第8話 こんなわたしなんかいらない(改稿第1版)

 ぜんしんがすごくいたい。

 そのなかでもさんめがみさまのこんいんせいやくしょのせいもんがいちばんいたい。

 どうして?どうして?どうして?

 わたしうわきなんてしてない。

 さんめがみさま、どうしてせいもんがいたいの?

 ああ、くろーどだぁ。

 くろーど、くろーど、くろーど。

 だいすきなくろーど。

 あれ?けがしてるの?

 またくらうんのめんばーにぼうりょくふるわれたの?

 わたしがからださわられるのをがまんしてるのにひどい。

 やくそくまもらないなんてゆるせない。

 わあ、くろーどにおひめさまだったされちゃった。

 うれしい。

 どこにつれていかれるんだろう?

 くろーどにつれていってもらえるならどこでもうれしいよ。

 ああ、めのまえにさんめがみさまのぞうがある。

 しさいさまも。

 もしかして、これからけっこんしきなのかな?

 からだじゅうがいたいけど、うれしい。

 しさいさまのこえがきこえるの。


 「では、時間もないことですし、始めましょう。婚姻誓約書を結びし二人は、残念ながら誓約を果たせぬこととなりました。クロードよ、このような事態になり、リリアを許すことができますか?」

 「はい、許します」

 「では、ここにクロードとリリアの婚姻誓約書は解消され、誓約を果たせぬこととなった原因であるリリアは、その聖紋が消えるまでの間、教会にて禊を行う事とする」


 え?どうして?なんで?こんいんせいやくしょをかいしょうしちゃうの?

 ねえ、わたしうわきなんかしてないよ?

 どうして?

 どうしてくろーど?

 こたえてよぉ

 やだよ、やだよ、どうして?ねえくろーど

 「リリア……」

 くろーどのこえだ、やさしいこえ、わたしはこのこえがすき

 「愛しているよ、どうか幸せに……」

 わたしもあいしてるよ、でもなんででていこうとするの

 どこにいっちゃうの?

 やだよ、おいていかないでよ

 やだぁ、いかないでぇ。

 くろーどぉ、なんで、なんで、なんで。


 こんな役、本当はやりたくない。

 でも、ここまでやらないと儀式が終わらない。

 三女神様も残酷だ。

 だから告げる。

 彼女にとって、信じていたものが壊れるであろう真実を。

 三女神の婚姻誓約書という儀式が一般社会で廃れた理由。

 悪意に満ちたこの世界で、三女神の婚姻誓約書はあまりにも清廉潔白さを求めすぎているから……。

 「良い?、心を落ち着かせてよく聞いてね。今の貴方には理解できないかもしれないけど、貴方は重度の薬物中毒で幻覚を見ていたの。貴方がクロードさんだと思っていた人は、全くの別人だったの。貴方はクロードさんとは違う人に操を捧げてしまったの。だから、三女神の婚姻誓約書は貴方に天罰をくだしたの。でも、クロードさんはそんなあなたを許した。貴方はクロードさんに救われたのよ。薬物中毒を治して、禊さえ終わればまたクロードさんの元へ行けるわ。だから頑張りましょう?」


 うそ!うそだよね、わたしのはじめてをささげたくろーどがにせもの?ちがうひとなの?

 じゃ、じゃああのひからまいばんだいてくれたのもちがうひとなの?

 そんな、くろーど、くろーど、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい

 あんなにきもちよくたくさんあいしてくれたのがくろーどじゃないの?

 あ、ああ、あああ、あああああああああああああああああああああ。

 ちがう、くろーどじゃない。

 くろーどじゃないよ。

 なんであんなひとをくろーどだとおもったの?

 いやだいやだいやだいやだ、わたしのからだにさわらないで

 なんで、くろーどじゃないのにあんなことしてるの?

 きたないきたないきたないきたないきたないきたないきたない。

 こんなよごれたからだなんていらない。

 いらない、いらない、いらない、だからけそう。

 ごめんなさい、くろーど、こんなよごれたわたしはきえるど、くろーどはしあわせになってね。

 さようなら、いまでもあいしてるよ、くろーど。


 「リリア!何てことを。ガラス片を喉から抜きながら回復魔法を掛けて!早く!」

 だから私はこの儀式が嫌いなのだ。

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