124 神聖教国各派代表30人 神国スパできょうちゃんと会話する
ツアコンさんがスパでの手伝いを呼んだ?やな予感がビンビンする。
スパに入り、暖簾をくぐって脱衣所に入ると、居た。きょうちゃんである。
「ご苦労様。ひと足先にここについたのだが、滅びの草原はきつかったな」
「駆けてきたので?」
「そうよ。ステファニー様がついてくれてな。強い強い。鞭をビュンビュン振って、魔物はあっという間に二つになり、三つになり、頭が消えたり、胸に大穴が空いたり、いやはや大変であった」
「教ーー」
「きょうちゃんでいいぞ。そうとしか呼ばれていない。昔の名前はとうに捨てた」
「きょうちゃん様は戦ったので」
「おうよ。ショートソードを渡されて、初めは当たらず、踏まれたり、体当たりをされたり、殴られたり、噛みつかれたりしてかなり痛かったが、そのうち当たるようになってな。じゃが野宿にはまいったな。ステファニー様はエスポーサ様が迎えに来て、一人で一晩だ。次から次へと魔物が襲ってきて一睡もできなかった。朝日が登ってホッとした」
すげえ、伊達にトップに立ったのではないな。
「それからよ。朝になってまたステファニー様が環状の森の入り口まで付き添ってくれた。いやあ恐ろしいな、あの神様製金属多節鞭。世の中に三本あるそうだ。持っているのは全部王女様だ。エリザベス様が師匠、一番弟子がイサベル様、二番弟子がステファニー様。怖いね、鞭の女王が三人」
はあ、なるほど。ステファニー様はまだしも、エリザベス様とイサベル様は名前を聞いただけで一国を率いて戦いに赴きそうだ。強そうだ。近づかないでおこう。
「着ていたものはその箱に入れてくれ」
箱に入れると綺麗になってポンと出てくる。面白い。ポンポンとあっという間に全員の服が綺麗になった。
「今日は一緒に入ろう」
きょうちゃんも服を脱ぎだす。
筋骨隆々だ。素人目にも一眼見てわかるが実用的な筋肉である。無駄な見せるための筋肉はない。なるほど滅びの草原で一晩野宿できるわけである。
「草むしり、ドブ掃除、まきわり、洗濯。爺さん、婆さんをおぶってお使いや散歩をやっていたらこうなった。人生初めて人のためになる事をし、しかもそれが楽しいと知った。いいぞ、ドブ掃除。お前らは何をやるんだ」
思わぬきょうちゃんからの問いかけである。簡単な問いに見えて深い。答えられないのである。教国で今までの派閥争い、権力闘争、出世競争をする未来はない事は分かっているが、自分たちが何をすべきかわからないのである。良くも悪くもトップに立った人は核心を突いて来るものだと思うのである。
「ゆっくり考えるさ。シン様から使命が与えられるかも知れないしな。背中は流した。ざっと洗って風呂に入ろう」
考え込んでしまった30人。ハビエル殿はマイペースである。いい湯ですなときょうちゃんとのんびりと湯に浸かっている。空っぽのように見えて存外大物なのかも知れぬ。
スパから出ると日は中天にある。
ツアコンさんが待っていた。
「今朝は血抜きをしない肉を食べたようですが、次は血抜きした方がいいですよ。これから行く大食堂は、きちんと血抜きした肉で美味しいです」
最初に言ってよと思うが迂闊な事を言って血抜き実習になってもたまらんから黙っている。
「丁度、トレーニング仲間の壱番組の皆さんが来ましたので、注文の仕方などはお仲間に聞いてください。食べ終わった頃また来ます」
ツアコンさんはブランコ様とドラちゃん、ドラニちゃんと歩き去った。
「おじさん、一緒に行こう」
壱番組の『おじさん、ファイ』の子供達に誘われてしまった、残念30人とハビエル殿である。
食事は美味しかった。壱番組の子供たちはバイバイして去って行く。
ツアコンさんがニコニコして待っていた。怪しい。
「怪しくありませんよ。夕食まで自由ですよ。何もする事なく夕方まで過ごすのも辛いでしょうから幾つかプログラムを用意しました」
やっぱりと思う30人。
「1番目、ゴードン鬼軍曹の水上歩行訓練。希望者はいませんか。おや、トルネードが脚を上げてますね。ではトルネードとハビエルさんが水上歩行訓練、他にはいませんか。それでは一番目は決まりです」
「2番目、ブランコとドラちゃん、ドラニちゃんと散歩、希望者はいませんか?散歩ですよ。楽しいですよ。お薦めです」
絶対怪しい。滅びの草原が思い出される。パスだ。
「3番目、私とウォーキング、希望者は?」
ここだ、と残った30人が勢いよく手を上げる。
「あら、おほほほ。ありがとうございます。楽しみですね。ではゴードンさんお願いします」
ハビエル殿はトルネードに引っ張られて行く。トルネードがこちらを向いてニヤッと笑った気がするが見間違いだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます