048 馬がバトルホースになり、盗賊と遭遇した

 朝になってこちらに向かって馬が嘶いているから見に行く。水が欲しいのかな。やや、馬体が一回り大きくなって、足も太く丈夫そうになっている。鼻面を押し付けて来るから撫でてやると、馬体に充実感がある。


 御者さんが驚いた。

 「こりゃびっくりだ。バトルホースになっている。しかもこんな立派なバトルホースは見た事もない。旦那様ーー」

 「どうした」

 爺さんがやって来た。馬の数を数えている。

 「うちの馬か」

 「どの馬も見覚えがありますし、懐いています」


 ゾロゾロとみんな集まってきてバトルホースに驚いている。

 「これは王都に行っても一騒動だな。陛下の自慢のバトルホースがうちの馬と比べると相当貧弱に思える。よし、この8頭のバトルホースはシン様の馬だ。それをうちが預かってお世話している。みんなそう心得ておいてくれ」


 馬がヒヒーーンと返事した。了解と言っている。知能も上がったようだ。人参と水が欲しいってか。一応お世話していただいている御者さんに断って水と人参を差し出すと喜んで飲んで食べている。また少し馬体がーーー。冷や汗が出てくる。


 朝食にして、テントを収納し、最後まで残してあった洗面棟を収納した。

 「色々と世間に対して秘密が多くなってしまったのでなるべく他の馬車、冒険者などと一緒の休憩、野宿にならないように」

 エチゼンヤさんから朝の一言があった。エリザベスさん始めみんな深く頷いたのは言うまでもない。他の人がいるところでは湯殿棟と洗面棟は出せないからね。そりゃ他と一緒にならないほうがいいに決まっている。


 いつも通りブランコが先頭だ。ウオンと一声鳴いて、バトルホースがヒヒンと応えて出発だ。今日はいくらか起伏があるね。しばらくいくと少し上り坂になり道の両側が林になっていかにもな地形だ。


 やっぱり出たね。盗賊だ。丸太を担ぎ出して道を塞いでいる。通常だと慌てて馬車が止まるのだろうが、ブランコもバトルホースも止まる気はないようだ。しょうがない。

 「おおい、そこの人、危ないから退いたほうがいいですよ」

 「なに言ってやがる。俺たちは泣く子も黙る山猫盗賊団だ。身ぐるみ置いていけ」


 盗賊と確定だね。お、侍女さんが馬車の屋根の上に登り弓を引いた。盗賊の頭に命中した。絶命だな。両脇から野太刀を引き抜いた店員さんが駆けていく。バトルホースだからね迫力が違う。盗賊団が腰が引けてきた。馬上から野太刀でバッサリだ。その間も馬車は止まらず、ブランコが丸太を蹴飛ばすと盗賊の方に飛んでいき、2、3人が丸太に弾き飛ばされ動かなくなった。後ろに回り込んだ盗賊はエスポーサが前足でポンする。爆散した。首を捻って次はさっきより軽くポン。今度は足が残った。難しいと言う顔をしている。盗賊は真っ青になって逃げようとするがエスポーサがポンポン。後方は全滅。側面からも来るね。アカが軽く吠えた。衝撃波だろうか、盗賊がまとめて爆散した。丘が爆散しなくてよかった。反対側の側面の盗賊はマリアさんがショートソードで首チョンパした。いやいや相棒を抜く間もないよ。これにて山猫盗賊団は全滅。ドラちゃんはどうしたって。弓を引いた侍女さんに撫でられているよ。それでいいんだよ。でも仕事を作ってやろう。


 「ドラちゃん、撃ち漏らしがないか空から見てきてくれる」

 はーーいと飛んでった。何ヶ所かに口からビームを打ち込んだ。絞ったビームだから、盗賊の心臓か、頭に穴が空いたろう。ふわふわと帰ってきてまた撫でてもらっている。


 エチゼンヤさんが馬車を止めて降りてきた。

 「いやはやお強い。殲滅とは恐れ入りました」

 「これはどうしましょうか」

 「口ほどにもない奴らでしたね。埋めておきましょう」


 ブランコが穴を掘る。ブランコよ掘った土が飛んでったんだけど。褒めて褒めてと来るから褒めてやる。丸太蹴飛ばしも上手だったね。尻尾をブンブン振っている。


 盗賊を穴に入れ、ドラちゃんがフッと息を吐き出すと、穴の中は溶けてしまった。何も残らないね。軽く埋めといた。


 「もう少し行ってから休憩しましょう」

 一時間ほど行ったところで休憩した。洗面棟は必需品らしい。

 「夕方ごろ街に着きますから、今日はそこで泊まりましょう」

 「街で、泊・ま・る」

 エリザベスさん不服らしい。野宿の方が宿場の宿よりいいと言いたいようだ。大店のエチゼンヤが宿代をケチって街を素通りして野宿したと言われても困るから、不承不承承知なんだろう。

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