特務機動隊小隊長 木村正隆 (3)

「特務機動隊だ。邪魔をするな」

 俺は、その巡査を一喝した。

「そっちが特務機動隊なら、こっちは所轄だ。いくら特務機動隊でもやってる事が乱暴過ぎる。令状フダを見せろ」

「知らんのか? 俺達は令状フダ無しでも被疑者マルヒをしょっぴける」

「なら、小職の上司から、お前の上司に、お前達が正式な命令により動いてるかを確認する。いくら何でも、やり過ぎだ。お前らがやってる事が、お前らの上司の正式な命令によるものか確認するまで、動くなッ‼ 何もするなッ‼」

 悪夢だ。

 よりにもよってタイミングが悪い。

「何で、所轄がここに居る?」

「所轄だから、担当区域の見回りをしてたんだ」

「俺達の捜査中に、その現場にたまたま居合わせるって、偶然にも程が有る」

「SNSと動画投稿サイトに『関東難民』が多く住む場所を襲撃する旨の犯罪予告が複数UPされていた。その予告現場の1つが、ここだ。念の為に見回りをやっていた」

「フザけるな」

 怒りの余り、俺は……。

「あ……?」

「小隊長、マズいですよ……」

 クソ……慢性的な銃弾不足とやらのせいで……ここんとこ、ロクに射撃訓練をやってなかった上に、片手撃ち。

 急所を外してしまい……一撃で楽にしてやる事が出来な……いや、俺は……何をやってる?

 何で……同じ警察官サツカンを……?

 たしかに……この巡査の発言は、警察官サツカンにあるまじき邪悪な「」に蝕まれていた……。

 いや、変だ。

 全てが変だ。

 何故、俺は……

 いや……平常心じゃないから、こんな真似をやらかしたのか?

 じゃあ、何で、自分が少しも平常心じゃないのに、自分が平常心だと思い込んでた?

 何かがおかしい。

「行くぞ、目撃者は殺処分しろ」

「殺処分?」

「殺処分だ。質問は後だ」

 何が正しいか……自分でも判らなくなっている状態だが……それでも、これは正しい……いや、待て。

 本当に俺は正気なのか?

 だが、こんなマズい状況で、より事態をマズくするのは、判断に時間をかけ過ぎる事だ。

 多少、間違った判断でも……何もしない方がリスクが高くなる。

 ああ……そうだ……。

 上や後方支援チームと連絡が取れない以上、多少は間違っていても、自分の判断で動くしかない。

 その方が……迷ったまま何もしないより、圧倒的にリスクは少ない筈だ。

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