第43話 行動開始
さて、その頃。日本の上層部。
度重なる異変と、国民の拉致。
そこで発見された新素材。
「まったく。『禍福(かふく)は糾(あざな)える縄(なわ)の如(ごと)し』と言うが、困ったものだ」
「一部の地域で、救出率が飛び抜けています」
「ほう。それはどうして。いや…… 発見者は別か?」
「いえ。同じですね。近所の大学生のようです。別添の資料が此処に」
A4のペラを受け取り、目を通す。
「君。これを読んだか?」
「いえ。まだです。先日、所轄から上がってきた……」
「だろうな」
言葉を遮り、ため息と共に言われる。
「読んで見たまえ」
紙が帰ってくる。
受け取り目を通すと、目が丸くなる。
「これは」
「そう。欲しかった情報。それも、原因と新素材について。そして、その情報源。名前を見たまえ」
言われて見直す。
「新世改。大学生ですな。あの発見報告者の。どうなさいます?」
「無論会いに行き、協力を依頼。魔王という奴の、家があるなら張り込めば良い」
「魔王に、近代兵器が通じますか?」
「その辺りも、彼なら妙案を出せないか聞いてみろ。ダメ元だ」
それを聞き、部下は黙って頭を下げ。部屋を出て行く。
部下を見送った彼は、窓の外。光り輝く夜景を眺める。
「『五里霧中』の中の光明。新世改。彼は何者かな? 神か悪魔か。普通ではないことは確かだが」
政府の動きは速かった。
改が万結と手を繋ぎ。そらを従え帰宅。
それを見計らい、訪問者がやってくる。
当然、改とそらはそれを知っていた。奴らは、大学からの帰り、ずっと周辺に居た。
そのため、万結の手を離さなかった。理由の分からない万結は、単純に大喜びだったが。
「ああ。俺が出る」
対応に出ようとした、万結を下がらせる。
帰ってきてすぐに、万結は戦闘モード。
ミニスカートに、タンクトップ。防御力は低い。
「いらっしゃいませ。どちら様で」
「新世改君。政府の特務機関のもので、今回の世界同時の異変調査室のものだ。先日所轄。警察署に出した資料のことで、少しお話を伺いたい」
少し考えたが、まあ良いかと、体をかわす。
「どうぞ」
「失礼する」
そう言って、入って来たのは三人。
山勢さん。斎賀さん。八瀬(やつせ)さん。
「早速だが、この報告書。真偽についてお聞きしたい」
受け取り、ざっと目を通す。
「まあ俺が言ったことで、間違いありません」
「それの証拠と言うか、確認をしたいのだが出来るかね」
背後に控える、そらに頼む。
「そら、向こうの服。いや、糸を出して」
すると空間に、糸の束が出現する。
「「「なっ」」」
無論。初見の三人は驚く。
「聞いて良いかな?」
「なんでしょう?」
「彼女は一体?」
「彼女は、こちらで言う、精霊の一人。空間を司ります」
「そらと申します」
そう言って、お辞儀をする。
「ご丁寧に、どうも」
そう言って、頭を下げる、山勢さんに糸を渡す。
「そら、これは、蜘蛛の方かな」
「そうです」
「だそうです」
「あの服は、君達が作ったものだったのか?」
「そうですね。救出に行くと、大抵みんな裸なので」
「あーそうだね。配慮感謝する。それ目当ての、自称カメラマンが出て困っていたんだ。保温シートや毛布は渡すが、ちょっとね」
「さてと、魔王の城か」
「そうだね。被疑者が帰ってくるなら、捕まえたい」
「そら。魔法を発動できないように何とかなる?」
「私たちが側に居れば、出来ますが。そのために改と離れるのはいや。ですので、つくしに全種属性対応の魔道具を創らせましょう。まずあの建物を囲み。力を封じる。その状態の魔王というものに、直接取り付ければ、そこから力は使えなくなります」
「だそうです。いかがですか?」
「そんな事が、出来るのか?」
ちらっとそらを見る。
「当然です」
そう言って、それはふんぞり返る。ちょっと鼻の穴が広がっているな。
どんどん人間ぽくなって来て、かわいい。
「じゃあ下見がてら。いや夜はやばいな。すみませんが、明日の朝また来ていただけますか?」
「どうして、夜はまずいんだ?」
「奴が、居る可能性がある」
「では、昼のうちに配置をして、夜間に作戦か。でも、向こうの時間も一緒なのかい?」
「いや、こっちの時間で、動いている感じですね。おそらく主として、生活はこちらで行っているのではないかと思います」
「ああ、被害者の食事が、コンビニ弁当だと記述があったな。分かった。協力感謝する。明日の朝、何時が良い?」
そう聞かれて、授業がまた飛ぶが。もう諦める。
「では、九時にこの部屋に来てください」
「承知した」
三人とも、ご機嫌で帰って行った。
蜘蛛の糸は、お土産に渡した。
嬉しそうに、万結がじゃれついてくる。
「勇者、改爆誕? 世界を救ったヒーローになれるよ」
「目立たないように、こそっとするさ」
そう言うと、万結がつまらなそうになる。
「人に、追いかけられ回される生活が、好きなのか?」
言われて、想像したのだろう。
「それはいやね」
「それに、今だと勇者のただれた生活という見出しが、確定として写真雑誌やSNS界隈でトレンドになりそうだしな」
「それもそうね。お姉ちゃん完全に開き直ったし」
噂をすれば、帰ってきた。
「ただいまぁ~。あらたくうん。聞いてよ、相手の営業がさ、気持ち悪かったのぉ」
そう言って、一目散に手洗いとうがいをした後、俺に抱きつき。キスの嵐を降らし始める。
「お姉ちゃん、あたし達を無視して、いきなりなに?」
「え~良いじゃない。辛かったのよぉ、お仕事。あらた君を補充しないと」
「電気を消して、向こうに行くか」
「「は~い」」
「ありゃ。もう寝たのか」
「報告です。マルタイ、サーモ反応。ロスト」
「ほう。転移と言う奴かな」
「本物か。まあ朝には分かるか」
「女の子二人は、姉妹。最近転がり込んだようです」
「なかなか、うらやましいな」
「まあ、朝八時半集合。解散」
「「「はっ」」」
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