第23話 遭遇戦

 と、言うことで、何故か教室にいるのだが。

 嫌此処の学生で授業を受けている俺たち、と言っても俺と悠翔は同じ情報系だから良いんだよ。

 講義は、基礎記憶装置。フリップフロップ回路とその応用。


 まあそれは良い。

 俺の左には、俺の腕を取り胸を押しつけながら教科書をのぞき込んでいる、女の人。

 さすがに、今日は制服を着ていないが、おまわりさん。

 今朝会って、授業があるからと言ったら付いてきた。


「あの」

「なあに?」

「お姉さん、離れてもらえます」

「お姉さんだなんて、瑠璃って呼んで」

「…………」

「どうしたの?」

「太ももを、スリスリするのも、やめてもらえます」

「あらあ、以外とわがままね。でもそう言われると、思いっきり甘やかしたくなっちゃう」


 横で、悠翔は笑いをこらえて必死そうだ。


「話は先日しましたよね」

「先日のは先日の話。今日は別」

「何ですか?」

「うーんとね。年上は嫌い? 甘えて良いのよ」

「はぁ?」

 大きな声が出て、思わず自分の口を押さえる。


「何ですそれ?」

「僕ちゃんの秘密を知りたいな? こんな所じゃ無く落ち着けるところ。ホテルに行く?」

「どうして、そんな話になるんです」

「さっきから言っているじゃ無い。興味があるだけ。お姉さんお口でするのも上手よ。彼女がいるからって言うのなら、そっちでも良いわよ」


「マジですか?」

 悠翔が割り込んできた。

「悠翔。席を代わろうか」

 移動しようとしたら、腕を引かれる。


「駄目よ、彼見たいな、モテるタイプは今イチ好みじゃ無いの」

「非モテタイプですよね。すみませんね」

「あらごめんなさい。やっぱり体でお詫びをしないと」


「あー君達」

 テーブルの、メモを見て確認する講師。

「新世君と久瀬君。部外者の女性と共に出て行きなさい」

 マイクを通して、注意される。

 最近は授業を録画しているから、残るんだよね。


 仕方が無いので、教室からすごすごと出て行く。

「ごめんねぇ。追い出されちゃった。てへっ。でもこれで時間が出来たわね。いこう」

「どこへですか?」

「良いところ。私のお部屋。そっちの僕もおいで」

 2人なら良いかと、車に乗る。


「うん?どうしたの。遠慮しないで入って。殺風景だけど御茶くらい出すわよ」

 某署、取調室。窓なし。


「確かに殺風景」

「あらあ。素直だけど。そこはほらもっと色々で包んで、機能的とかね」

「まあそうでしょうね。こんな部屋初めてですよ」

「あら?初めて。嬉しいわ。ちょっと御茶を入れてくるわ。待っててね」

 がしゃんと鉄のドアが閉まる。


「普通の取調室と違うな? ドアが金属だ」

 悠翔がしみじみと周りを見回してぼやく。


「あの状態。あの言葉でここに来るか?」

「おや?改君は、彼女の自宅に興味があったのかな?」

「まあおまえもいるし、襲われはしないと思ったが。まあうん」

「歩坂に言ってやろ」

「やめろ」

 悠翔の顔がニヤニヤだ。


 ガチャガチャと音がして、ドアが開く。

 鍵を閉めていた?


「お待たせ」

 お盆に湯飲みと急須。ポットが乗ってきた。


 服装も、制服になっていた。


「はい御茶。熱いからフーフーしようか?」

「結構です」


 そこからは、調書の確認で、思い出したことがあれば追加。

「うん。つまらないわね」

「あんたがそれを言うか?」

「だって、二回目に空間が繋がったときも、なんだか繋がっただし。僕が空間魔法で繋ぎましたとか聞ければ嬉しかったのに」

 そう言って、ちらっと見てくる。


「そんな目をしても違います。偶然です」

「そうかあ」

 そう言って、椅子の背もたれで伸びをして、こっちをチラ見する。

 悠翔と2人。胸なんか見ていませんと空気感を出す。


「そっちの彼も何も無い?」

「ありません」

 悠翔が答えるが、目線は離れない。


 根負けして、悠翔が目線を外す。

「あっ目線を外した。ねえ僕。お姉さんに言ってごらん。きっと楽になるわよ」

「いや何もありません。見てこられて目線は外しましたが何も無いです」

「そう? 残念。うーん。仕方ない送っていくわ」


 そう言って、立ち上がる。

 伸びをしながら、出口に向かうと、ドアが開かないらしい。

「さっき、入るときに締めちゃった。困ったわね」

「えっ。出られないんですか?」

「うん。外から鍵を開けて貰わないと」

「鍵って、その手の奴ですよね」

 彼女の右手に握られた。部屋番号付きの鍵。


「あーうん。そうね。ほらこういうときに。SNSで有名じゃ無い。魔法とか。モンスターを倒せば、出来るようになるんでしょ?」

 2人そろって首を振る。


「本当に?」

 うんと頷く。

「困ったわね、そろそろトイレにも行きたいのに」

 そう言われると、何故か皆も行きたくなるから不思議。


「おい。悠翔魔法出来ないのか?」

「出来ないよ。やったこと無いし。改はどうなんだよ? 沢山ゴブリンを倒したんだろ」

「どうやって、やるんだよ。俺魔法学校通ってない。呪文は?」

「知らないよ。俺も知っているのはバ○ス位だ 」

「本当に出来ないの?」

「「当たり前だ」」


「ちぇ」

 そう言うと、ドアに行きノックをする。

「佐藤君開けて」

 ガチャガチャと音がして、ドアが開く。

「トイレは、出て右よ」

 廊下に飛び出した背後から、彼女の声が聞こえる。

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