108 ブランコ、ドラちゃん、ドラニちゃんが神父さんと馬を助けた(下)
お昼にしよう。テーブルを出した。ブランコ、ドラちゃん、ドラニちゃん、何か取って来て。あっという間に見えなくなる。
目の前の空間が揺らぎ、人化したアカとエスポーサ、それにマリアさんがやって来た。
ハビエルさんが驚いている。
「僕のアカと、マリアさん、エスポーサです」
ハビエルさんが跪いた。
「ハビエルと申します。神様には二度命を救っていただきました。この命神様に捧げます」
アカが手を取ってハビエルさんを立たせる。
「いいんですよ。良いことをした人が報われる世界になってほしいと思っています。なるべく多くの人が幸せに暮らせるよう祈っています」
「わかりました。このハビエル、トルネードと共に身命を賭してこの世界の人々に尽くしましょう」
トルネードもヒヒンと返事をした。
まずい、また狂信者が増えてしまった。一応言っておこう。
「そう気張らないでお気楽に出来ることをしていただければいいだけです」
「身命を賭して気楽に出来ることをーーー」
「みんなが獲物をとって来たので、料理してお昼にしましょう」
マリアさんとエスポーサが、ブランコ、ドラちゃん、ドラニちゃんがとって来た獲物を捌く。
そうだ、移動用スパ棟を作って、ハビエルさんにお風呂に入ってもらおう。
移動用なのでこじんまりしたスパ棟を作って出した。男女別風呂、トイレ、応接室、客間2部屋。僕らの部屋。名称は移動用簡易スパ棟にする。
「ハビエルさん、お風呂に入ってください。その間に料理が出来るでしょう」
「オリメさんから服を預かって来ました。脱衣所に置いておきますから着替えてください」
アカが収納から服を取り出した。移動用簡易スパ棟に差し出すと服はスッと消えた。
ブランコ、ハビエルさんと一緒にお風呂に入る?入るーー。ドラちゃんもドラニちゃんも入るの?そうかい。じゃ行ってらっしゃい。
牛もどきとでかい鳥2羽。余った肉と角や羽などの素材は、それぞれの収納にプッシュしておこう。
久しぶりに外で料理を作る。作るのはマリアさんとエスポーサ奥さんだけど。エスポーサはそつなくなんでも出来るな。
トルネードをブラッシュングしてやる。いい体格になった。ブルルとご機嫌だ。
人化したドラちゃんとドラニちゃんが出て来た。姉妹だね。そっくりだ。駈けてくる。飛び込んできた。よしよし。ブランコも出て来た。よしよし、いい子だ。エスポーサを手伝ってね。うん、て返事して可愛いね。
あ、エスポーサに手を出すなと言われている。シュンとした。トボトボとトルネードのところに行った。トルネードが構ってくれている。脚を治したからね。仲が良い。
「よくハビエルさんとトルネードを見つけたね」
両腕の中のドラちゃんとドラニちゃんに聞く。
「見回りしてたら悲鳴が聞こえたの」
見回り?遊びじゃなかったんかいと思うけど黙っている。
「それでね、ブランコが盗賊だって走って行ったの」
「ブランコは悪い人がわかるの」
「あたし達もわかるの。みんなもわかるの」
「ブランコは速いの。ほとんど転移なの」
「あたし達もできるの。転移」
「みんなもできるの。転移」
「そうかい。そうかい。よくやった。えらいえらい」
みんなだって、どえらい進化だ。神化か。ドラニちゃんもドラちゃんと全く変わらない。少し妹なだけだ。何を作ってしまったんだろう。背中をツーと冷や汗が流れる。
「神様」
ハビエルさんが出て来た。シン様と言っていると信じたいのだけど、神様と聞こえる。服は、あれ、神聖教国から来た6人に作ったものと同じデザインだ。サイズはピッタリ。オリメさん、どうやって採寸したんだ。もともと裁縫は神業だったが、全面的に神化か。あまり考えないことにしよう。
「この服はいただいていいんでしょうか」
「どうぞ。丈夫な服です。お使いください。靴も、あったようですね」
「はい、いただきました」
オリメさんは靴まで作れるようになったのか。神化だ。
「料理もできたようですから、食事にしましょう」
トルネードには、劣化袋を通した野菜を飼い葉桶いっぱいに入れてやる。飼い葉桶は新しいものにした。美味しそうに食べているね。
みんなでテーブルについて、いただきます。
ドラちゃんとドラニちゃんのおしゃべりが止まらない。アカとエスポーサはニコニコ聞いている。保護者だな。ブランコは美味しい、美味しいだ。楽しくっていいな。マリアさん?もちろん隣だよ。
ハビエルさんは、神の食事だとか言っている。真面目な人だね。気楽にしてもらえればいいんだけど。
食事が終わったら少し休憩。エスポーサがお茶を淹れてくれる。美味しいね。ブランコがずずずーーと飲んでいる。あ、エスポーサに行儀悪いと叱られた。面白い。
さて、行きますか。
「トルネードの体力養成も含め、駈けていこう。人化したままだと皆んな平伏してしまうから、移動用簡易スパ棟で元に戻ってね。ハビエルさんにはこの線指輪を差し上げます。収納付きです。トルネードにも線アンクレットをつけてやりましょう」
ハビエルさんに線指輪を渡し、トルネードに線アンクレットをつける。馬体が光った。ハビエルさんも指輪をつけると光った。
「この輝きは、神様のバングルと同じ。いただくわけにはまいりません」
「あちこちに配っていますから、お気にせずに。不可視というと見えなくなります。その指輪は外すと僕のところに戻って来ます」
「信徒の証。一生外しません」
いやいやいや、信徒の証になってしまった。
実際そうでしょうと柴犬に戻ったアカが言う。そうだったの。そうよ。だそうだ。
ため息が出る。
「では出発しますか。先頭はブランコ、次はハビエルさんを乗せたトルネード、次はアカと僕とマリアさん、殿はエスポーサ。遊軍はドラちゃんとドラニちゃん」
遊軍て何、フラフラと遊んでいればいいんじゃない。とドラニちゃんとドラちゃん。そんなもんです。
「ブランコ、トルネードがいるから衝撃波が発生しないくらいのスピードだよ。スパエチゼンヤが見えたらゆっくりだ」
ウオン。分かったみたいだ。
「ブランコ、ゴー」
ウオーン。駆け始めた。だんだんスピードアップした。トルネードも余裕だ。一時間もしないうちに王都とスパエチゼンヤと牧場の緑が見え始めた。ブランコがスピードを落とし始め、スパエチゼンヤの門前に到着。
今日も賑わっている。冒険者の門番に挨拶して大通りを奥まで。トルネードは厩舎に預けて管理棟へ。エチゼンヤさんが出て来たので応接室で今までの経緯を話す。
ハビエルさんは、長くエクバティアで万年神父をしていたのでエチゼンヤさんとは顔見知りだった。お互い線指輪を確認して安心している。
「そうですか。神父さんもシン様の陣営に」
「はい、私はこの信者の証の線指輪を頂いたばかりです。エチゼンヤさんは先輩信者とお見受けします。これからもよろしくお願いいたします」
「神様の御心のままに」
「神様の御心のままに」
ヤバいぞ。コイツら狂信者だった。放っておくと宗教談義に突入する。
「ハビエルさん、先ずは宰相に神聖教国から30名のスパエチゼンヤへの視察があると通告しておきましょうか」
「一緒に行きましょう」
信者の先輩が後輩のために一緒に行くようだ。
エチゼンヤさんが用意した馬車で王宮へ。
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