060 オリメ商会設立申請と連絡用ドラちゃんもどきを作った

 屋敷に戻るとエリザベスさんに呼ばれた。オリメさんとアヤメさん、それにオリメさんの両親がいた。


 「オリメ商会の話よ。私とイサベルが三分の一ずつ出資してオリメ商会を作ることになったわ。あとの三分の一はシン様の名前でお願いします。シン様の出資金は、イサベルと私のスパ棟使用料を充てます」


 へえ、そんな使用料があったんだ。知らなかった。まあいいや。今度二人に金属製多節鞭を作って渡そう。


 オリメさんの両親に、オリメさんとアヤメさんを頼まれてしまった。アヤメさんは住み込み従業員の子供で、両親を相次いで病気で亡くし、それ以降引き取って家族同様育て、娘同様とのことであった。何を頼まれたんだろうね。当分泊まってもらうスパ棟を案内したら安心した様子で帰って行った。


 とりあえず、エチゼンヤ支店内にオリメ商会のコーナーを置いてもらい、下着から始めることにしたが、その前に商会設立の書類を作らなければならない。書類にイサベルさんの署名が必要だな。いちいち王都に行くのも大変だ。何か考えよう。


 考えること3分。作った。連絡用ドラちゃんもどき。動力は謎だ。動くものは動くのだから良い。

 ドラちゃんを呼んだら、妹ができたと喜んでいる。一応知能もあるらしい。知らんよ仕組みは。

 シン金属でアンクレットを作り収納機能をつけた。

 連絡に使用できる人は、シン一家、エチゼンヤ名誉会長夫妻、会長夫妻、双方の執事長と侍女長、それに本店店長、コシ支店長にした。受取人は指定できる。


 本人だけしか使えないエリアも作ってやろう。宝物などを入れたいだろうからね。ドラちゃんが宝物を溜め込んでいるのを知っているからね。

 なんて素晴らしい出来だ。


 エリザベスさんにドラちゃんもどきを見せたらびっくりしている。

 「使わせてもらっていいのかしら。楽になるわ。夢のよう」

 「飛んでくれると思うのですが、やってみましょう」

 「そうね、早速書類を作るわ。ちょっと商業組合に行って来ます」


 その間に作ろう。シン製金属多節鞭。ふふふふ。

 金属はシン金属ではないが、この世界のどの金属より硬く、しかも時によっては柔らかく、丈夫で、切れ味がよく、程よい重さの金属を作った。


 叩けばこの世のもの全て破壊でき、節のところで全て切り裂き、それらの力をコントロールできる。皮の鞭のようにも使えるし、刃物のようにも使えるし、棍棒のようにも槍のようにも使える。しかも手入れ要らず。二つ作った。使用者権限はもちろんつけた。


 両手に持って振ってみる。なかなかいいね。ふふふふ、女王様が二人出来るぞ。ローコーさんとヨシツナさんには黙っておこう。

 鞭で遊んでいるとエリザベスさんが帰ってきた。


 早速、ドラちゃんもどきの収納に、エリザベスさんの手紙と商会設立申請書類、それに僕からの手紙と厳重に梱包された荷物を収納した。僕からの荷物はイサベルさんしか開けられないようにしてある。


 ドラちゃんもどきには、僕らがたどった地図が入れてある。随時更新ナビだ。それに宛先人に近づくと宛先人が放出する微かな波動を検知して荷物を届けられるようになっている。なかなか良い出来だな。


 え、ドラちゃんもついていくの。そうなの。寂しいよ。すぐ帰って来るって。それじゃ気をつけてね。


 ドラちゃんとドラちゃんもどきが翼を広げ仲良く飛んでいく。おお、高度を上げ、翼をほとんどたたんで流線型になり、スピードを出し、あっという間に視界から消え去った。二人ともすごいね。あれじゃすぐ着くね。超高速飛行形態だな。


 「イサベルさんにも作って今の便で送ったのですが、シン製金属多節鞭です。お使いください」

 「これは素晴らしい。この金属の硬さ、柔らかさ、鋭い節、手に馴染む重さ」


 エリザベスさん、振り始めた。禍々しくも黒々とした光跡を残すね。黒い光跡は見たことないな。皮の鞭のように、剣のように、棍棒のように、槍のように自由自在に振るっている。鞭の天才だ。イサベルさんといい勝負だろう。二人揃うと怖いな。またつまらぬものを殴ってしまったと言いそうだ。危うし賊の股間。


 「シン様、もらっていいのでしょうか。この神製金属多節鞭」

 エリザベスさん、鞭を撫で恍惚としているよ。少し文字が違う気がするが。

 「どうぞ。お世話になっていますからほんのお礼です」


 そうこうしているうちに、キーンと音が聞こえて来る。ドラちゃんともどきが急降下して来る。バッと翼を開いて速度を殺し抱きついて来る。ドラちゃんはかわいいね。もどきもかわいいね。よしよし。


 飛行時間は実質数分じゃないか。すげえ。ヒコーキ雲が見えるな。宰相殿と本部長の悩みが増えたぞ。連絡しといてやろうかな。


 僕には礼状、エリザベスさんには商会設立申請書類がサイン付きで届いた。礼状には神製金属多節鞭と書いてあった。義理でも似てるね。考え方がそっくりだ。


 ドラちゃんもどきは便利だ。なに、ドラちゃん、楽しいから一緒に行きたいってか。いいよ。行っておいで。でも今日はもうないよ。水飲む?そう。それじゃ谷川の水。え、もどきちゃんも飲むの?じゃどうぞ。谷川の水だよ。


 エリザベスさんはすぐ商業組合に出かけて行った。驚くぞ、商会の皆さん。


 ドラちゃんはお風呂に入りたいって、いいよ、入りな。ご苦労さん。もどきを連れてお風呂に行った。もどきも入浴できるのか。知らなかった。雨の中も飛べるから入れるのは当然か。


 ドラちゃんが風呂から出て、お昼を食べたら冒険者組合に顔を出して、ヒコーキ雲のことを教えてやるかな。

 その前にドラちゃんもどきに名前をつけよう。ドラちゃん2号だからドラニちゃんでいいかい。ドラミちゃんじゃないよ。そう、いいの。じゃドラニだよ。お、体が光った。お前生きてんの?わからん。

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