アンデッド 10

ジョン・ルーデンベルク作 『スケルトン』




ある少年の過去から物語は始まる


不景気で両親の会社は破産寸前

銀行はそんな両親の会社に見切りをつける


なんとか持ち直そうとあらゆる銀行をまわるが、誰も貸してなんてくれなかった

とうとう両親は少年をおいて自殺してしまう。


残った少年を待っていたのは一族からのたらい回しや虐め、暴力的な取り立てにも何度も苦しんだ


そんなありきたりだが悲惨な少年期だった


大人になった主人公を訪ねる人がいた

同じく銀行に融資を打ち切られ人生が変わってしまった一人だった。


あっという間に意気投合した二人

他にも同じような被害者がいると聞き、主人公は会うことにする


全く違う環境で育ち立場も違う五人だった

だが五人とも同じ時期に融資を打ち切られ、その打ち切った相手も同じと分かり互いに歓喜した。


やっと苦しみを分かち合える友が出来たのだと主人公も喜んだ。


そして、打ち切った相手が頭取になったと知る


そのことに怒り、泣き、感情がたかぶる


そうして一人がこう言いだすのだ


『復讐しよう』


当然、四人は迷った

各々今の生活があったのだ

恨みに思ってもそれは過去の話

当時ならともかく、ようやく築いた生活を壊すだけの覚悟はもてなかった。


しかし熱心な説得をうけ、彼らは一人また一人と賛同していく


そして最後の一人になった主人公

一人だけ抜けると断りきれず、渋々ながら参加することになってしまう。


狙ったのは当然、融資を断り自分の親を苦しめた頭取のいる銀行だった


計画を立て、逃走ルートも確保した

実行日が近づくにつれて主人公は怖くなった


本当にやるのか?

銃も用意してあり、発砲する可能性もある

もしかしたら関係のない第三者を傷つけることになるかもしれない

そう思うと夜も眠れなかった。


当日

銀行に予定通り強盗に入った5人

見事に5億を持ち出すことに成功した


誰にも見られず警報もならず

銃はあってもトラブルにはならず

それはあまりにあっけない強盗だった


後日

憎んでいた銀行は5億という大金を持ち出され倒産

彼らの親の融資を断った頭取は責任を取らされることになった


頭取への復讐をテレビで見届け、五人は二度と会わない約束する


過去への区切りをつけ

一人、また一人と現金の入った鞄をもち別れを告げていく


そして最後になった主人公

ようやく出会えた友人との楽しかった日々を思い出しながら皆んなが集まった部屋をまわる


「これからは違う人生が待っている」

そう、仲間の一人が言っていた


だが主人公は違う人生が全く思い描けなかった

ただ、仲間と出会い、復讐を成し遂げ、大金が手元にあるというだけ。

きっと自分の人生はそれだけだろう

違う人生なんてありはしないのだ


部屋から出ると太陽が別れを告げるように赤く染まっていた

夕日に涙ぐみ主人公は鞄を置いて部屋を出る


『あいつも金で苦労すればきっと俺たちの気持ちがわかるだろう』


そして、まるで捨て台詞のような言葉でこの作品は締めくくられるのだ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る