第34話 日本側へ、そして彼女は……

 翌朝、テーブルを囲んで朝食を頂いていた。

 俺が、お誕生日席。そして、両サイドに3人3人ビシッと座っている。


 そしてぽつんと離れた、ローテーブルに奥村さんが座っている。

 何とかしようとしたが、俺との神聖な儀式に黙って紛れ込み、さらに、おねだりして2回目を貰ったと。

 それはもう、彼女達の怒りは凄く。許して貰えなかったようだ。


 朝、目が覚め、部屋の隅で見た光景は、まるで、浜辺で子供達にいじめられる亀を見たようだった。

「これこれ、そんなにいじめなさんな」

 そう言って、割っていったが、まあ多少は罰が必要だということで、今の状態。

 待遇は最下層だそうな。


 だが悩んだ末。俺からの、起死回生。待遇改善の仕事が割り当てられる。

「皆、彼女。沙羅は見ての通り、女性用のファッションを知っている。情報を聞いて、皆が着る服を作製すれば、きっともっと皆が美しくなれる。それにな、向こうの世界に行けば、手に入る化粧品なども、彼女は持っているはずだ。どうだ興味があるだろう」

「それは、そうでございます」


「奥村さん」

「沙羅と呼んでください」

 瞬間、空気が、張り詰める。言い放った彼女は、空気の変化に気がつかない。


「あーうん。沙羅。誰かを連れて、向こうへ着替えとか取りにいった方が良いだろう。家族とかも心配をしているし」

 そう聞いて、何かを考えているようだが、よくわからん。


 だが。

「そうですね、ついでにマンションの解約もしてきます。ここって、住民票はありませんよね」

「住民票どころか、日本じゃないからな」

「と言うことは、住民税がただですね」

「住民税は、年度だから来年からだけどね」

「手続きをしてきます」


 そう言って、あわててご飯を食べ始める。


 昨夜は幸せだった。今まで付き合った人たちは、なんだったの?

 痛くもなかったし、気持ちよかった。

 今までずっと、私の機能的に、何か問題でもあるのかと思っていた。


『性交痛ねえ。診察しても異常はなさそうだから、ローションを使うとか、時間をかけて前戯をして貰うとか、後は、ラテックスとかのアレルギーも可能性はあるから、パッチテストを皮膚科とかでしてもらって。後は、お相手の相性と真因的なもの。レイプとか、それに近い感じで無理にされたとかあれば、そっちのケアも考えて、紹介状を書きますけれど』

 病院でもそんな感じ。


 はっきり言って、諦めていた。

 でも、彼、何が良いって言うわけじゃない、少しずつが優しい。

 気がつけば、自身の方が必死になっていた。

 それを優しく微笑み。見てくれる。

 そして、頭をなでられ。耳を優しく……。

 ガシャッと、茶碗が落ちる音。

 妄想にはまり、持っていた茶碗を落としてしまった。


 ああ。いけない、音を立てたので、エレメンタル達から注目を浴びてしまった。

 これ以上下がれば、又地下牢ね。

 それだけは、避けなければ。


 

 昨日の所へ行ってみたが開かなかった。

 俺の力は、どうなっているんだろうか?

 空間に干渉する力かと思ったが、そうでもない。

 エレメンタルに言わせると、人間とは思えない魂の器を持っていると言っていた。

 その辺りを、貰ったのだろうか?

 エッチをするときには、相手がどうして欲しいのが分かるけれど。


「どうせ今日も、どこかが開いているだろう。そこを探していけば良い。そら。案内してくれ」

「はい。行きます」

 一応全員で、集落へ飛ぶ。


 覚えた魔法と、浄化、解毒をかけ治療も施す。

 服のない子には、エレメンタル製ワンピースを着せていく。

 この服が、後日日本側で大騒ぎになる。


 男達もワンピース。というより貫頭衣。

 

 エレメンタルのおかげで、元素に関わる魔法が、思うとおり使えて、オーク達でも楽勝に倒せる。

 ゴブリン達は、エレメンタルを見ると、何かを感じるのか逃げ回るのがおもしろい。彼女達は、あんな感じだが、この世界では上位の存在なのだろう。


「良し、こんなものかな?」

 周りで女の子達が、モンスターにやられてしまったことに気がつき、泣いてる。

 その心が流れ込んでくる。

 体の傷は、いやしたが、心は。


「レノアアニマ・メア」

 周囲に、少し色温度の低い、黄色っぽい光が広がっていく。

 なんだか、いま必要なのはこれという感じで、言葉が出た。


 周りの子達の反応が変わる。

「助かった、帰れるの?」

 そう言って、素直に喜び出す。


「先ほどのは、癒やしの光ですね」

 ひかりが教えてくれた。

「次回からは、私も行います」

 そう言ってくれる。彼女の、頭をなでる。

 照れたように、はにかみ笑う彼女がかわいい。


 皆を誘導して、裂け目から皆を帰す。

 閉じると面倒なので、一旦日本側で待機をする。


 すると、そらと沙羅の所へ、警官が走ってくる。

 見比べて、黒髪。つまり沙羅に声をかけて、何かを聞き始める。

 そこへ、他の警官も集まり。連れて行かれてしまった。

 理由も分からないし、ドナドナされる彼女を見送る。


 エレメンタル達に相談して、周囲の家から服や化粧品の情報を集めて貰う。


「良し。じゃあ帰るか」

 状態が不明だが、彼女は元々帰す予定だったし。結果問題なし。

 エレメンタル達と、仲良く異世界側へ帰る。

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