第42話 あれ?

 一度、大学に行き。やっと授業を受ける。

「今日はシステム論だが、私の機嫌が良いので、日本においてのPCの変革について語っていこうと思う」

「あ゛っ。今日に限って」

 

「昔々、有名なリンゴマークのメーカーが一九七六年ガレージでキットを販売する。その頃、日本でも学習用キットモデルが発売されていく」


「この授業。何回目だよ」

「この先生マニアだからな。もう少ししたら、四メガヘルツだったCPUをクロックアップした話になるぞ」

「そうだよ。BASICというプログラミング言語で、家電の販売店に行って、こそっと、今で言うウィルスプログラムを作ったとか」

「そうそう、実行させるとキー入力をすべて変数に入力するようにして、リセット以外効かないようにしたって。割り込みに関しては、なんだっけ? ニーモニックだったっけ? そっちにストアさせるようにしたとか? ロードアキュームレーターだったっけ」


「ただなあ。退出すると、出席がなくなるんだよな」

「ああ」

 仕方が無いので、みんな好き勝手に内職する。


「はい。そこの学生。この頃発売されたPCはなんだ?」

「カラクラです」

「そうだ。あれはコンパクトで良かった」


「これテストに出るのか?」

「さあ。でもシーバスとかヌーバスとか覚えたぞ」

「インターフェイスは、何かでこそっと出るかもな」

 悠翔と二人ブチブチ言いながら、九十分間授業を受ける。


「次だ次」

 教室を移動する。

「皆さん、今日は特別授業を行いたいと思います。最近回路というのはデジタルが基本ですが、昔はアナログ回路で入力電圧と出力。それを用いた計算機が存在しました。特に微分積分では有用で」


「なんだ今日は?」

「さあ? 昨日、忘年会でも合ったのか?」


 そして昼集合。

「今日はなんだ? 先生達特別授業ばかりだったぞ」

「そっちも? こっちもだよ。橋梁の歴史だった」

 万結がぐったりしている。

 安田は別の意味で疲れていそうだな。


「安田。生きてるか?」

「うん? ああ大丈夫」

「顔が土色だぞ」

「そうか? メイクでもしようかな」

「肝臓かどこか、内臓疾患じゃないのか?」

「いや。食べ物は、理花が調合しているから、大丈夫だろ。晩飯の後は元気になるし」

「そうか」

 スッポン、マカ、マムシ、アルギニン、ビタミンE、亜鉛、ガラナ、シルデナフィルクエン酸塩まで、それらを限界までドーピングされているのだが、安田は知らない。


 俺もそんなことは知らないが、気になるので、こそっと、解毒と治療を使う。


 そこへ、理花がやってくる。ため息をはきながら。

「まいったわ。混ぜてはいけない化学物質シリーズだった。おもしろいから良いけどね」

 そう言って、突っ伏する。


 どうも大学全体が、やる気がなさそうだ。


「昼からも、特別授業かな」

「そうかもね」


「そういえば、設置した魔道具に反応があったから、夕方妖芽の所へ行くよ」

「何があったんだ?」

「さあ、仕掛けた魔道具に録画されているだろ」

「録画? 魔道具でそんな事が出来るのか?」

「ああ出来るみたいだな。うちのつくしと言う奴が簡単に創ったよ」


 魔王は思った。自身が望んだ魔道具が。一体どうやって創るのか想像も出来ない。

 つくしという奴に師事したい。


 昼食後。

 また特別授業を受けて、怠惰な時間を過ごす。

 昼からは、『日本におけるゲームの歴史』そして、やっと論理回路演習で、まともな授業を受ける。


 そして疲れた面々は、バスに乗り妖芽の家へ向かう。


「来たぞ」

「お疲れ様です。連絡があった通り、調べると防犯用の録画画像が消されていました」


「魔道具を確認するから、社内へ入れてくれ」

「はい。こちらへどうぞ」


 そこで、画像を確認し、俺らは驚く事になる。


 サーバをいじったのは、独善好美。

 こいつは予想通り。


 そのほかに、金庫から金を抜き取り、帳簿を改ざんする金友嘉。

 そして、管代薄女は指示などなく、断りの電話を掛けていた。


 つまり全員。黒だ。


 独善好美は、遅刻したときにタイムカードの上に紙を貼り、打刻。

 昼間に、営業や現場にみんなが出払い、誰も居ない時を見計らい、時間を調整して打刻していた。だが、出入り口のカメラに証拠が残っている。

 そのため、データを削除したようだ。


 金友嘉は、銀行からの出向だが、こんな小さな会社。絶対に本店に戻ることは出来ないと考え、私服を肥やしていた。良くある話。帳簿もぱっと見は分からない様に細工をしてある。それどころか、納品書なども、数字をカミソリで削り、改ざん修正してあった。


 管代薄女は、独善好美が仕事をしないのに、ほとんど給料が変わらない事にうんざりして、仕事を減らすため考え。実行をした。


 つまり、外部の会社は関係なく。すべては内部犯行。結果、会社は被害と信用の失墜。管代薄女はおやっさんや、奥さんの幼馴染みで信用があったため、今回の影響はかなり大きな事となった。特に被害としては大きい。無論、金友嘉は横領で告訴。


 おかげで、低金利で融資が受けられて、万々歳と言っていた。


 さて、独善好美は、当然詐欺罪や電子計算機損壊等業務妨害罪。刑法二百四十三条の二。まあ立派な犯罪。しかも、家から自由にアクセスして改ざんできる様にしてあったこと。さらに自動でデータ削除など。次々と見つかり、みんなをあきれさせた。

 そこまでスキルがあるなら、別の仕事をした方が良さそうだが、悪さをするために覚えたらしい。教えてくれるサイトを有効活用したようだ。


 かくして終わってみれば、会社は環境改善が出来て、万々歳となったようだ。


「いや君、大学生だって。家に来ないか? 妖芽も君のことまんざらでもなさそうだし、婚約するか? ピッチピチの高校生。かわいいだろ。うん。どうだ」

「いま間に合っていますから、大丈夫です」

 万結が、俺と妖芽のお父さんの間に割り込む。

「やはり、彼女がいるか。まあいい。就職困ったら連絡をしてくれ。そっちの学生も建築だろ。是非お願いするよ」

 そう言って、上機嫌で見送られた。

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