第30話 世界の狭間の何処かで

 ここは世界の狭間の何処か。

 そこに三人の見目麗しい姉妹の女神がいた。

 彼女達はそれぞれ長女の創成の女神アルテナとその従属神である次女のルーナと三女のウリエルたちだった。

 自分達が創成した世界を見ていたウリエルが、つまらなさそうにぼやく。

 「あ~あ、玩具勇者ケインが簡単に死んじゃったじゃん。ウリエル、つまんない~。せっかく用意した玩具勇者ケインのための玩具オンナにも手を出さないし、こうもっとクチョグチョの関係になってくれれば面白かったのにぃ~。ねえ、アルテナ姉様、新しい玩具勇者が欲しいなぁ。今度は愛憎劇満載になるような奴とか?」

 アルテナは、そんなウリエルをクスリと笑みを浮かべながら提案する。

 「そうね、面白そうなのがいるわよ」

 「ええ、誰々?」

 「クロードっていう普人属の男ね。基礎レベル7200だそうよ。この子に一杯暴れてもらったら誰も止められないから、楽しくなるわよ」

 「ええ~、でもそれだと強すぎてつまらなくない?」

 「大丈夫よ、このクロードっ子には、とってもとっても大切な女の子がいるのよ。三女神の婚姻誓約書を交わしていたリリアっていう娘がね。薬で正気を失っていたとはいえ、玩具勇者に一週間散々弄ばれた阿婆擦れなの、婚姻誓約書を破って罰が下って痛い思いをしたのに、この間なんか禊も始めてないのに玩具勇者だと気が付かないで近づいて、口づけされて神罰を発動させた子なのよ」

 「なにそれ、笑えるぅ。ガード緩すぎじゃん。もしかして、アルテナ姉様、そのリリアって娘に何かするつもりでしょう」

 「そうね……。呪いを掛けてあげるのもいいわね。それともリリアって娘も玩具勇者にして、玩具同士恋い焦がれながらも決して結ばれることもなく、憎しみ合い殺し合うなんてどう?」

 「それならさ、そのリリアって娘、全員女でも男でも何でも良いからさパーティー組ませて、もっとグチャグチャに甚振ったら面白そうじゃない?ガード緩いから嵌まれば、頭おかしくなって面白い事が起こるかもよ~」

 三女のウリエルが無邪気に残酷なことを提案してくる。

 昔はもっと素直でとても優しい妹だったのに、今では人を甚振ることに罪悪感もなく楽しんでしまうようになってしまった。

 「それよりアルテナ姉上、我々の玩具勇者に手を出したあの者達を懲らしめなくて良いのですか?」

 次女のルーナが表情の無い顔で聞いてくる。

 昔のルーナはもっと表情が豊かで恥ずかしがり屋だったのに、今では心が壊れてしまって感情が無くなってしまった。

 たまに交わす言葉も事務的なものばかりだ。

 「そうね、今回はルーナ、貴方がやる?」

 「よろしいので?」

 「いいわよ、なかなか楽しめそうだし」

 「では、さっそく」

 「じゃあ、私はこのクロードっていうヤツに『勇者』だって告げてくるね」

 「ええ、お願いね、二人共」

 「は~い」

 「はい」

 ルーナとウリエルが空間から消え、アルテナだけがこの場に佇む。

 そして一人呟く。

 「ふう、まったく創造神様もなかなかやってくれるじゃない。でも、まだまだ私達姉妹の力を減じるまでには至ってない。それはそうよね。この創成の力は貴方の力そのものですもの。精々苦しめばいいんです。ウフフフフ、あはははははは、そしてもっともっと楽しませてくださいな、創造神様、いえ、おじいさま。私達をこんな風にしたのは、貴方なのだから……。私は貴方に穢されながら、ルーナとウリエルには手を出さないでと必死で懇願したのに、結局は妹達を守ることが出来なかった。だから、これは復讐なの。私は貴方を許すつもりはないわ。だから、私は貴方に媚を売り、穢され続けながら貴方の創造神としての権能を奪ったのよ。その貴方の薄汚い欲望によって穢された私達姉妹を厚顔にも滅ぼすというのなら、ともに滅びましょう。それが私達姉妹の心からの願いなのですから……」

 女神アルテナは創造神を嘲笑しながらも、両目からは涙が溢れ、自分の身体をきつく抱きしめながら震えていた。

 もう戻ってこない何かをこれ以上奪われないようにするかのように……。

 「ごめんなさい、ルーナ。ごめんなさい、ウリエル」

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