんな風に調教しやがって、でも、クロードさんのあれってそんなの凄いのかな?
あの糞爺よりも凄かったら、もう戻れないかも……。
てか、シルフィーさんまだ呪い解いてないよね?
また子供出来ちゃうよ?
ちゃんと警告したからね。
普人種族とはいえ基礎レベル7200は伊達じゃないんだよ。
エルフ種族と普人種族の間で子供ができる確率は0.001%だって言われてる。
それは基礎レベルが同じ場合だ。
クロードさんは、基礎レベル7200ぐらいで、シルフィーさんは120ぐらい。
その差7080レベル……。
子供ができる出来ないは、男女差にもよるんだよね。
子供が特に出来やすいのは、男性の側が圧倒的に基礎レベルが高い事。
逆に男性より女性の方が圧倒的にレベルが高いと子供が出来にくい。
クロードさんとシルフィーさんの場合だと、子供ができる確率は0.001%に基礎レベルの差によるから7080を掛けると1回当たり7%超えてるんだよ。
それを一晩に何度もなんて……。
クロードさんとしちゃうと、女神の端くれである私でさえ確率は1%以下とはいえ妊娠しちゃうんだからね。
逆にクロードさんに避妊魔法を掛けられると、私達はクロードさん以外の子供を妊娠できなくなるだからね。
そこのところちゃんと分かってる?クロードさん、シルフィーさん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます