アンデッド 2
探偵社バラウルの探偵であるエドワードは今日も優雅にコーヒーを楽しむ
だがどうにも落ち着かない
先日アシスタントとなったメアリーが朝から掃除や資料整理と動き回っているのだ
自分だけのんびりとするのはどうにも気が引ける
高校生だったメアリーは事件に巻き込まれて働いていた書店を辞め学校を退学した。
事件のせいで殺される危険性があったからだ
そしてメアリーは今までの生活を全て捨てバラウルで暮らすこととなった。
まだメアリーの事件は解決していない
たとえ無関係だったとしても依頼人はメアリーを殺すほど恨んでいる
早く依頼人に会えればいいが連絡先はおろか依頼人に関することは外見しか分からない
心当たりも探しつくし、もう探す先も見当がつかない
どうにもできないまま依頼が継続している以上危険はつきまとう
念のために依頼人が覚えていた特徴は変えた
特徴的な赤髪は白に染めたが色落ちしてしまいピンクの髪色に
オッドアイも念のため眼鏡をかけて分かりにくくした。
それでも安心はできない。
依頼されたメアリーの殺害も出来ておらず
かといって依頼の子供たちが変わってしまった原因も不明のまま
初めての依頼は何も解決できず打ち切ってしまった
罪悪感はあるがメアリーが働くことになり、嬉しい誤算もあった
想像していた以上に働き者なのだ。
以前は掃除が面倒で埃がたまったままになっていた時計も、綿埃が転がっていた床も、いつのまにか見事に部屋の隅々まで綺麗になっていた。
頬杖をつきコーヒーに角砂糖をいれる
じんわり溶ける角砂糖
その甘くなったコーヒーを一気に飲み干し本の代わりに打ち切った調査書類を引き寄せた
きっとまだ出来ることがあるはずだ
「エドワード、ここ全然お客さん来ないじゃない。」
そんな気も知らずメアリーは暇そうにしている俺を咎める
ソファーに寝転びながら先日の資料を読んでいたが注意をされ興が削がれた
「来ないなら来ないでいいじゃないか。」
「なに言ってんの?お客さんは来た方がいいに決まってるでしょ!
誰も来ないとエドワードはまた本ばかり読むことになるんだから。
それに稼がないとニートにもなれないじゃない」
紳士になるのは外にいる時だけだ
メアリーが住み込み数日、すっかり外面の良さはやめてしまった
最初は気を使っていたメアリーもそんな俺を見かねて、一週間も経たないうちにすっかり姉のように口うるさくなった。
「大体こんなTシャツ何処で売ってんのよ。
異国の言葉よね?読めないわ。」
明日着ようとつくねてあったシャツをメアリーはめざとく引っ張り出す。
「それはニッポンの友達に送ってもらったものだ!レアモンだぞ。
『悪食』っていうありがたい言葉なんだぞ!」
「レアものならちゃんと片付けなさいよ。大体意味あるの?」
「もちろんだ!悪いやつを退治するって意味だ!」
※悪食:普段食用にしないものを食べること
立ち上がり腕組をする
そして最近知ったばかりの異国の言葉を堂々と披露した。
はた、ともう一人いることに気付いた
あまりに堂々といるものだから場に溶け込みすぎて気づかなかった
「…。どうでもいいけど、メアリーそちらはどなた?」
入ってきたことさえ気付かなかった
朝ここに来たときはいなかったはずだ
それともあまりに存在感がなくて気づかなかったのか?
とにかくいつの間にか見知らぬ人が囲炉裏前の席に座っていた
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