122 神聖教国各派代表30人 スパエチゼンヤから神国まで走る(下)

 「では、気合を入れて野宿だ。少しでも陽があるうちにテントを張った方がいいぞ。もうバリアが切れるぞ」


 急いでテントを張る。どうにか張り終えたら陽が落ちた。

 真っ暗になる。魔物の濃密な気配がわかる。バリアが消え掛かっているのだろう。


 「焚き火をしなければ何も見えないぞ。気配を消して潜む場合はいいがそうでない場合は襲われ放題だ。今日はサービスしておこう」


 各テントの近くに焚き火が出現した。薪もある。


 「ではバリアが消えた。明日の朝まで頑張れ。骨は拾ってやる」

 ゴードン鬼軍曹のありがたいお言葉を最後に、気配が消えた。壱番組の気配もない。壱番組の周りにはバリアがあるのかも知れない。

 

 という事は魔の草原に30人とハビエル殿とトルネードで野宿か。やばい。

 

 来た。魔物だ。全員で当たる。どうにか撃退した。全員で当たっていたのでは寝られぬ。2人寝ずの番と言っていたが、とてもではないが手が足りぬ。4人寝ずの番、2人テントにしよう。ハビエル殿は、トルネードが異様に強い。ほおっておこう。


 東の空が明るくなった。日の出が近い。一晩中魔物と戦っていた気がする。夜行性の魔物が引いてゆく。助かった。

 ゆらゆらと空間が揺れ、ツアコンさん、アカ様、ドラちゃん、ドラニちゃんが現れた。ゴードン鬼軍曹も、壱番組もバリアを解除したらしい。


 「さて、あそこに見える森がシン様の住まいがある森です。ごく近いですからすぐ着くでしょう」


 昨日は気が付かなかったが、大きな森が見える。数十キロで着きそうだ。なんだ、昨日頑張れば森に着いたものをと思った。


 ゴードン鬼軍曹が言う。

 「この滅びの草原で野宿できれば世界のどこへ行っても楽に野宿できる。良かったな」


 良かったと言われてもーーー。


 「食事は皆さんで用意してくださいね。昨夜大量の魔物を収納できたでしょうから、美味しそうなのを食べたらいいんじゃないですか。火はまだありますね。消えているところもありますね。生はいけませんよ。ナイフは収納に入っていますから使って下さいね」


 消えているところから急いで薪を集め数箇所の火を維持した。


 「では、森の入り口のところで会いましょう。ゴードンさんあとはよろしく」


 「今日は近いから休憩を一時間とる。その間に食事をしてくれ」

 

 壱番組はテキパキと食事を作っている。持ち込みらしい。ずるいぞ。


 「ボヤボヤしてると時間がなくなるぞ」


 ナイフが入っていると言っていたな。これか。これで獲物を捌けというんだろうな。一頭出してみる。でかい。これでは解体で一日がかりになりそうだ。小さい獲物と交換する。100キロくらいありそうだ。もっと小さくて良いと思うがこれ以下のは無い。これ一頭で30人でも食べきれないだろう。全員集合だ。誰も解体方法を知らない。柔らかい腹側からナイフを入れる。切れ味がいいな。腹を開いた。消化器を傷つけるとまずかろう。取り敢えず肉だ。腹中に肉はない。当たり前か。上のほうか。あった。肩肉だ。取り出して焼く。血生臭い。不味い。魔肉はうまいという事を聞くが不味い。血抜きか。血を抜かなかった。オエ不味い。


 「時間がないぞ。テントを片付けて出発の準備」


 壱番組はもうテントは片付けて出発の用意は済んでいるようだ。われわれもこんな不味いものは食えぬ。急いでテントを片付ける。よし、準備はできた。


 「食べ残しというかほとんど残ったな。埋めるなどして片付けないと魔物が来るぞ。今日はサービスだ。ドラちゃんお願いします」


 ドラゴン様が魔物に息を吹きかける。消えた。


 「火は消化したか。うっかりすると出火して火に巻かれ、こんがりと自分が焼き上がるぞ」


 慌てて火を消す。もったいないが水筒の水をかけて踏み潰した。


「それでは今日も頑張ろう。二時間で十分森に着くだろう。行くぞ」


 ブランコがウオンと吠え、トルネードがヒヒンと嘶き走り出す。

 今日も30人は横に広がって突進してくる魔物を屠りながら駆けて行く。

 だいぶ慣れた。

 程なくパラソルが見えて来た。なんか変な施設もある。

 森に近づくに従って魔物が減って来たような気がする。


 「みなさん、お疲れ様でした。これからシン様の森に入ります。だいぶ血塗られていますね。シャワーで落としましょう。こちらの施設は、脱衣所とシャワールームがあります。着替えは置いてありますので、脱いだ服は箱に入れてください。処分です」


 壱番組の皆さんは森に入って行く。嬉しそうだ。


 脱衣所に入る。なるほど箱がある。服を脱いで箱に入れる。消えた。ハビエル殿の服は、箱に入れたら綺麗になってポンと出て来た。特別製なんだろう。シャワーを浴びる。気持ちいい。汚れを落とす。シャワーから出て用意された服を着る。下着から一式揃っている。服はハビエル殿と同じデザインだ。なるほど俺たちはシン様教の神父になったのか。


 脱衣所から出ると、ツアコンさんだけが残っていた。


「ここからはまた私がご案内します。森は深いので迷子にならないでくださいね。それからこれからは魔物は出ません。シン様と共存している獣だけです。狩らないように驚かさないようにお願いします。仲間ですから」


 ツアコンさんがシャワー施設に手をかざすと施設が消えた。

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