第5話 白い部屋

 ぼふっと、笹で作ったバリケードを破り次々と、ゴブリンが出てくる。

 俺が置いた石に躓き、転がっていく。


 転がった奴の目に唐辛子スプレーを噴霧し、口にアルコールスプレーを撃ち込んでいく。

 それだけで、彼らは浄化されていく。

 理由など、知らんけど。

 効くのは間違いなく。ジタバタして消えていく。


 初めての時は、灯油かガソリンでも買って燃やそうとしたが、ガソリンは危険だし灯油とも思ったが、近くにあったのが薬局だった。

 だがそれが、当たりだった。

 奴らは、なぜか消毒できた。

 まあ小型の奴だけで、変異種には力業が必要。

 撃ち込んだ後。火を付けるだけ。


 まあ今回、変異種は出ず。

 わずか、23匹だけで、出てこなくなった。

 近くに転がる魔石を拾い。


 ライトで、洞窟の中を照らす。

「うーん。少ないな」

 ドキドキしながら、奥へと入ってみる。


 蜘蛛の巣は、さすがにないが、ゲジゲジさんがいたり。ビクビクしながら、奥へと向かう。


 やがて、分岐があり。とりあえず、右へ向かう。

 全体的に手彫りの雰囲気がある、趣のある洞窟。

 耳をそばだて、奥の音を聞く。

 わずかに、自身の耳鳴りがする程度。


 奥へ進むと、目の前には。

「何だこれ?」

 黒い渦が立っている。


 ライトで、突っつくと刺さり込み。

 潜った瞬間。真っ暗になる。


「あーどうしよ。見るからに怪しい」

 壁にペグを打ち込み、ワイヤーを繋ぐ。

「大分使ったからな、残りは、60m位か」

 手元に持つのは、耐荷重100kgの、2.5mmワイヤー。


 息を止め、顔だけを突っ込んでみる。

 当然。吸い込まれるように、向こう側へ引っ張り込まれた。


「おや。奇特な奴じゃな。あんな星に呼ばれたのか」

 むっ、じいさんが立っている。

 と言うことは、息ができるのか?

「ぶはっ」

 止めていた、呼吸を再開する。

 うん。息ができる。


 後ろを見ると、空中からワイヤーが生えている。

「何だこれ?」

 軽く引っ張ると、手応えはある。

 俺はそれで、少し安心をする。


「のう。そこの坊主。無視をするでない」

「ああ悪い。ちょっと色々気になって」

「ああ、まあ。それはそうじゃろうが。相手がいる場合は、普通そっちに集中せぬと失礼であろうが。うん? どうじゃ」

「それは、確かに。失礼いたしました」

 素直に、頭を下げる。


「うんうん。それでよい。それでじゃ、おぬしផែនដីមួយទៀតに行くのか?」

「はい? すみません。今なんと?」

「あー。エイリアステラにいくのか?」


「聞き取れたが、意味は分からない」

「なんじゃ。かなり低位の種族か。なら、迷ったな。おぬし。今、周りはどう見えておる?」

「白い世界」

「やはりのう。低次元の生き物で、本来この世界に耐えられないはずじゃが。まあいい。これも何かの縁じゃ。どれ。力を授けよう。何十億年に1度の気まぐれ。受け取れ。耐えろよ」

「ちょまっ。うがぁぁ」


 そのまま気を失う。


 そして、目が覚めれば。

 嬉しいことに、周りをゴブリンさん達に囲まれ。大注目を受けていた。


 襲われていないのが、なぜかは分からないが。

 今現在。絶好調に頭が痛い。

 体も痛い。

 ほら、ちょっとむせたら、血まで吐いた。


 顔を拭うと、目からも血を流していたようだ。

 そりゃ怖いよな。

 きっと周りじゃ、ゴブリンも。なんかヤバイ病気の奴がとか、きっと言っているのだろう。


 俺が動き出したので、囲っている輪が、少し広がる。


「うがあぁ」

 叫んでみる。


 輪がさらに広がる。

 落ち着いたところで、よく見る。

 ゴブリンが、興味津々で遠巻きにしているだけだが、その後ろ。

 木で作られた、壁が見える。


 こいつら、この星では、知的生命体だったのか?

 立ち上がってみると、家らしきもの。

 と言っても、柱を立て、上にでかい葉っぱが乗せてある簡素なもの。

 だがその下に、素っ裸にされ。ぐったりしている見慣れた種族を発見。


「有罪確定」

 そう思った瞬間。ゴブリン。奴らの首がある高さで、俺を中心に空間がズレた。

 周りを囲っていた板塀なども、100cmの高さで切られ倒れていく。


 鳴き声もなくなり、風の音がするのみ。

「あー。やっちまったなあぁ」


 とりあえず、ボディバッグをそこに置き。ぐったりしている奴らの元へ向かう。

 野郎達の下半身には興味がないので、見ないようにしたが、やはり目に入る。

 なぜか、無茶苦茶元気だ。


 生きているな。


 とりあえず、何かツタで縛られた手を、ニッパでちまちま切って、何とか解放する。

「生きているな。起きろ。朝だ」

 俺の声を聴いて、以外と元気な感じで起き上がった。


「奴らは?」

「不幸な事故で、皆逝ってしまった」

 彼らは、キョロキョロと周りを見るが、違和感だらけだろう。


 あの時は、気がつかなかったが、奥側に妙な掘っ立て小屋があった。


 そこへ向かい、バサバサと積もっている葉っぱをどけると、大きめの魔石が3つもあり。その中の一つはさらに大きかった。

 そう言っても、通常が1cm位で、大きめが2cm一番大きいのが3cmくらい。


「あのー。水とか食べ物は持っていませんか?」

「すまん。持っていない」

 彼らは、うち捨てられていた服を、見つけたのか。

 ボロボロだが、何とか着ていた。


「ちょっと、手分けして、魔石拾ってくれない?」

「あっはい」

 集めてもらうと、120個近くあった。


 何とか詰め込み、ボディバッグから伸びたワイヤーをたぐり。手を当てると、あの渦が開く。


 くぐろうとして、頭をぶつける。


 そういえば、向こうは1mの穴だ。

 かがんで、入り込む。

「ほら早く来い」

 そう言って、促す。


 何とか外に出て、残していた罠用ワイヤーを始末。

 その後、通報する。

 警察は無事来たが、俺は、驚きの事実を知る。

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