アンデッド 12
「そうだとしても、お墓を掘り起こすという行為は許されないものです。」
許されないが、不可能じゃない。
法的に手順を踏んで持ち主から許可さえ取れれば可能だ。
目の前のジャックのいう許されないというのは、法的にというより死者への冒涜だという意味合いなんだろう。
だが、掘り起こさない限り決定的な証拠にはならない。
俺の予想が正しければ、全て空か金が入っているはずなのだ。
今回ジャックを読んだ理由はなにも現状把握していることを報告するためじゃない。
たしかに急いできてもらった理由は管理人が証拠の時計を捨ててしまわないようにするためだ。
だが、それなら自分で動くことが出来る。
『ジョン・ルーデンベルク』という名の墓
その墓を掘り起こしてもらうために来てもらったのだ。
墓を掘り起こすという行為は警察権力でもなければ無理だ。
だからジャックを呼び出したというのに、このままでは完全な証拠にはならない。
「とりあえず、5つのお墓を確認しませんか?」
「確認したとて」
「『ジョン・ルーデンベルク』という名がこの狭い墓地に5つもあるなんておかしいでしょう?
お墓の形状も日付も全て同じなら尚更気になりませんか?」
「お墓を掘り起こす許可はだせませんが、案内をお願いします。」
日が傾き夕暮れ時に差し掛かってきた。
公園から聞こえていた楽しそうな声もまばらになり、この場に残っている人が少なくなってきたのだと分かった。
賑やかな公園から徐々に本来の墓地としての静けさを取り戻しているように感じる。
「いいでしょう?」
「興味深い場所ですね。」
「私の友人もここが好きなんです。
墓地なのに閑散とせず日中は人が立ち寄る憩いの場で夜には本来の墓地としての姿を取り戻す。
私はほかにこんな場所を知りません。」
「私にとっての墓地のイメージもここで随分と変わりました。」
普通、墓地といえば人が立ち寄ったとしてもお墓参りに行くときくらいだろう。
だからそれ以外の理由で立ち寄るのは躊躇する
だれかに駄目だと言われたわけではないが、お墓は静かにするものだというのが暗黙の了解のように感じる。
少なくとも俺はそう思ってきた。
だから普通の公園と一緒になりお墓だというのにこんなに人が行き来することに驚いた
「死者は休まらないでしょうけど、こういう場であれば私も気軽に来れそうです。」
「エドワードさん、死者もずっと静かだと退屈するものですよ。
だれもが辛そうに静まり返るより、私は今のように楽し気な場に身を置いたほうが幸せに感じます。
それになにより、ここであれば訪れる人もなく寂しく朽ち果てるということがないでしょう?」
たしかにそうだ。
もし自分が死者だったらと考えると、たまにしか人が来ない場所で静かに過ごすと考えるだけで寂しく感じる。
うるさいのは苦手だ
きっとそういう人もいるだろう
だが、そう口では言ってみるものの誰も来なかったら寂しいものだろう。
そんな暖かい雰囲気の墓地に風が吹き込み柳がサヤサヤと涼し気な音を響かせる
「一つ目はここです」と案内するとジャックはいつもかけているサングラスを外し、そこにたたずむお墓をまじまじと眺め息をのんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます