第27話 よからぬ邂逅
そんなこんなで頭の中でいろいろ考えてながら相変わらず六根学園の生徒が少ない町を散策していると、
ふと裏路地のほうから人が数人飛び出てくる場面に出くわした。
彼らは恐怖の打ち震えた顔で飛び出してきたかと思うと、俺はもちろん、いろんな通行人にぶつかりながら逃げるように去って行ってしまった。
一体何が彼らをそんな状況に追い込んだのだろうと、彼らが飛び出してきた路地裏に目をやると、そこには薄暗い通路がスーッと伸びていた。
ただ、そんな何の変哲もない通路に、俺はここに来た日を繰り返すかのように足を踏み入れた。
毎度毎度、この路地裏というやつに吸い込まれてしまう癖をどうにかしたいものだが、ついつい足がこういう場所にむいてしまうのは仕方がない。
そう思いながらしばらく歩いていると、一人の人が立っているのに気付いた。
その人は線の細い、まるで鉛筆のようなスタイルの男であり、彼は俺と同じ学ランに身を包んでいた。
すると、俺の気配を察したのか、鉛筆のような学生は振り返った。少し長いサラサラの髪の毛をたなびかせて振り向いた男は、左手で本を抱き、右手でかけている眼鏡を上げるしぐさを見せた。
まるで、映画のワンシーンのような見事な振り返りに、思わず見とれていると、男は冷たい目で俺をにらみつけてきた。
「なんだ君は」
「え、俺?」
「そうだ、君しかいないだろう」
「あ、あぁ」
「まさか増援か?」
「増援、なんのことだ?」
足元を見ると、そこには見知らぬ制服を着た学生らしき人が数人横たわっていた。それはまるで目の前にいる彼がやったとしか思えず、俺はすかさず身構えた。
「なんだこれ、お前がやったのか?」
「ん、あぁそうだけど、君も僕をやりに来たのかい」
「やりに?」
「そうさ」
やり、それってあの武器の「槍?」いやそれだと意味が分からんな、じゃあやっぱり普通に殺すっていう表現の「殺り?」それとも・・・・・・
「そ、そんなわけないだろ、大体やりに来るとかそんな物騒なこと言うなよ俺は普通の通りすがりだよ」
「嘘もたいがいにした方がいいよ、こんなところを通りすがる理由、僕以外にないだろう?」
「いや、だから」
「もういいよ、早く済ませよう」
そういうと、メガネ男子は俺に向かって突然殴りかかってきた。どうやら「やり」というのは物騒な表現のものだったようだ。
「うわっ」
「おい、よけるなよ当たらないだろ」
「バカ、よけるに決まってんだろ、いきなりなにすんだ」
「何をするって、君もカラクリなんだろ」
「カラクリ?」
なんだかよくわからない言葉を口にしたメガネ男子はそのあとも俺に向かってその持っている本を鈍器に何度も殴りかかってきた。
しかし、その動きはのろまでよけるのはたやすかった。こんな奴が数人の男相手にここまでやれたものなのかと不思議には思ったがとにかく俺はこの状況を何とか打破したかった。
「待てっ」
「なんだ、命乞いか?」
「いや、俺は別にお前に危害を加えようとは思ってない」
「関係ない、その面を見ればわかる君は間違いなくカラクリの人間だとわかるね、まったく同じ六等星のくせにそんな奴らに取り込まれるなんて、恥ずかしくないのか?」
「だ、だからなんなんだよそのカラクリってのは」
「とぼけるな」
そうして再び殴りかかってくるメガネ男子に、俺は仕方なくその攻撃をかわして見せるとメガネ男子は勢いがつきすぎたのかふらふらとよろめきながら地面にダイブした。
もしかするとここに寝そべってる三人を相手にしたものだから相当体力を消耗しているのかもしれない。そう思った俺は厄介なことになる前にさっさと逃げることにした。
路地裏走り抜け、ようやく人が行きかう街並みへと戻ると、後方からは誰も追っかけてきておらず、うまくまくことができたことに安心した。
ただ、逃げたのはよかったのだが、どうにも あのメガネ男子とカラクリとかいうわけのわからない言葉が気になって仕方なかった。
そんな、もやもやした気分のなか、結局どこによることもなくただただ散歩という名の有酸素運動をした気分の俺はというと、いつの間にか蕾寮へと戻ってきていた。
寮敷地内にある時計塔の時刻はもう六時を回っていた。
こうなりゃ家でゆっくり晩御飯でも作るしかない、そう思った俺は自宅へと戻ろうとしていると、何やら騒がしい音が鳴り響いた。
それはまるでたくさんのものが崩れ落ちたかのような音であり俺はすぐにそんな音がする方へと目を向けた。すると駐輪場で一人の人間がしりもちをつき、その一人を三人が取り囲んでいる様子がうかがえた。
状況からしてあまりよろしくない雰囲気、おそらく喧嘩だろう。
そんな、今日二度目の喧嘩現場の遭遇、そして今度は一人に対して三人の一般的な構図俺はそんな様子をうかがいながら静かにその喧嘩現場に歩み寄った。
その三人に詰め寄られているのが先ほどの俺のことをカラクリだとか何とか言っていたメガネ男子であることに気づいた。
さっきは三人を地面に寝かせていた奴に今度は返り討ちにでもあったのだろうか、とにかくまるで浦島太郎にでもなった気分で俺は喧嘩の仲裁に入ることにした。
「お、おーい」
「あぁんなんだてめぇ?」
俺の言葉に機嫌よさそうに反応してくれた人間は金髪オールバックでブレザーを着た、いかにもやんちゃそうな学生だった。
まぁ着ているとはいっても着ているのか、着ていないのかわからないような、はだけてだらしない格好だったが、その辺はやんちゃのお約束といったところだろう。
とにかくその金髪オールバックはまるで矛先を俺に変えたかのように詰め寄ってきた。
「おうおうおう、なんだてめぇ」
「いや、良かったらあいつの事見逃してやってもらえないですか?」
「は?」
「いや、それだけぼこぼこにされてたらかわいそうだと思って、はは」
「んなもん関係ねーんだよ、俺たちはこいつをいじめることを楽しんでんだよ、邪魔すんならお前も混ぜてやろうか?」
「あ、あー、どうしよう」
「なんだ、あぁん?」
どうやら、言葉が通じない相手らしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます