第17話 成功と打ち上げ

 そして、やって来る。

 飲み代を返還するにも、原資は必要。


「北側って、言ったよね」

 背中に張り付く、万結が聞いてくる。

「そうだが、なんでそんなに張り付く」

「えっ」

 驚くような顔をするが、胸がぽつんとなっている。

 小声で聞く。

「おまえブラは?」

「暑いし、ニップレスにしてたんだけど、なんか元気になっちゃって。へへっ」


 まあいい。こいつのやることだ。気にしないでおこう。


「あらた~あ。どこだ、どっちから匂う?」

「匂いで、判断をしていない。声とまあ声だな」

「声なんだ」

「そうだよ。皆集中をして聞けよ」

 そう言うと、皆一応周りを窺い出す。


「おっ。この辺りから涼しくなるな」

「この環境。この前の場所と重なるな。こういう所の方が繋がりやすいのか?」

 周りをキョロキョロしながら、安田がそんなことを言う。

 手を理花ちゃんと繋いでいるが、どうして、理花ちゃんはこっちを睨む。

 俺何もしていないよな。


「いないぞ。はやーくぅ」

 文句を言い出したのは、当然工藤。木下はすでにへばっている。


「見つけた」

 そう言って、悠翔が一目散に自販機へ向かう。

 まだ歩き出して、2km位だがおかしな天気で暑い。

 先週までは、涼しかったのに。


「あっ。この自販機スマホに対応していない。小銭が要るのか」

 そう言って珍しく、木下が金を出す。

 だが、千円札を、表裏ひっくり返し縦に折ったり色々してる。


「偽札は、重罪だぞ」

 誰かが茶化す。

「本物だよ」

「どこかに、子供銀行とか書いていないか?」

「ちゃんと、日本の百円札だよ」

「嘘だろ」

 木下の戯れ言に、悠翔が引っかかる。


「百円札って、もっと赤っぽくなかったか?」

「時代によって、多少違うんだよ。聖徳太子だったり、板垣退助だったり」

「そうなんだ。工藤。それはどこの札だ?」

「フランスの100ユーロ」

「入れるなよ、間違って通ったら、詐欺? あれ、何だっけ?」

「確か、窃盗罪だろ。わざとなら他にも面倒だった気がするな」

「通貨って、国の根幹だから罪が重いんだよ」

 そんな豆知識がでてくる。


 こいつらといると、しりとりで四字熟語縛りとか始めるんだよ。

 無論専門用語、主に工具の鑑別とかその辺りはマストだ。

 俺と、悠翔ならコマンドしりとりになる。


 そんなことを言っていると、目の前をゴブリンの集団が右方向。つまり南側の町に向けて走って行く。

「あれまあ。まんずみんな急いで、どこさ行ぐベか」

 突然工藤言い始める。


「阿呆なことを、言っていないで、俺たちは巣を見つけに行くぞ」

 俺が声を掛け、皆と移動を始める。


 すると道路脇の用水路から、這い上がってくる集団と、まだ奥から来る奴らがいる。

 とりあえず、たかってくる奴を蹴散らしながら、奥に進む。

 すると同じように、用水路から這い上がってくるが、橋のようになった部分で奥行きはない。


「よし確認。通報」

「二カ所有ることを、言えよ」

「分かった」

 そう言って連絡をする。


 途中で、万結の背中にとりつき、胸を揉んでいるゴブリンを撲殺。

「意外と上手だよ」

 そう言う万結の頭をはたく。


「ええい。数が多い。警察はまだか」

 その時警官達は、先に町に向かった奴らと戦っていた。


 仲間で、輪になってゴブリン達を倒す。

「おい。いい加減。疲れてこないなあ。何でだ?」

「レベルアップじゃないか? 俺も、なんだか体が熱い」

「そりゃこれだけ倒せば、レベルぐらい上がっても良いだろう。それよりさっきの自販機に戻らないか。喉が渇いた」

「「「賛成」」」


 倒しながら、移動をしていく。

 万結や理花も動きが変わり、一蹴りで倒せるようになってきた。

 理花はブラをしていないから、ぷるんぷるんで目が行く。

 他の奴らが、気がつかないことを祈ろう。


 そうして、倒しているうちに、サイレンが鳴り近付いてきた。

 4駆タイプのパトカーが、ゴブリンを轢きながらやって来た。

 良いのかあれ?

「通報したのは、君達かい?」

「ええ。出口は二カ所。すぐ向こうと、さらに先。同じように、用水路の橋の下です」

「分かった確認をする」

 そう言って、走り始めるので、俺たちも付いていく。

 パトカーは容赦なく轢いていく。


 一件目を確認し、続けてもう一件。


 少しすると、別のパトカーもやって来た。

 同じような4駆タイプ。

 フロントにガードが付いているから、いくつか新規配備をしたのかもしれない。


 穴の入り口で、被害者達を助けて数時間。

 やっと、終わった。


 発見報告書に皆でサインをする。

 むろん、ご機嫌で打ち上げ。


 飲んだ後、万結が、お姉ちゃんが心配だし家に帰るというので、送っていき。

 帰ろうとしたら、引っ張られ。

 家に押し込まれる。


 いつの間にか万結がテイクアウトをしていた、唐揚げや焼き鳥で、凪紗を交えて飲む。


 なぜか、朝起きると両手で腕枕。

 うん。今回どうしてかは、覚えている。


 こっちは万結の部屋。

 酔っ払った、万結が凪紗さんに聞こえるというのに、昼間の刺激がずっとあって駄目と、訳の分からないことを言って始め。


 万結がぐったりしていると、凪紗さんが入ってきた。

「良いよ。やっちゃえ」

 そんな、万結のかけ声で、やっちゃった。

 凪紗さん。一応ためらう仕草はするけれど、行動はのりのりなんだよな。

 さすが、姉妹。

 ひたすら、こんなの初めてを連呼していた。

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