第25話 視線

 さてこの、奥村沙羅という女性。25歳で、派遣登録をして仕事をしていた。

 駅で、お尻を触れたと勘違いして、状態も確認せず。振り向きざまに平手打ちをする性格。


 相手が逃げれば、追い回す。

 おっちょこちょいで、以外と短気。

 浅慮遠望(せんりょえんぼう)をモットーに突き進んでいる。

 子供の頃から、目先のことだけではなく、もっと周りを見て、よく考えてから行動しなさい。

 そんなことを、教師や親から言われ続けてきた。


 だがそんなことは、知らん。面倒。

 それだけで、人生を歩んできた。

 今周りを囲む、精霊達とよく似た感じ。


 一つのゴブリンの集落に到着し、周りを見る。

 周りで行われているのは、最悪な状況だが、襲われているのは、女性だけではなく男性も。

 それも、金髪のマッチョ。

 思わず、彼女の目が釘付けになる。


 後ろから、ゴブリンに貫かれ、その状態で男性のものも直立。

「うわー。リアル。これが、本物」



 エレメンタル達が、近寄ってくるゴブリンを倒してくれるため、彼女はリアルを堪能する。

 やがて満足し。

「みんな、ゴブリンを倒して。皆を救って」

 その指示に従い、次々に消滅していくゴブリン達。


『癒やしてやろう』

 そう言って、水のエレメンタルが浄化し癒やしていく。


 女性は目覚めない。だが、男性の方はすぐに気がつき。沙羅の方へと駆け寄ってくる。

 言葉は、フランス語だったので理解できない。


 ただ相手は裸で、さっきとは違い相手の意識がはっきりしているため、沙羅は急に恥ずかしくなる。

 

「空間の揺らぎって、どこ?」

 土のエレメンタルが、空間の揺らぎに向かって通路を造る。


 沙羅は、一生懸命。意思を伝える。

「あっち。帰れる。ごーほーむ」

 そう言って、指さす。


 すると分かってくれたのか、起き上がった人たちが次々に帰り始める。

 だが、女性達が気がついていないことに気がつき、お姫様抱っこをした裸の男女。行進が始まった。


「あー帰って行く。私も行きたいけれど、多分外国なんだよね」

 向こうに戻ってから、日本まで帰られないしなぁ。大使館の存在や役目を知らなかった。


 見送ってから、エレメンタルに次を探すようにお願いする。

 そして、悲鳴を残し。飛び去っていく。


「elle Supergirl?」

 最後に移動した彼は、彼女が来ないため。再度亀裂から、異世界側をのぞき込み。飛び去る様子を目撃した。


 その日フランスの新聞に、モンスターからの救出と黒髪のスーパーガールの活躍が載っていた。



「あーしかし。まいったな」

「ヤバイ奴に、目を付けられた。いい加減。この所まともに講義に出ていないし、今朝の退出騒ぎはまずいよ」

「そうだな」

 悠翔が遠い目をする。


「やっほー、どうしたの? 遅かったじゃん」

「ああ。万結。おつかれ」

「うん。どうしたの」

「またケバい警官に捕まって、警察署に行っていた」

「えっ何で?」

「さあ? 俺たちの方が知りたい」

「もううっ」


「それで、何か力を持ってんのか?」

「力? どんな」

 突然の悠翔からやってくる問い。とっさにごまかす。


 まあ上位の空間?へ紛れ込んで、何か力は貰ったが。実際なにを貰って、なにが出来るのかも理解していないしな。


「無いのか?」

「欲しいけどな。おまえの方は?」

「あったら。もっと楽に、人生を歩んでいるさ」

「そうだよな。目を付けられたけど、小遣い稼ぎに行くか?」

「目を付けられたから、もう一緒だろ」

 そう言って、2人ともテーブルに突っ伏する。


 そうして、お小遣い稼ぎだが。

「場所は?」

「この前の所は、二カ所だったしな。別に行くか?」

 工藤と木下が、にまにましながらやって来て、「タイムリーだな。ほら」そう言って周辺の地図が広げられる。


「ほー」


 皆がのぞき込む。

 地図の上に、日にちと、出現場所。

 それと予想地点が、色分けされて印刷されている。


「時計回り、なんだね」

 薬研が顔を突っ込んでくる。

 何で、万結との間に入ってくる。

 ほっぺたが、くっ付く距離。

 地図を見るため、顔を振ると、色々と。

 それを向かいから見て、気がついたのだろう。

 悠翔の顔が、にへらと笑う。


 それを見て、万結が気がつく。

「理花。あんたどこへ顔」

「えー。地図を」

 万結の声に反応し、おれが右を向いた瞬間。

 理花の顔が、こちらに近寄ってきて、チュッとされる。口へ。


 今のは、避けたのに、追いかけてきた。わざとだ。

「あーあんたね。なにをしているのよ」


 その時安田は、万結と理花のお尻を眺めて。ぐへぐへと笑みを浮かべていた。


「あっごめんね。事故よ事故」

 そう言った後。小さな声で、改に耳打ちをする。

「でも、改ならいつでもOKよ」

 そして、耳に息を吹きかけ離れる。


 多少色々と自信が付いたのか、極度の引っ込み思案から、理花の言動が変わっていた。


「もう。改っ」

「うん。むっ」

 万結にキスされ、さらに唇を舐め取られる。

「これで良し」

 満足そうな、万結の顔の下、理花の顔が曇る。

 

「まー楽しそうだが、この予想に従ってみるか」

 その時。この光景を正面から見ていた、工藤と木下。


 地図を出したときの、自信に満ちた態度はどこかへ行き。

 悔しそうな顔をして、改をただ睨んでいた。

 

 2人の肩に、そっと悠翔の手が置かれる。

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