アンデッド 5
「では早速ですが現状わかっていることをお伝えします。
今回の事件は記事にもなっているのでご存じかとは思いますが」
「最初から聞きます」
「では最初から。」
そう言い、事件のあらましをジャックは説明しだした。
事件が起きたのは管理人が管理する集合墓地
夜10時のことだった
第一発見者は逃げ出した老婆
それ以外の人物はもう墓地にはいなかった
「でもわざわざ盗みをした人間が管理棟を通るとは思えません」
そういうと地図を広げ出入りしやすそうな場所をさす。
「墓地の周囲は全て高い塀に覆われていて、何もない状態でも出入りは不可能に近い。まして石棺を担いでなんて不可能です。」
「では出入口はこのゲートのみということですね。
管理人が外出していたか眠っていて出入りの人を見逃していたとかでは?」
「当然それは疑わしかったのですが、丁度その頃デリバリーの業者がそこを訪れて管理人と話していたので違います。
互いの証言に食い違いもありません。」
「そもそも本当に棺はなくなってたんですか?」
「えぇ。墓石がずれていてその下の棺はありませんでしたよ。」
資料のファイルからその時の写真を数枚取り出し地図の上に置いた。
写真に写っていたものはずれた墓石や周辺の様子そして墓の中の写真まであったが残念ながら引っかかるものは一つもなかった。
「新聞はアンデッドって言ってましたけど甲冑じゃなくて棺を引きずるアンデットって想像するといささかおかしな光景ですね。
ご婦人が死体に襲われたということは一次的に棺を脱ぎ捨てて中から飛び出したってことでしょうか?」
揶揄うようにいう。
どう考えてもイカれた話だ。
「そもそもその時点で棺があったのかさえ分からないんですよね。
二人ともパニック状態だったようで、管理人も第一目撃者であるご婦人も両名記憶が定かでないようではっきりしないんです。」
「目撃したご婦人は分かりますけど管理人もですか?」
「えぇ、管理人は何を尋ねても責任は自分にはないの一点張りでしたよ。
警察に聞かれると残念ながら多かれ少なかれそんな反応をされてしまうんです。
こちらとしては実際にどうだったのか聞きたいだけなんですけどね。」
参った、と他人事のように笑うジャックにため息しか出ない
「これなら自分が調査したほうがマシと思われるでしょう?」
そう、心を見透かされたタイミングでジャックは尋ねた。
「一般人が想像する捜査と警察が実際に行う捜査はまた違うのでしょう?そんなこと思いませんよ。」
見透かされ内心バクバクの状況でそう答える
多分ここに警察がいなかったら「何やってんだ警察」と言っていたに違いない
「お気遣いなく。実際に結果が出ていないのは事実ですし、こうしてエドワードさんを頼っている身としては何も言い返せません。」
「ですが、私のような一般人がいくら打ち切り間際とはいえ警察の捜査を邪魔して怒られませんか?」
「大丈夫ですよ、多分。
そうだ、せっかくですし探しにいってみます?失われた棺を。
おそらくアンデッドがいたとしても流石にこの騒動で逃げていると思いますので、そちらは期待できませんが現場を見た方が調査の役には立つでしょう?」
一時期アンデッドを見たいという人たちで殺到していたことを思い出す。
ここからだと距離がある墓地だが、記事も影響してここにまで人が押し寄せていたのは記憶に近い
「子供じゃあるまいしアンデッドなんて期待してませんよ。
単に誰かがいたというだけの話でしょう。
アンデッドがでる確率より管理人が見逃していた人為的ミスの方が可能性は高い。
まぁ、人間だろうとアンデッドだろうと用事がなければもう既にその場を去っているとは思いますけどね。
とはいえ、墓地には伺いたいです。ここにいるだけでは何も分かりませんし」
そう答えるとジャックは奥で書類仕事をしながら大きなあくびをしているメアリーにアイコンタクトをした。
途端にメアリーはしかめっ面をしてそっぽを向いてしまい、その反応を見たジャックはとても面白そうに笑った。
「では折角なのでこの後どうでしょう?
是非事件と同じ時間帯にいかがです?
よかったら暇そうにしているメアリーも一緒に。」
「なんで私が!?」
折角だから皆んなで行こう、そんな軽いノリだったがメアリーは顔を青くした
「助手なんでしょ?名目は。」
いつも喜んで仕事をするメアリーにしては珍しい反応だった。
メアリーはまだやらなければいけないことがあると言いたげだったが、残念ながらこの探偵社はメアリーが見る限りいつも暇を持て余していた。
そしてなんだかんだと仕事を見つけて口実をつくろうとしていたが、それも全て夕方になる頃にはすっかり終わってしまい仕事もなくなってしまい掃除も残務処理も全て終わってしまった。
つまり夜には暇になってしまったのだ。
結局メアリーも半ば強制的にジャックに連れてこられ今三人で墓場に立っている。
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