064 連絡装置を作った

 今日は何しようかな。


 王都とコシは遠いね。連絡手段は冒険者便か行き来する商人に頼むくらいしかない。ドラニちゃんは基本コシにいるから王都からドラニちゃん便は出せない。オリメ商会の話が進むと不便だな。


 よし、連絡装置を作ろう。一対の装置を作ってボタンを押すと片割れの装置が鳴って会話できる。いいな。

 待てよ。僕が10人の人と会話したい場合、10対装置が必要か。それはまずい。対にせず装置に個別の番号を振って、番号で呼び出すようにすれば1台持てば良い。そうしよう。


 作った。まずは0番から9番までの10台。相手の番号を押して、通話ボタンを押すと相手を呼び出す。相手が通話ボタンを押すと会話開始。どちらかが通話ボタンをもう一度押すと会話終了。誰に渡そうか。アカは?いらないの。装置が無くても連絡が取れるってか。相手の視覚、聴覚も共有できるの?そうなの。知らなかった。相手から連絡を受けるため番号だけ欲しいのね。わかった。


 渡す人は、0番僕、1番アカ。ここまでは番号のみで装置は試験用に保存。2番マリアさん、3番ローコーさん、4番エリザベスさん、5番セドリック執事長、6番アンナ侍女長、7番オリメさん、8番イサベルさん、9番ローレンツ執事長。作った10台は使ってしまった。


 使いようによっては大変な武器になるね。使用者権限を付け、他人が使おうとすると僕に連絡が来て、頭に浮かんだボタンを押せば自爆。自爆の程度は調整出来るようにしよう。爆発の代わりに痺れのような、ショックもありだな。他にも機能をつけておこう。黙っているけど。


 さて昼食。食べながら連絡装置の話を軽く話した。

 昼食後、渡しました。渡す人は、2番機はマリアさん、3番機ローコーさん、4番機エリザベスさん、5番機セドリック執事長、6番機アンナ侍女長、7番機オリメさん。


 オリメさん、びっくりして遠慮している。オリメ商会のイサベルさんとの打ち合わせに必要だからと受け取ってもらった。


 エチゼンヤさんの皆さんは嬉々として使ってみている。そして黙った。ローコーさんが代表して口を開いた。


 「これは大変危険な機械です。世界が変わってしまいます」

 「機械としては使用者権限がつけてあります。他人が使おうとすると僕に連絡が来て、機械も使おうとした人も爆砕することが出来ます。それとこの機械を分解しようとしても爆砕します。もっとも分解できてもどういう仕組みかは絶対わかりません。使い方は皆さんを信用しています。他に渡す人は、8番機イサベルさん、9番機ローレンツ執事長さんのみです。0番が僕、1番がアカです。全部で10台」


 「この機械は王都にいるイサベルとも話せるのでしょうか」

 「勿論、明日渡しにいくので向こうから連絡して試してもらいます。この世界のどこにいても連絡がつきます」

 「世界中ーーーー」

 黙ってしまった。


 「これは神の御技です。我々が手にしてはいけないものです」

 エチゼンヤさんは良い人だね。だから使って欲しい。


 「渡した人しか使えませんので、あまり気にせずお使いください。特に王都とコシは遠いので今までは相談事は大変難しかったろうと思います。危険を冒して行って相談して帰ってきて一ヶ月以上はかかったのではないでしょうか。便りも不安定だったと思います。これを使えばオリメ商会についての相談も瞬時にできます」

 「それはそうですが」


 「この世界に足を踏み入れ、人並みに生きてこられたのは皆さんのおかげと思っています。そのお礼ですよ。ぜひ受け取ってください」

 「私どもの方がシン様ご一家の恩恵を受けておりお礼をするのはこちらですが、そういうことでしたらこの機械は大切に預からせていただきます」

 エチゼンヤさんの発言に皆さん頷いている。一件落着だ。良かった良かった。


 エチゼンヤさんにちょっと王都まで通話装置を届けて来ますと断って、さて王都に行きますかね。


 今日はドラちゃんに乗せてもらおうかな。先ずは東門から出て少し行った所でドラちゃんに大きくなってもらう。え、ドラニちゃんもできるの?そう。じゃお願い。


 ドラちゃん50メートル、ドラニちゃん40メートルくらいか。僕とアカがドラちゃん、ブランコとエスポーサはドラニちゃんに乗って貰う。マリアさんはステファニーさんとお留守番。


 ふわりと舞い上がり、急角度で上昇、高空を縦列になってスピードを上げ始めた。少し出した翼端から雲を引いている。もう王都が見える。ドラちゃんのバリアのお陰で快適だ。何も飛んでいない高空を王都目指してまっしぐら。翼を少しずつ出して減速しながら高度を下げる。ドラニちゃんが隣に来た。翼をいっぱいに展開して、ゆっくり滑空する。王都の外側を一周しよう。少しバンクしてゆっくり城壁に沿ってまわる。城壁の外にも結構家があるね。


 エチゼンヤの土産物屋さんの近くに降りてもらう。目立つからすぐ小さくなってもらった。

 土産物屋さんに挨拶して門に歩いて行く。ローレンツさんが手招きしている。出来る執事長は違うな。どうして来るのがわかったんだろう。アカがドラゴン二頭で目立ったのと言っている。そうなの。フリーパスで入場。


 「今日はどちらに?」

 「イサベルさんとローレンツさんに用があり来ました」

 すぐ馬車に乗り込んでエチゼンヤ屋敷へ。出来る執事長は何も聞かないのが良いね。


 屋敷の応接室でイサベルさんとローレンツさんに通話装置を渡して説明したら、とても受け取れないと言われた。

 エチゼンヤさんと同じようなやり取りをして受け取ってもらった。


 イサベルさんは早速エリザベスさんを呼び出した。呼び出し音に続きエリザベスさんの声が聞こえた。

 「お義母さん、聞こえますか」

 「隣にいるように聞こえるわ。さっき出て行ったのにもう着いたの?流石シン様だわ」

 しばらく話をして通話を終えた。


 今度はローレンツさんがセドリックさんと通話している。クリアに聞こえるようだ。

 通話が終わった。


 みんな相手が目の前にいるかの如く会話できることに感動しているようだ。

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