第4話 実践

 結局。いつものファミレスまで、やって来た。

 案内され、タブレット端末で注文を入力。


「さて諸君。話し合おうか?」

「ちょっと待て。おれの。ドリンクバー付いているか?」

「多分付いている。定食だろ。取っといて店員が来たときに聞けよ。なけりゃ追加だ」

「まあそれでいいか」


「さて諸君。話し合おうか?」

「あっ。改。ポテト注文するから、半分食べない?」

 また、万結がぶった切る。

「食い切れないなら、ほっとけば誰か食うよ。工藤辺りがきっと」

 俺がそう言うと、なぜか、安田と悠翔が、やれやれとゼスチャーしている。

 工藤達と、こそこそ話を始めるし。理花も、まあという感じで驚いている。


 そして、全員から、生暖かい視線がくる。


 結局。話もしないまま、注文した物がくる。

 そして、いつもの会話。

 あの講義は教授より、講師の方が分かりやすいとか、あの講義は出席を取らないから、いま取ってないなら、後期に取れとか。


 そして俺は今。

 なぜか万結により、口の中へポテトを詰め込まれている。

「ぶわ。無理。押し込むな。ええい。おまえも食え」

 そう言って、口にポテトを押し込む。


 すると、次から。あーんと口を開けて、待つようになった。

「自分で食えよ」

「良いじゃない。ケチャップを付けて。はい頂戴。あーん。お返し。口開けて」

 そう言って、なぜか上機嫌。

 当然、周りは生暖かい視線。


「さて、今回だけど。場所はこの辺り」

 結局。悠翔が仕切り。話を始めた。


「警察も連絡を受けて、周辺探査を行ったが、発見できていない。つまり質(たち)が悪い」

「ずる賢いとも言うけどね」

 うんうんと、自分で言って自分で納得する万結。


「それで考えられる事はだ、改なんだ?」

「そこで俺に振るか」

「性格の悪いものは、やはり同類に聴くのが一番だろう?」

「あ゛あ゛っ? 俺は別に、性格が悪いわけじゃない」

 その瞬間。周りがざわっとなる。なんで万結まで驚く。


「たくっ。普通に考えれば、警察が思うより行動範囲が広いか、バックトラック。足跡を踏みながら、戻ったかだな。止め足とも言うが、ヒグマやキツネでもするんだ。ああ。ウサギも確かするな。どうせ奴らが行った。山の方しか見ちゃいないだろう」


「と、言う事が考えられる。皆で、昼間にチェックするぞ」

「もう散々踏み荒らされたかもしれないが、バックトラックなら、どこかに別方向に向かう足跡があるはずだ」

 そう皆に言ったが、山の反対側は道路を挟んで谷になっている。


 一部が、山へ入り。本体は暗渠でも利用して、谷へ下った可能性がある。

 新興に起こった住宅地あるあるだな。便利な所から造成をするから、その途中に変に自然が残ってやがる。


「あれ?」

 周りを見回すが、人が考えている間に。誰も居なくなってやがる。

 伝票が、透明なアクリルの筒に刺さり、そこに静かに立っていた。

 俺はそこに、言い知れない恐怖を感じた。

 だが、そっと見る。


「俺の注文したランチが一番安い。だれだ、ミックスグリルなんて頼んだのは」

 ファミレスでランチなのに、七千円近くの出費。ポテトって500円もするし、あれ大盛りじゃん。


 時計を見る。

 次の講義も、遅刻だ。

「やめた。小遣い稼いでこよう」


 やめれば良いのに。

 俺はさっき言っていた、現場へ向かう。


 電車の駅から、住宅地向けのバス。

 ナビを見ながら、1つ前で降りて道を昇って行く。


 背負ったボディバッグには、小さな工具ケースとワイヤー。リングスリーブや、結束バンド。唐辛子と小さなポンプ式スプレー。ただしアクアリウム用のCO2ボンベを繋いである。


 学校を出るときに、すでに水を入れ、唐辛子をぶち込んである。

 あとは、発煙筒と消毒用のアルコール。



「うーん。この辺りか。良い場所だな。上流に住宅地がなければ泳ぎたい感じだ」

 山側を覗きながら、暗渠を見ていく。

「やっぱり、大きなものじゃないが。雨水用の暗渠がいくつかあるな」

 1kmも行くと、次の集落が見えて来始める。

「来すぎたか」

 今度は、川側を見るが、木が茂り。下が見通せない。


「大体。下へ降りる、階段があるはずだが。ああ、あれか」

 階段を、川へ向かって降りてみる。


「ぶわっ。蜘蛛の巣と雑草が。草刈りくらいしてくれよ。竹があるのは良いな」

 ちょっと、水面より高いところへ出たが。まあいい。


 そのまま、川に沿って下っていくと、川と反対側に、涸れた用水路と元田んぼだろう。今は竹が生えているが、一区画平らだ。

 でまあ、用水路の水の出口は洞穴っぽい。

 高さが、1mちょっと。

 奴らは130cm位だから、ちょっとかがむくらいか。


 水はないが、元水路を見ると、足跡が残っているし雑草が倒れている。

 まあここだろう。


 周りを見回し、手近な竹に巻き結びで、ワイヤーの端を止め。

 途中に南京結び。輸送結びとも言われる輪っかを途中に作り、本来荷台のフックに引っかけるところへ輪っかを作る。


 でかい奴がいれば、輪っかを首にかけ。そのまま吊る。


 水路に、ぽいぽいと大きめの石を、ランダムに放り込む。

 これで、足が引っかかる。きっと転んでくれるだろう。

 向こうが、塞がっていることを祈りながら、発煙筒をぶち込み、何とか切った笹で蓋をする。

 そして、右手に自作催涙スプレーを構える。

 左手には、アルコールスプレー。


 そして、「ギャアギャア」と聞こえ始める。

「よし来い」

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