第32話 異世界側の別荘

 そんな事をしている間に、家は出来た。

 ちょっと豪邸。


 自分たちの住むところまで造ったようで、10部屋ある。

 一部屋は、俺の部屋のようだが、どこの家を参考にしたのか、部屋の中に風呂やトイレまである。

 そして、ダブルどころではない、ベッド。

 4畳半くらいある。


 蜘蛛の糸だか知らないが、シルクのような手触りと光沢。


 羽布団であるが、中の羽も何物の羽かは知らない。


 そして、地下室。

 倉庫と、謎の鉄格子。

 壁には、枷が埋め込んであり、天井にも滑車がある。

 そして見たことはないが、本で知っている拷問? 道具。

 どこで何の情報を見たのか、あの住宅地。一体何者が住んでいたんだ?


 無論、台所に風呂。ダイニングやリビング。

 必要な、設備はそろっている。


 空調は魔道具で、年間を通して、コントロールをエコに行うらしい。


 目に付いた、穀物や野菜は、場所を決めて大量に栽培する設備を作り、整備は行っていると、つくし達が胸を張る。


 庭園のボックスウッドに混ざって、茶の木まで埋まっていていて安全自家栽培。

 茶の木に湧くヤバイ毛虫。チャドクガはこっちにもいるようだが、近寄らせないそうだ。

「丁度日陰ですし、味がよくなります」

 木の精霊、おっとエレメンタルだったな。そいつから聞いたらしい。


「必要なら、他の精霊達も集めてきますが」

 そう言って来るが、話によると、今回はあの女を経由して、今の姿形。なので、そのままだと精霊のままで受肉をするから、子供が出来るかは分からないと、変な心配をされた。


「あーまあ。いまは、おまえ達がいるからそれで良い」

 そう言うと、非常に喜んでくれる。


 家の中をよく見ると、内部で至る所に魔道具が使われ、快適。


 皆の作業が終わり。夜食として作ってくれた弁当。

 コンビニ弁当そっくりな、木製容器に盛られた弁当を頂く。

 ペットボトルまで、ガラスで再現されていた。


「非常に有用で嬉しいが、ちょっと教えておこう。この弁当容器。これは家の外で食べたり、人に渡すために便利に作られている。こんな、上げ底まで再現をしなくて良い」

「そうなのですか?」

「ああそうだ。さっき台所に行ったときに見たが、食器棚の中に入っている道具。あれが普段使うものだ。食べてからで良いが、説明しよう」

「「「ありがとうございます」」」


 その後、色々な器や鍋の使用目的。

 風呂の入り方や、体の洗い方。

 いや、皆初めてだから仕方が無いだろう。

 シャンプーやリンストリートメントや、ボディソープまで成分を解析し作製をしていた。ボトルは、石で出来ていた。

 目に入って、しみると大騒ぎをしたため、一人一人洗ってあげる。


 人間ぽいけれど、人間じゃないし。浮気じゃないよね。

 何故か、心の中で、万結に対する言い訳を考える。


 みんなと出てきて、バスタオルで拭いてやると、そのままシャツとチノパンを穿いている。

「みんな下着は?」

「下着とは? これでしょうか?」

 そう言って、トランクスがでてくる。情報の取捨選択がおかしい。


「一応下着だけど、女性用は違う。こう……」

 ブリーフとも違うよな? まじまじ見たことがないから分からない。

 あっ。


「あの女はどうした?」

「あの女とは?」

「確かそらに頼んだよな」

「ああはい。泉の所にいましたので捕まえて、地下に放り込んでいます。力も封じておりますので、ご安心ください」

「力を封じて、放り込んだ?」

 まずい気がする。水も飲めないという事だ。こいつら興味がないものには容赦ないな。


 あわてて、地下に行く。

 牢の中で、色々な物を垂れ流して泣いていた。


 扉は、簡単なかんぬき。

 これ出られるじゃないか。

 そう思いながら、中へ入り。浄化をする。

 その光で気がついたのか、おびえるより先にすがりついてくる。

 まるでGのようにカサカサと。


「助けて。あの女達に」

「いや、あんたがモデルみたいだから、どっちもこっちも、おんなじ感じだけどな」

「でも。蹴られて、閉じ込められて」

 そらを見る。


「そいつが騒ぐものですから」

「だそうだ」

「いきなりこんな所に入れられて、出せって言っただけなのに」

「まあいい。おとなしくするなら。出してやる」

 そう言って連れ出す。


 風呂に放り込む。

 浄化したついでに、下着を見せる。

「これが女性用らしい」

 わいわいと、相談が始まり、あっという間に形が作られる。


 テーブルの上に積み上がっていく。

 やがて出てきたのか、おそろいのYシャツとチノパン。

「あの。下着はどこに?」

「あれ? 元のはどれだ?」

「多分これです」

 ひかりが、見つけてぶら下げる。


「これだってさ」

 渡すと、恥ずかしがる感じもなく受け取り、風呂の方へ戻っていく。

 最初に会ったときと、随分感じが変わったな。



 その本人。

 痴漢で間違い、その後も。子供を作るためとこっちに攫ってきて。

 気がつけば、私がエレメンタルから見捨てられた。

 同僚との電話でも散々だったし。

 私って、確かに友達も少ないし。

 そんなに、駄目なのかしら。


 あの男の子は……、あの周りにいる私は、エレメンタル達? だとすれば何かをしたのよね。あんなに懐かれて。それに比べて私は。

 手に持った下着を、じっと見る。

 子作りを頼んで、何とか体でつなぎ止めて、飼って貰うしか、もう生き残れる道がない気がする。

 あの子。この家もそうだけど、お風呂も、シャンプーとかもどうやって。


 一応、匂いを嗅いで、下着を着ける。さっき脱いだのにもう綺麗になっている。不思議。

「はあっ。何とか食べ物を分けて貰おう」

 とぼとぼと、ダイニングに戻る。

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