特務機動隊小隊長 木村正隆 (2)

 ……ああ、畜生。

 あの話は、本当かも知れない。

「殺人現場が凄惨極まりない場合こそ、動機はクソしょ〜もない理由で、犯人は手慣れてない野郎だと思え」

ってヤツだ。

 いや、俺達は精鋭の筈だ。

 でも……ほんのちょっと歯車が狂ったせいで、どんどん、事態は陰惨なモノになっていった。

 何かの間違いで、刑事部の連中が、この状況を殺人現場だと勘違いしたら……どんな誤解をするのやら……。

「おい、参考人は確保したか?」

「けど……車に入り切れませんよ」

 部下から当然の指摘。

「まだ、中隊本部との通信は回復しないのか?」

「はぁ……」

「仕方ない」

 俺は、同じ大体の別の中隊に所属している警察学校時代の同期の基山もとやまに電話をする。

 感心出来る真似じゃないが、ヤツの中隊から臨時で車と運転手を借りる事が可能か訊いてみる事にしよう。

『おい、木村なのか? 無事だったのか?』

 ところが、返ってきた答がそれだ。

「な……何を言ってる?」

『お前こそ、何を言ってる? 今、どこかの現場に出てるのか?』

「そうだが……?」

『えっと……なら、知らなかったのか?』

「何をだ?」

『お前らの中隊本部が消えた』

「はあ?」

『だから……何て言ったらいいか……俺達の事態を把握してる訳じゃない。ともかく、俺達の中隊から人を出して、お前らの中隊本部の状況を調べてるが……』

「だから、何が起きてんだ?」

『わからん。近隣の防犯カメラも軒並壊れてるようだ……。だから……何で……』

「おい、お前ら、何者だ? 手を上げろッ‼」

 その時、別の声。

 声のする方向を見ると……。

 やめろ……変な事が一度に2つも起きて……俺の脳味噌じゃ処理が追い付かん……。

 電話の向こう側で基山もとやまの奴がそう言っていた。

 一方、電話のこっち側では……制服の巡査が……俺達に拳銃を向けていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る