第15話 リリア、頑張る!
毎日続く年増シスターの精神攻撃と可愛い二人のシスターによる解毒魔法のお陰で本当に徐々にだが、ぼやけていた意識がクリアになっていく。
そして、今の私には取り敢えずの目標が三つ出来た。
あの年増のシスターをボコること。
次に私を騙したクズをボコること。
クロードともう一度会うこと。
年増シスターとクズは、私と比べて遥かにレベルの差が大きいから、上手くいかないかもしれないけど、上手くいかないなら不意打ちするか、闇討ちするかしかない。
あのクズの場合は、色仕掛けして油断したところをアレを切り落とすか?
いやでも、返り討ちにされたら、もう二度とクロードに合わせる顔が無い。
ただでさえ、私は薬のせいとはいえ、一度やらかしている。
やっぱり確実なのは、闇討ちして、ひん剥いて、切り落として、街路樹に逆さ吊りに縛り付けて、晒す?
「うっふふふ、いいわね」
「ちょっとリリアさん、何気持ち悪い笑みを浮かべてるんですか?」
「ぴぁっ、びっくりさせないでくださいよ、シスター」
考え事をしている間に、いつもの年増シスターと可愛いシスター二人が目の前に居る。
「どうせクズにどうやって仕返しするか考えてたんでしょう?」
年増シスターがニヤニヤしながら、先程まで私が考えていたことを言い当てる。
「な、なぜ、それを・・・・・・。」
ビックリして、私は年増シスターの顔を見る。
「だって口から洩れてましたよ。私のことは年増とかボコるとか」
「だ、だって、年増のシスターが酷い事言うから……、ぶつぶつ
・・・…」
つい本音を漏らしてしまった私の両頬を年増シスターが、額に青筋を立てながら思いっきり摘まむ。
「そういう事いう子には、御仕置です」
その様子を可愛いシスター二人が後ろで額に手を当て、首を振って呆れている。
「ひ~ん、いひゃいです。ゆるひてくらひゃい」
「それだけ元気が出てくれば、大丈夫でしょう。じゃあ、何時もの解毒魔法を、私は精神攻撃を……」
「シスター!もういい加減にしてください」
「最近は冗談に聞こえなくなってきましたし」
「精神攻撃コワイ、精神攻撃コワイ」
シスターに苦言を呈する可愛い二人のシスター。
精神攻撃と聞いて、本気で怯え始めるリリア。
ニヤニヤ笑みを浮かべながら、ベットの上のリリアを見下ろす年増シスター。
毎日の日課になりつつある極ありふれた日常風景である。
今日の治療を終えたシスターたちが病室を出て行くと、リリアは今度は自分で自分に対して解毒魔法を掛け始める。
リリア自身は、1日に解毒魔法を四、五回しか掛けることができない。
しかし、重度の薬物中毒だった時と比べればはるかに前進である。
あの頃は、自分に解毒魔法を掛けること自体、頭になかったのだから。
でも、まだまだ身体がだるいし、思考が完全にクリアになってもいない。
それでも私は回復術師だと、自分に言い聞かせて折れそうになる気持ちを振るい立たせる。
自分に解毒魔法を掛ける。
解毒魔法を魔力が尽きるまで掛け続ける。
「うっ、頭痛い。気持ち悪い……」
魔力切れによる症状だ。
これが出たら自身に魔法を掛けるのと中断して、ベットに横になって魔力の回復を図る。
なんだか体力も随分と落ちてるみたい。
食べる量を増やして運動して、魔力が回復したらまた解毒魔法を掛けて、を繰り返さなきゃ。
クロードと離れてすでに二月が経過している。
この二月の間に、運よく月のものが来たので、先ずは安心した。
それというのもリリアは、村にいる時から今までに教会で避妊魔法を掛けてもらったことが一度もなかった。
そういうことをする相手は唯一人、クロードだけだと思っていたからだ。
だから、いくらシスターたちが薬物中毒のせいだといっても、リリアは一週間避妊もせず行為に耽った自分やクズの行為に寒気がしたものだ。
これで子供まで出来ていたらと思うと本当に恐ろしい。
その時、私は正気を保っていられただろうか?
実際、後になって教えられたことだが、クロードに別れを告げられ、自分が他の男性と関係を持ったと言われたとき、私は自分の頸に部屋に落ちていた大きめの窓ガラスの破片を突き刺したそうだ。
それもかなり深く……。
レベルの高いシスター達が居たから良かったものの、もし居なかったとしたら確実に命を落としてたことだろう。
その時のことは覚えていない。
でも、心が抉られるほど痛かったことだけは覚えている。
私ってクロードが好きだって自覚はしていたけど、薬のせいとはいえ他の男と関係を持ったと言われて躊躇いもなく死のうとするほど好きだったんだ……。
他人に言われて自覚する想いもあるというけど、これはこれで重たすぎだろう。
早く元気になって、禊も始めなくっちゃ。
クロード君って意外にモテるからなあ、しかも年上に……。
すでに女性が一緒に居たりして……。
たとえそうであっても、私は負けないよ。
もう一度、最初から好きになってもらうんだから。
今はもう無い首の刺し傷に右手をやりながら、リリアはそんなことを思い微笑んでていた。
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