第8話 何とか脱出
実は、こちら側に来たとき。
勢い余って、シャーマンゴブリンを、来た瞬間に蹴り倒した。
前回はワイヤーがあって、それを頼りに開いたが、今回は完全に繋がりが切れた状態。
そんなことを知らない、改は、はたと考える。
「どうしよう? 帰れないから、とりあえず。捕まった人たちを助けるか?」
「そうだね。すでに脱がされ始めてるから、やられちゃうよ」
そう言って、手で顔を覆っているが、指は全開。見えているよな。
ちなみに、ぐったりして、脱がされているのは、同い年くらいのお兄ちゃん。
その脇で、ゴブリンの凶悪な物はそそり立っている。
「うわー。前戯もなしで。痛そう」
「そう思うなら、ワクワク顔で見ていないで。助けるぞ」
「えー見物しないの?」
「おまえ。他人事だからって、それはないだろう」
そう言いながら、走り込み。頭を蹴り上げる。
「ぎゃっ」
そんな声を残し、飛んでいく。
「きゃあー。やっちゃえ。改」
そんなに声を出して、騒ぐから周囲に集まってくる。
「ああ面倒。だけど、この前のを使うと。全員輪切りだ」
何かないか?
「くそう。リストでも出ないのか。不親切。大体あのじいさん。力をあげようとしか、言わなかったからな」
イメージする。ストーンパレットって石つぶてか。石の矢は、スートンアローとかで良いのか? 頭で考えるが今イチ。
「うーむむ。刀をこの手に」
うん? 光が集まって。イメージ通りの、落書きのような剣が出た。
「無いより、ましか」
ぶんぶん振り回し、殴っていく。
切れねえ、何だ。このなまくらな剣は。
「今度、デッサンの勉強をしよう。まずは裸婦からだな。でも落書きのような万結だと怒るよな」
あっしまった。意識したら出てきた。
15cm位の、抱っこをせがむ万結みたいなもの。見られる前に投げよう。
ちょっと、大きいゴブリンがいたので、万結もどきを投げる。
胸から上が爆散した。
畜生、周りで、サバトが開催され始めた。
「万結おい。何処へ行った」
「ここ。ゴブリン。殴ったら死んじゃった」
「良いんだよ。倒せるなら殴れ。もう幾人かやられてる」
「あっ本当だ。へー。あんなおっきいの、すごいね」
「かわいそうだろう。助けろよ」
そう言って、倒しに行く。
もうね、必死で倒しまくった。
男も女も服が破かれて色々まずい。
もう万結は、隠すふりもせず見て回ってる。
「人それぞれ、違うのね」
頭をこずく。
「何を見てるんだよ?」
「改だって、見てるじゃん」
「仕方ないだろう。集めているんだから」
そう、散らばっている人たちを集めている。
合わせて、15人くらい。
「ふう疲れた」
「ここって集落だよね」
「壊滅させたから、懸賞金なら出ないぞ」
「あっそうだ。残念」
「ほら」
さっき買った御茶を渡す。
「おにぎり買ったよね」
「ああ食うか。おしぼりが先だな」
まったりしていると、30分くらいで、ゾンビのように皆が動き始めた。
そして、当然ながら、叫び声とかが聞こえ始める。
「ゴブリンは、倒しました」
それだけ伝える。
暖かいから、皆薄着なんだよな。
「すみません。此処何処でしょうか?」
「多分、異世界側だと思います」
「異世界?」
「ゴブリンを追いかけていたら、ここへ来たので」
「そうですか。戻れないのでしょうか?」
「さっき来たところへ、入ったけれど接続が切れていて」
「そうですか」
そんなことを話していると、周りでも此処何処だよと言う声。
やられたと言って、泣き出す声。
様々。そして、旦那より良かったという声まで。
「試してみるか?」
そう言って、洞窟まで戻ってみる。
万結は背中側に張り付いている。
手を開き、意識を集中する。
この向こうは、日本。日本。駅前。
うん? 何か感じた。
目を開けると、揺らぎが見えた。
顔を突っ込むと、人が大騒ぎして警察も集まっている駅前。
顔だけだが、声をかける。
「此処何処ですか?」
その声に反応した警官は、見て驚くが答えてくれる。
正解か。
俺は、後ろ。異世界側に振り返り。叫ぶ。
「見つけました。繋がっている間に、早くこっちへ来てください」
それを聞きつけ、ぞろぞろやってくる。
体が半分の俺を見てぎょっとするが、手招きをする。
「早く。閉じると、俺の体が半分になりそうなので」
そう言うと、あわてて皆が集まり。抜け始める。
1m外れると駄目なようで、並び直していた。
最後に万結が俺の手を引き、一緒に日本へ出る。
すでに警察が、謎空間から出てきた人たちから、事情を聞いている。
「何とか、帰ってこれたな」
そう言って、万結と手を繋ぎ。帰ろうとして踵を返した。
だが。遅かったようだ。
後ろに立つ警官。
「君達も、出てきたよね」
「あーはい。ゴブリンの巣は潰しました。懸賞金が無いのは承知しています。では、失礼」
「いや。こちらも、そうですかというわけには、いかなくてね。皆さんが仰るには君が助けたと」
「いや元々、彼女がさらわれて、助けに行っただけですから」
「彼女。ああいい響き」
万結が俺の言った、変なところに反応して、くねくねし始めた。
「とりあえず。二人とも名前と住所を」
「匿名希望です。郵便は私書箱へ」
「私書箱。契約しているの?」
「いえ。言ってみたかっただけです」
「はい。書いて」
A4の用紙が、差し出される。
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