062 ドラちゃんとドラニちゃんが宰相と冒険者組合本部長に手紙を届けた
ここは王都宰相執務室。
宰相と本部長が難しい顔をして向き合っている。
「あの雲は何だったんだ」
「知るかよ」
「街では、天が割れる。この世の終わりの予兆だ。逃れたくばこのお札を家に貼っておけ、と儲けている奴がいるぞ。魔物はお前の担当だろう。何とかしろ」
「天変地異まで魔物のせいにすんな、そんなのは神ーーー」
「神ーーー」
十分思い当たる二人であった。
ドッカーン。外に面した壁が壊れた。何かが飛び込んできた。
身構える宰相と本部長。埃がおさまると、超小型ドラゴンが二頭浮かんでいる。うち一頭がアンクレットがはまった脚を出す。
「おい、手を出せと言っているみたいだぞ」
宰相が恐る恐る手を出すと、手紙がポトリと宰相の手の上に落ちた。次に本部長に向け脚を出す。手を出すと手紙がポトリ。
もう一頭が頭をクイっと動かす。
「読めと言っているみたいだぞ」
二人は自分宛の手紙を読む。アレはヒコーキ雲というらしい。冒険者組合コシ支部の受付嬢は直線雲と名付けた。曲がることはあるけどそっちの方がわかりやすくて良いかもだと。
俺もそう思うと二人。
それで、なになに、雲は目の前の二人が高空を超スピードで飛んで出来ただと。
やはりなと思う二人。
帰らないのは返事を待っているのだろう。一枚の紙に、ヒコーキ雲の件、委細承知しましたと書き、二人でサインし、封筒に入れ差し出すと封筒が消えた。ドラゴンが不服そうな顔をして壊れた壁から外へ飛び出そうとする。
「あのう、次は壁を壊さないで欲しいのですが」
「無理」、「無理ーー」
飛んでった。
「宰相と」「本部長は」「遠来の」「お客に」「お茶菓子も」「出さなかった」「「ケチーー」」
大音量で女の子の声が王都中に響き渡った。
王都中、国王まで笑い転げたのはいうまでもない。
「喋れたのか」
「あの間は返事をくれじゃなくて茶菓子の要求だったのか」
顔を見合わせた二人は肩を落とし「とりあえず陛下に報告するか」と風通しの良くなった部屋を出て行った。
国王の執務室では国王が笑いを噛み殺して入ってきた宰相と本部長に言った。
「なんの用だ。茶菓子は出ないぞ」
二人は、ああ、聞こえていたと落ちた肩を更に落とすのであった。
エチゼンヤ本店では、イサベルさんとベネディクトさんがお腹を捩って笑っていた。そこへドラちゃんとドラニちゃんが、キュ、キュと言いながら飛んで来た。
「お茶菓子貰えなかったのね。ケチよね、おのおじさんたち」
すぐベネディクトさんがお茶菓子と飲み物を用意する。
「あのおじさん達ケチだと手紙を書いておきましょうね。シン様に届けてね」
キュ、キュと返事する。
お茶菓子に満足した二人は大空に急上昇、あっという間に見えなくなった。
「可愛いわね」
「そうですね」
「シン様は神様ね。ドラニちゃんを作れるなんて。ほんとのところはわかってないんでしょうね。あのおじさん達」
「いつか手ひどい神罰が下らなければ良いのですが」
「私たちがいなくてもお茶菓子でおもてなしするように手配しといてね」
「承知しました」
キュ、キュと言いながら二人が帰ってきた。今日もヒコーキ雲が綺麗だ。
あれ、手紙があるのか。宰相と本部長の連名だね。承知しただって。そうかい。明日こちらの冒険者組合に見せてやろう。
もう一通ある。イサベルさんからだね。ええと、ああ、宰相と本部長に茶菓子を出してもらえなかったのね。それで大声で。いいよなかなか。次回も何かあったらやりなさい。
キュッ、キュッと喜んでいる。何よりだ。
まだ書いてあるぞ。トイレットペーパーが少なくなったって。自動補給の機能をつけるのを忘れていた。今度行った時その機能をつけておこう。とりあえず明日トイレットペーパーを届けてもらおう。
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