第19話 警官に軟派される

「まあまあ、そんなことより。怪しい点はなかったのだろう?」

「そうだな、駅へ学校から問い合わせもあり、逆算をすれば拉致して云々は出来まい」


 そう言って落ち着く捜査班だが、やはり気になるらしく。

「でもこの、巣との遭遇率おかしくないか?」

「まあな。それと、1件目。5人の高校生を救助して、巣を潰したようだぞ」

「大学生が、素手で」

 そう言うと、静かになり、皆が資料を見始める。


「高校生の調書は、意識不明の内にすべてが終わったようだから、役には立たない。だが、気がついたとき集落一つ潰していて、魔石をかなりの数拾ったとあるな」

「俺たちが、銃を使っても結構大変だぞ。最近やっと、向こう側のみ限定だが、オートを使ってでもだ。どうやって倒したか、聞いてみるか?」

「ネット上で、噂になっている魔法か?」

「そんなもの、あるのか?」

「ほら」

 タブレットが、中央におかれて皆がのぞき込む。


「うーん。法螺とは言いづらいが、指先から火が出た。水が出た。野球の変化球がトルネード? 卓球が無敵? 何だこりゃ」

「とても、武器の代わりになるとか、言うレベルじゃないな」

「まあ将来的には分からんがな。彼がやったことは不明だ」

「やっぱり、誰か聞いて来いよ」

「どうやって?」

「やあ。君何を隠してる? とか」

「変なことをしたら、すぐに拡散されるぞ」

「そうだよな」




 密かに、警察に目を付けられた本人は、困っていた。

 にらみ合う。万結と凪紗さん。

 万結は酔っ払っていて、気分で凪紗さんに許可を出したらしい。

 あげく、俺まで怒られる始末。

「いやおまえが、お姉ちゃんを慰めて、変な男に引っかからないように、体を満足させとけって言ったよな」

 そう言うと、一瞬目が泳ぐ。


「でも、だからって、あんなにノリノリで」

「いや、初3Pって突入してきて、楽しんだよな」

「楽しかったけど」

「ふふふ。お姉ちゃん。そんな声でさえずるのね。ほらもっと鳴きなさい。とか言っていたよな」

「酔っ払いの台詞を、そんなに覚えているのは失礼よ。忘れて」

 そう言って、そっぽを向く。


「あーうん。ごめんなさい。なるべく早く、いい人を見つける。だから彼が出来るまでは改君を貸してね。凄く安心できるの」

 そう言って、何故か俺の手を握ってくる凪紗さん。


「うがあぁ。絶対2人だけは駄目。良いわね」

 万結が壊れた。


「じゃまあ。用意しないと皆まずくないか?」

「「そうだ」」

 さすが、姉妹息ぴったし。そのまま、裸で走り回る。


 少し前までなら、考えられない光景が広がっている。生活感は半端ないけれど。

 化粧ってすげー。万結の方が少し輪郭が丸いが、細い輪郭がさらに、チークかな?かなりシュッとした感じに、凪紗さんの顔が変わっていく。

 どんどん変わって、だれ? いや美人さんだけど、目の大きさも変わって。

 そうか。バッチリメイクの凪紗さんを初めて見たけれど、かわいいが美人になった。

「すげー凪紗さん。美人になった」

「恥ずかしい。でもありがと」

 そう言って、キスをされる。


「こらーそこ。いちゃつくの禁止。改。化粧すると、私も美人になる」

「そうなんだ。見せて」

 そう言うと、固まる。


「えー。面倒だから、何か機会があればね。それに私は、姉さんと違ってかわいい路線で行くから良いの。それにあんまり美人になっちゃうと、モテすぎて困るから。変な男にたかられると、鬱陶しいし、改もいやでしょ」

「そうだな。殺しはしないが、異世界。向こう側へ、うっちゃるくらいは、するかもしれない」

 そう言うと、ぱあっと万結の顔が明るくなる。


 すすすと寄ってきて、俺の膝に乗ってくる。

 ぬチュッとキスをして、一瞬へんな顔をする。

「口紅付いた。そうか、さっきの。このまま、ついでだし化粧してあげようか?」

「要らない」

 そう答えたが、万結の良いことを考えたと言う顔が変わらない。夜とか気を付けよう。


「時間は大丈夫なの? 私は、行ってきます」

 そう言って、凪紗さんは投げキッスして出て行った。


「お姉ちゃんが、マジでヤバイ。改に抱かれて惚れたか。やっぱりまずったか」

「今更、そんなことを言うか?」

「あの時は、目を離すと、死んじゃいそうな感じだったじゃない」

「そりゃまあそうだけど、だからって、彼氏を差し出すか?」

「改だって、あの時は??」

 そう言いかけて、目が泳ぐ。


「そう、あの時は、ほとんど意識がなくて、おまえと間違えただけ」

「あーまあ。ほほほ。うん。かまえよ」

 そう言って、逃げていった。



 そうしてようやく、学校に向かうところで、見知らぬお姉さんに声を掛けられる。

 人物的には、見知らぬ人だが、何者かは分かる。

 だって、制服を着ているもの。コスでなければ、本物の警察官でしょう。

「ねえ君。新世改君よね」

 腕を組んだ、万結の力が増す。


「そうですが」

「私警察のものだけど、教えて欲しいことがあるの? 良いかしら。それとも駄目ぇ?」

 腕を組んだ、万結の力がさらに増す。


「これから大学なので、ちょっと時間が」

「あらぁ。真面目なのね。じゃあ待ってるから。都合が付いたらお電話して」

 そう言って、俺に名刺を渡すと、ウインクをして行ってしまった。


「あれ本物かしら?」

「じゃなきゃ、捕まるだろう」


 そう言いながら、視線を落とす。

 色とりどりの花びらが散った名刺。

 名前と、手書きで携帯のナンバーが書かれたもの。まじまじと見る。

 そして、裏を返すとキスマーク。

「偽物かもしれない」

 俺は、思わずつぶやいた。

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