第7話 自分が間違えた結果(改稿第1版)

 俺は今、教会の外の広場に設置された簡易救護施設のベットで横になっている。

 考えているのは、ダンジョン地下1階層で起こったことについてだ。 

 クロードが何らかのスキルを使った。

 だが何のスキルを使ったかはわからない。

 嫌な予感がしたから、魔力を有らん限り注ぎ込んだ魔力障壁を展開した。

 ただ、クロードを中心に風景が真っ白な閃光に包まれてからの記憶が俺には無い。

 気が付いた時にはダンジョンの外で仰向けに倒れていた。

 右目と左腕の肘から先を、左足の膝から下を失った状態で……。

 急いで血止めのために回復魔法を唱えて応急処置を済まして、誰かが来るのをひたすら待ち続けた。

 まさか、ダンジョンを中心に十キロ四方が消滅しているとは夢にも思わなかった。

 その後、救助捜索活動に当たっていた冒険者に発見されて収容された。

 クラウン《暁》の連中に見付からなくってよかったと内心安堵していた。

 その後聞いた話では、クラウン《暁》は救助捜索活動に参加しなかったらしい。

 俺が収容されて一日経過したあとにクロードが、俺が発見された方角とは真逆の方向で大怪我した状態で見つかったらしい。

 俺もクロードもダンジョン地下1階層にいたことが幸いしたのかはわからないが、辛うじて生きてはいる。

 ダンジョン地下階層に潜っていた冒険者たちは誰一人生き残った連中はいなかったそうだ。

 クロードは大怪我で意識不明、俺は右目と左腕、左足を失った。

 この領都には最高位回復術師はいないから失った右目や左腕、左足を元に戻すことはできない。

 事実上、冒険者は廃業だろうなと思う。

 折角ここまでついて来てくれた仲間達には申し訳ないが、これも一種の天罰なのだろう。

 そして、救助捜索活動が一段落着いた頃にパーティーメンバーが見舞いに来てくれたのだが、俺はそこで自分が犯した罪を改めて突き付けられることになった。

 リリアとクロードは、よくある幼馴染で許嫁という関係ではなく、婚姻誓約書を交わした関係であったこと。

 そして、リリアが教会の司祭に弟子入りしている回復術師だったこと。

 その他色々と事情説明がなされた。

 昔の彼女と面影を重ねて、彼女を救うと称して手を出して良い人ではなかった……。

 それを俺は……。

 「クロードに言われた通りだったな……」

 「それでね、ケイン……。クロードが目を覚ましたんで、教会のシスターが事情を説明しに行って、動ける程度まで回復魔法を掛けて、リリアは無事婚姻誓約書の解消の儀式は出来たんだけど……」

 「何かあったのか?」

 「クロードとの婚姻誓約書の解消の、その、本当の理由を聞いてね、まだ薬物中毒でまともな思考もできてないはずなんだけど、窓ガラスの破片で自殺を……。一応助かりはしたんだけど、誰も部屋に入れてくれなくなっちゃったの」

 「それでクロードは?」

 「婚姻誓約書の解消のあと、いなくなっちゃった。まだ怪我だって治りきってないのに、ごめん」

 「全部俺が悪いんだから謝らないでくれ」

 「それと、今回の件でギルド長と教会、領主様がクラウン《暁》の件も含めてダンジョンで何があったのか事情を聞きたいんだって。だから、領主邸まで来てくれって」

 「分かった。済まないが車椅子を用意してくれないか。もう一人じゃ動けないから。それから、パーティーを解散しようと思う。こんな体じゃあ、もう冒険はできないだろうから。皆も身の振り方を考えておいてくれ」

 自分が間違えた結果が重いのか軽いのか、今の俺には判断が出来なかった。



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