アンデット 15
ジャックに電話をかけた時、一緒に警察官を連れてきて欲しいと頼んだ。
そしてその警察官には管理棟のところで管理人を見張ってもらっている。
ジャックには念の為にと伝えていたが、念なんて最初から存在しない。
空になった墓に関しては同名が彫られている墓石が解決してくれるだろう。
だが、老婆を追い回した人物に関しては墓石だけでは見つからないだろう。
もちろん、その二つは同じ人物たちによるものだ。
だが、その人物たちを誰も知らないのだ。
墓に金が入っていて金は回収できたとしても犯人を捕まえることはできない。
唯一犯人を捕まえられるとすれば…
「管理棟の前を通ったとしても、この場にこっそり出入りするのは意外と簡単ですよ。」
「どういうことです?管理人は常に外に目を配っていますし、ここにはゲートもあります。入るのは難しいかと」
遠目に見える管理棟をさしながらジャックは指摘した。
「ゲートですが、車止め程度のものなので歩きの人間にとってはなんの障害にもなりません。
それに常に目を配っているはずの管理人が目を離す瞬間があるんですよ。」
「どういうことです?」
「テイクアウトのバイク便ですよ。」
大通りが遠いのであればバイク便は通っていないだろうが、ここは幸いなことにすぐそばが大通りで街中にある墓地なのだ。
管理人が注文してもおかしくはない。
「バイク便は確かに記録にはありましたがそれが関係ありますか?」
「管理人とてお腹は減るものです。
そして食事をしてる時間は目を離しますよね?」
「離しますが、犯人たちが定期的にここに来ていることを考えると、そう都合よくいくでしょうか?」
お金を入れに来たときだけでも何往復かしなければならないとなると一度きりという手は使えない。
だからテイクアウトだったのだ。
「定期的にテイクアウトを注文することさえ分かっていれば簡単です。
そうすればその飲食店にいるだけで人目を避けて定期的に通うことが可能です。」
「バイク便の人間は中まで入れませんよね?」
バイク便として来ている人間は記録に残る以上不審な行動も取れない。
だが、管理人の目さえどうにかなれば無理に墓地に入る必要もない。
「別にバイク便の人間が入る必要はありません。犯人たちが墓地に入らなければならないその時間帯に仲間の一人がテイクアウトの従業員として話し込んでしまえば食事で管理人の目もそれます。
仕事といえ墓地に用事がある人間はほとんどいないだろうし、何の変化もない外なんて見なくても問題ないだろうと管理人は断定したんじゃないでしょうか?
それに、万が一見ようとしたところで犯人の仲間が側にいれば見ないようにフォローすることもできますし。
そう考えると、おそらくテイクアウトの従業員も彼らの仲間でしょう。」
「ですが、それは何の証拠もない過程に過ぎないでしょう?」
「確かにそうです。これはあくまで仮説です。
ですが、裏付けできる人物がいればどうでしょうか?」
「と言いますと?」
「毎度うまくいっていた方法が必ず次も成功するとは限りません。
実際、今回は警察まで動くほどの騒ぎとなってしまいました。
今回、墓地に侵入するところまでは良かったのでしょう。
運悪く先客がいて、運悪くその先客に見つかってしまった。
彼らは女性が管理人のところへ行く前に捕まえようと女性を追いかけたんです。
ですが、女性は管理棟まで辿り着き、今回ばかりはテイクアウトをしに来たバイク便のフォローも無理だったみたいですね。
結局騒ぎとなり、いつもやっている小細工はできなかった。」
「でしたらその時に墓地に犯人がいても良さそうですが、女性以外誰もいませんでしたよ?」
「警察が来る前に逃げたのでしょう。
犯人たちはその時に見られてしまった管理人にお金でも渡したんでしょう。
そして管理人はそれを受け取り、犯人を見逃した。」
「何故そう言えるのですか?」
「時計ですよ。あそこにいる管理人が持っていた時計、一般の人間ではなかなか買おうと思って買える金額のものではないんです。
先程どうされたのかと聞いたところお父様の遺品だとのことでした。」
あまりのおかしさに、クックッと喉から笑い声が漏れてしまう。
途端にジャックが怪訝な顔をしたものだから「失礼」と言ったが、あまりに可笑し過ぎるのだ。
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