第30話 二股は駄目だけど
次々とやってくる。エレメンタル達。
つくしに話を聞いて、ぽいぽいと力を投げてくる。
火に光。闇。空気。水。
「命名。火は炎花(ほのか)」
「命名。光はひかりで良いや」
「命名。闇は、えーと千の影。ちかげ」
「命名。空気、というか大気か? いやいい。そのまま、そら」
「命名。水は、えーとそうだな。水繋がりで、いずみ」
疲れた。
「どうだ」
エレメンタル達が、変化をし始める。
それに応じて、なんだか俺の体に繋がりが出来る。
だが、一気に何かが持って行かれる。
一方。
「あれ。おかしい。力が抜ける」
そう、沙羅は自身の体から、力が抜けることになった。
無論、すべてでは無い。
まだ、エレメンタル達との繋がりは感じる。
泉の側で、へたり込む。
「おかしいよー、皆。帰ってきて」
願うが、なぜかそれは聞き届けられない。
「さて、変化が終わり、実に良い景色だが困る。非常に。諸君、私は健康な大学生だ。色々とおさえるために服を着てほしい」
「服というのは、そなた。あーなんとお呼びすれば」
「名前は、新世 改。あらたで良い」
「分かりました。改が身に纏っているような物ですね」
土と水、火が、一瞬姿を消す。
次に現れたときには、大量の糸を持っていた。
それが空中で、ばらけ、紡がれていく。
それを座り込み、俺は眺める。
彼女たちの体を、見納めとばかりに目に焼き付ける。
「これでどうでしょう?」
色は、白一色だが、きちんと形になっている。
「うん透ける感じは無いし、良いだろう」
俺の着ているものを参考にしたのか、ワイシャツにチノパン。
靴も、いつの間にか創られている。
俺も自身の中で、力の使い方が分かる様になった。
水を出し、飲んでみる。
まあいける。
考えるのは、城の中の彼女たち。
「助けるか」
そうつぶやき、立ち上がる。
「おい。ひかり。浄化って体の毒物を消せるのか?」
「体の中は、解毒という考えで、力を使ってください」
「分かった。ありがとう」
ニコッと笑い、礼を言うと、なぜかひかりが驚く。
「なんでしょうか。いま、笑顔でお礼を頂いたら、胸の内に温かいものが。これは、なんと言えば良いのか分かりませんが。こちらこそ、ありがとうございます」
ひかりが、オロオロしている。なんとなくかわいい。
頭をなでてみる。
すると何故か、ひかりの頬に、涙が流れる。
「ありがとうございます」
またお礼を言ってくる。あれかな、精霊いやエレメンタルか。まあその時は、感情が無かったから、びっくりしたのか?
「じゃあみんな。手伝ってくれ。捕まっている人を助ける」
そう言って、また城に入る。
階段を降りると、檻も無いのに相変わらずいちゃついている。
正気になって騒がれても嫌なので、先に備えているものを見る。
バスタブや、トイレ、シーツなどもあったので説明をする。
無論ベッドや、弁当も見せて、中のものについて説明する。
「持っていけるものは、持って行きたいな」
すると、そらが教えてくれる。
「空間と、次元境界について専門ではありませんが、簡単なものなら使えるはずです」
それを聞いて、イメージする。
別空間に、倉庫を置いて、そこへ物を入れる。
いちゃついている、四人を床へ下ろし、ベッドも収納。
彼女たちの、体型に合わせて服を作って貰い、解毒を使ってみる。
すると、必死だった動きが、ゆっくりになり、やがて現状が理解できたようだ。
「げっ。なんでこんなにデロデロに。あっそうか、思い出した」
四人がオロオロし始める。
「正気になったなら、服を着てくれ」
声をかけたら、叫ばれた。
「あんた誰?」
「通りがかりの大学生。新世 改。異世界側に来たら、城があって、あんたらがいちゃついていた。ここに居るなら良いが、帰るならその服を着てでよう」
そう言うと、服を着始めた。
「あの? 帰れるの。ですか?」
「多分ね」
見た目は、ヤンキーぽいが、悪い感じは無いのか?
服を着た後、外へ出る。
「さて、俺を攫った所はどこだ?」
「ご案内します」
そう言って、全員を連れて転移した。
「ここですが、すでに閉じていますね」
「どこが、開いていた?」
「ここです。向こう側の精霊に、空間を渡る許可をもらいに行ったのですが、出来るなら別に良いよと言うだけで、力ももらえず。開くことが出来ません」
開いていた場所を、感じる。
あの時と同じように。
手を差し込み開く。
「おお、素晴らしい」
目の前に、波紋が広がる。
顔を突っ込み確認。
振り向き、女の子達を呼ぶ。
「ここから、帰れるはずだ。ひょっとすると、まだ警官も居るかもしれない」
そう言って、四人とも連れ出す。
エレメンタルのそらが、何かに気がついたようだが、俺は日本側にでる。
その時、エレメンタル達は、大きな喪失感を感じる。
この苦しさは一体。
半身を失った様な。
無論。日本側で、俺も感じていた。
だが、こっち側での生活もある。許せ。
だが、そんな事。許されるはずは無い。
一瞬の間に、異世界側。
「改」
全員が、俺に抱きつき、泣いている。
「あー。うん。エレメンタル6人いや柱か。それに万結と凪紗さん?2股は駄目と言われたが、8つなら良いか」
全員を抱きしめる。
帰りたいが、帰れない。
「どうしよう?」
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