第14話 シルフィーの秘密と決意(改稿第3版)
眠りから覚めると、すっきりした気持ちのいい朝だ。
「う~ん、良く寝むれた~」
起き上がりながら、腕を伸ばす。
すると、隣で寝ていたクロード君は横になったまま固まっている。
疑問に思い、質問する。
「あれ?クロード君どうしたの固まっちゃって?」
「シルフィーさんががっちりホールドしてたから、動けなかったんですよ」
あはは、クロード君は私にがっちりと抱きしめられていて凄く寝辛かったようだ。
「あっ、ご、ごめんねぇ~。でも、こんなによく眠れたのは久しぶりだよ。ありがとね、クロード君」
よく眠れたのは事実だし、一応お礼は言っておかないとね。
でも、朝にしては太陽の位置がいつもより高いような気がする。
「ところで、私どれくらい寝てたかな?」
「そうですね、今、太陽がほぼ真上ですから、お昼前後ってところでしょうか?」
「ええ!?そんなに寝てたの?本当にごめんねぇ。でもクロード君も悪いんだよ。途中から人が変わったみたいにすっごく激しいんだもん。お姉さん何回もイッちゃったんだからね。何回もやめてって言ったのにやめてくれないし……。うん、でも、今日はなんだかすっきりした良い顔してるね、クロード君」
そう、彼を押し倒してエッチしてる最中、クロード君が人が変わったかのように私を激しく攻めてきたんだよねぇ。
で、激しすぎてきつかったから、クロード君を止めようとしたら、ちくしょう、リリア、どうしてって泣きながら私を責めてたっけ……。
私はその時思った、ああ何かあったんだろうな、そのリリアって女の人と。
だから、私は途中からクロード君の全てを受け止めることにしたんだけど、いやぁ激しすぎだよ。
本当に何回失神したか、わからない。
頑張ってクロード君のこと受け止めたんだよ。
誰か褒めてよ。
「そうですか?」
「うん、昨日は何か思い詰めたような顔してたから、ちょっと心配だったんだ」
クロード君には自覚がないみたいだけど、今日の方が断然いい表情だ。
初めて言葉を交わした時、なんとなく危うい子だなって思ったのは内緒。
冒険者をしてるって言ってたけど、冒険者の基本が全くなかったのにも驚いた。
まあ、そういう私も行きずりの男の子と無理矢理関係を持つんだから、人のことは言えないか。
毎晩、襲ってくる狂おしく激しい性的衝動。
これは私に掛けられた呪い。
クロード君には里帰りと説明してるけど、私の故郷はもう無い。
何年も前に邪竜によって滅ぼされたんだ。
そして邪竜は、偶然生き残った私に面白半分に呪いを掛けた。
邪竜化の呪い。
呪いが発動すると、エルフから知能の無い邪竜に変わり果てるというもの。
そして、呪いの発動を押さえる方法は、エルフ以外の種族の男性の精を子宮に受けること……。
邪竜がわざわざそう説明するところが厭らしさ満点だった。
エルフ種族は総じてプライドが高い。
自分達以外の種族を見下しているといってもいい。
そして極め付けが、エルフ種族の男性は性関係に淡泊なのだ。
それでは面白くないとでも邪竜は考えたのだろう。
私は滅びた故郷を旅立って、最初の村に辿り着くまでそう思っていた。
ただ、村を出てから、毎晩のように襲ってくる激しい性的衝動に私の精神はガリガリと削られ、まともに眠ることもできなくなった。
私に呪いを掛けた邪竜は、本当に悪辣だったと後で思い知る。
ある普人種族の村に辿り付いた時、私は藁に縋る想いで村の教会で呪いの解呪をお願いした。
しかし、呪いを解くことはできなかった。
邪竜のレベルが高すぎるのが原因だった。
そして、分かったことがある。
村を出てから、毎晩襲ってくる狂おしいほどの激しい性的衝動さえも、邪竜化の呪いによるものだった。
そして、私が死んでも邪竜化の呪いが発動するということ。
村の教会の司祭の鑑定で分かるということは、邪竜は呪いをそういうふうに作ったという事……。
教会の司祭レベルでは呪いを解くことはできない。
しかし、教会の司祭レベルで呪いの内容が詳しく説明できるように。
邪竜になりたくなければ、自分達が見下している種族の男と交われ!
交わりたくなくても、自分達が見下している種族の男と交われ!
死に逃げても、救われることはない!
そう言われているように感じ、絶望した。
その晩、私は村の男達相手に初めてを散らした……。
次の日の村の女性達の私を見る侮蔑の眼を今でも覚えている。
その後、私は邪竜化の呪いを隠して、冒険者になった。
幸い基礎レベルが高かったから、上手く偽装できた。
上手く偽装できたまでは良かったけれど、私のこの激しすぎる性的衝動はパーティーを組んだ仲間の女性達に多大な迷惑をかけ続けることになってしまった。
気の良い仲間たちと冒険できるのは楽しかった。
だけど、私が毎晩いろいろな男と寝るものだから、パーティーのメンバーまでそういう目で見られ、男性冒険者とのトラブルが多くなった。
そして先週、迷惑をかけ続ける私に仲間は愛想を尽かして、私をパーティーから追放した。
そんなだからか、何処の女性パーティーも男女混合パーティーも私を入れてくれるところはなかった。
あるとしても男性パーティーの性処理係としてでしかなかった……。
そんな扱いでも構わないと思って、男性パーティーに所属したこともあったけど、二日と経たず追い出された。
どうやら私のこの激しすぎる性的衝動は、男性冒険者にとっても厄介なものだったらしい。
呪いの発動を抑えるには、男性の精を子宮に受け入れればいい、だけど性的衝動は私が失神するまで治まることを知らない。
だから、男性冒険者達でさえ一晩相手をしてくれるだけで、二度と相手をしてくれなかった。
そして、何処のパーティーも私を受け入れてもらえなくなった……。
もうどうでもよくなった私は、エルフの仲間たちが眠る里に戻り、死んで邪竜になるつもりでいた。
エルフの里なら、森の奥に隠れ里のように存在しているから周りの迷惑も少ないだろうし、万一のために冒険者ギルドには、邪竜化した私を討伐してもらえるように討伐依頼も出してある。
そんな死出の旅の最中に私はクロード君に出会った。
冒険者仲間からパーティーを追放され、街を飛び出すように出てきた。
何日も激しい性的衝動に悩まされ、睡眠も満足にできなくなっていた私だけど、クロード君の後ろ姿を見た時、横に並んでそっとその横顔を盗み見た時、私の胸を打ち抜くものがあった。
それがいったい何なのか、今の私にはわからない。
でも、このままクロード君を放って置いちゃいけないって強く思ったのは確か。
だから、クロード君に声を掛けたの。
無視されると、途端に悲しくなって涙声になっちゃった。
夜は性的衝動に負けちゃって、クロード君を襲っちゃったけど、まさか何度も失神させられるとは思わなかった。
そして、私は密かに決意したんだ。
クロード君に私が知ってる冒険者としての基礎を全部教えようって。
それだけじゃない、女性の身体の事も、戦い方の事も、剣の事も、魔法の事も、私がエルフとして知っている魔力操作の方法も知識も全部。
それまでは、私がクロード君を守る。
そして、邪竜化した私を倒してくれたらうれしいなぁと思うのは、私の密かな願望かな。
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