特務機動隊小隊長 木村正隆 (1)
「宅配便です」
俺は玄関口でそう声をかけた。
本人の自己申告では、こいつは十年前の富士の噴火で家族を亡くしている事になっているが……外国の工作員の可能性が高い以上、信用出来る話じゃない。
だが、大事な事は、こいつが今一人ぐらしだと云う事だ。
「あの……どちらの宅配便ですか?」
流石は外国の工作員だ。用心深い。
当然、ドアには鍵がかかっている。
部下にドアロックを壊すようにハンドサインで指示。
「また、上から色々と言われますよ」
大きな権限を与えられているとは言え、俺達は法律の
銃弾の使用は最小限にするように上層部から通達されている。
とは言え、散弾銃のスラッグ弾がドアノブを撃ち抜き……。
次の瞬間……悲鳴。
しまった。
銃声と悲鳴を聞いた……近くの部屋の住民が様子を
「くそ、全員、参考人として出頭してもらえ」
「了解」
部下は近くの部屋に走る。
俺は……スラッグ弾で空いた穴に指を差し入れ、
ちくしょう……。
ドア・チェーンによる二重施錠か。
ドアの隙間から見えるのは……片手が吹き飛んで、もがき苦しんでるジジイ……。
何て事だ。
こいつが、外の様子を
「ど……どうしました? 何が起きてんですか?」
その時、部屋の奥から別の男の声……。
俺は、チェーンカッターでドア・チェーンを切断。
「特務機動隊だ。署まで来てもらう。お前には黙秘権も弁護士を雇う権利もないッ‼」
そう言って、俺はチェーンカッターから手を放してコンクリの床に落し、右手で拳銃を左手で警棒を抜く。
まず、片手を失なったジジイをヘッドショット。
この出血量では……どうせ助からない。
仕方ない。
部屋に居たもう1人が何者か知らないが……「准玉葉」の
いや、よくよく考えれば理屈に合わない話だが、「異能力者」がゾロゾロ居るような御時世だし、それで、毎回、俺達の業務には何の支障も出てない。
単に、本当はそういう事が何故起きるのかのちゃんとした理屈が有って、俺みたいな根からの体育会系の頭では理解出来ないだけだろう。
もちろん、裁判では証拠として認められないだろうが、俺達や公安は、同じ警察でも、刑事部と違って「犯罪を起訴して有罪を勝ち取る」のがゴールではなく、「犯罪を未然に防ぐ」為に有る。裁判で有罪を勝ち取れなくとも、阿呆な検察が起訴してくれなくとも、俺達のやった事が犯罪者やテロリストや外国の工作員どもへの抑止力にさえなれば、それで十分に成功だし、それで、俺達の給料も階級も上がる。
まあいい、こう云うのは毎度の事……。
「な……何だ……あんたは……? 何をして……? うわっ⁉」
そいつの顔面に警棒を叩き込むが……しまった。
利き手じゃない方の手で、しかも逆手で持ち、ついでに玄関内に入ってしまって大きな動きが出来ない。
大して鍛えてないように見えるそいつを一撃で無力化出来ない。
クソ。
そいつの腹に前蹴りを叩き込む。
続いて、警棒を持ったままの左の拳で、そいつの顔面を殴る。
それでようやく「一応の」
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