第16話 真実暴露?

 私は、あの日。

 大学生かな? 痴漢のえん罪をかけ。

 えん罪だと、はっきりとしたところで、いきなり彼は。

「良い時間だ」

 そう言い残して、出て行ってしまった。


 無論、調書には、ほとんど何も書かれていない。

 駆けつけた警官にも、ビデオを見せ。えん罪だったこと。

 相手は帰ってしまったことなどを説明した。


 その後、駅員達に謝り。

 そう、そうだわ。会社へ遅れた連絡とその事由を説明。

 そして、電車に向かい。途中で、誰かに声を掛けられた。

「あんた、ひどい奴だな」

 そうあの男。


 駅で会ったときには、もっと若かった気がするけれど、あの50代くらいの男。

 会ってから、記憶が無い。


 あっ。鞄。

 荷物は、すべてある。

 スマホを取り出し、タップしロックを解除。


 でも、Wi-Fiはまだしも、キャリアも点かない。

 此処はどこなの? 本当に、異世界? 魔王城?

 背後では、あの子達のなまめかしい声だけが聞こえる。


 さっきの料理は、どこかのお惣菜。

 寝具や調度品。あの男に従えば、日本に帰ることが出来るの?

 私も浸り切れれば、幸せかもしれない。

 そう思い、振り返る。

 思い思いに、自身をなで回している2人を見つめる。




 学校。

「よーし、今日も行くぞ」

 妙に張り切る。悠翔と、工藤に木下。

「メンツが増えたな」

 あきれた顔で、そう聞くと。

「俺たちだって、色々物入りなんだよ」

「そうだよ、悠翔じゃないけれど、彼女はほしいしな」


 ふと思い出す。

「木下おまえ、高校生相手か何かで、家庭教師をしていなかったか?」

「あー。評価が悪くて、首になった。女の子が示し合わせたみたいに、あの先生の目がいやらしいと、評価を書いてくれた」

「そりゃ本当だから、仕方ないな」

 俺たちが茶化す。


「彼女がいれば、他に目が行かなくなるんだよ」

「本当か?」

 そこに、万結が割り込む。

「あんた達が欲しいのは、エッチだけさせてくれる。都合の良い女でしょ。そんなのは彼女と言わない」

 そう言って人差し指を、横に振る。


「いや、付き合うとなったら。無論、それだけじゃないさ」

 そう言いながら、工藤に木下。二人とも目が泳ぐ。


「まあいい。行こうぜ。改、今日はどっちが匂うんだ?」

「俺は犬じゃねえ」

 そう言いながら、校門を出ていく。


 すぐに声を掛けられる。

「あー君。新世 改君。君先日駅で痴漢えん罪にあった人で間違いないかね?」

「ええ、そうです」

 ひねくれ者の俺が、素直に対応する理由。それは相手が、制服のおまわりさんだからだ。


「あの後、どうしたか教えてくれるかね」

「はあ。まあ。ええと、学校へ来て、遅刻なんで当然授業は受けられず。次の授業も学務に呼び出されて受けられず。その後、この連中で飯を食いに行って、皆に食い逃げされて、泣きながら金を払い。その後、金稼ぎにゴブリンを探しに行って、捕まっていた人を救助してついでに巣を潰したら、救助は褒められて、巣の発見は巣がなくなったから、ご苦労さんの一言で懸賞金も出ず終わって、こいつらに飲み会に呼び出され、またおごらされて、泣きながら帰りました」

 聞きながらどんどん警察官の顔が、困惑をしていった。


「君。皆にいじめられているのかね」

 そう言いながら、周りを見る。

「いや違いますよ、昼飯は、帰るぞって言ってもこいつが動かないから、置いて帰っただけだし。晩はそもそもゴブリンハントをしにこうと行っていたのを、こいつが突っ走って、懸賞金を無くした罰金だよな」

 工藤がペラペラと語る。


「程度によるが、学生だろう。そういうのが意外と事件に繋がったりするんだ。気を付けなさい」

「「「はーい」」」


 警察官2人が、ぼしょぼしょとメモを見ながら、時間を付き合わせて相談をしている。

「ゴブリンは、高校生5人の奴だよな。あれ保護者からお礼をしたいと署に来ていなかったか?」

「あー来ていたな。現場の奴が、名前を控えるのを忘れて、部長に雷食らっていたな」


「すまない。君が助けたのは、新興住宅地のフォレストニュータウン奥村と最果て辺りの件だよね」

「確かそんなバス停があった気もしますが、高校生の男の子5人でカマ掘られた奴です」

「カマ。まあそうだね。ちょっと詳細を説明出来るかな」

「ニュータウンの間。川側で。昔の用水路跡ですね。その奥に、巣が合って」

 そこまで言うと、間違いないという顔で頷く。


「ああ。分かった間違いない。保護者が連絡を取りたがったが、懸賞金が出ないもので、調書を取るときに、君の名前も住所も控えるのを忘れたらしくてね」

「いや、まあ良いですよ。これから大変でしょうし」

「大変は、大変らしいが。良いのかい」

「ええ。断ってください」

「分かった。ありがとう。時間を取らせてすまなかったね」

 帰ろうとしたので、呼び止める。


「今どの辺りで、ゴブリンが出ています?」

「いま、○○駅の北側。山の方だね」

「ありがとうございました」

 そう言って手を振る。


「さあ行くか。先日のを思い出した。たかられた金。取り返しに行くぞ」

「ああ。まあ懸賞金が出たら、少し返すよ」

 ばつの悪そうな顔が、並んでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る